第26話 新たなライバル
復帰配信から一ヶ月後。
拓真は、VTuber週間ランキングを見ていた。
一位:日里燈&東遊里
二位:赤羽雷牙&黒崎刃
「二位……?」
拓真は画面を見つめた。
赤羽雷牙と黒崎刃。
最近、急激に伸びてきている男性VTuberコンビだ。
「ライバル、出てきたな……」
拓真は呟いた。
***
その日の夜。
拓真は、赤羽雷牙と黒崎刃の配信を見ていた。
「おっす! 赤羽雷牙だ!」
「黒崎刃だ」
画面には、赤い髪の雷牙と、黒い髪の刃のアバターが映っている。
「今日も暴れるぜ!」
「派手にな」
二人の掛け合いは、テンポが速い。
そして、喧嘩する。
「おい、雷牙! お前のせいで死んだだろ!」
「は? お前が下手なだけだろ!」
「下手じゃねーよ!」
「下手だよ!」
「……」
拓真は、画面を見つめた。
「俺たちと、似てる……」
喧嘩しながら配信するスタイル。
でも、雷牙と刃の方が、より激しい。
より過激だ。
「これは……」
拓真は不安になった。
コンコン。
ドアがノックされた。
「拓真、入るよ」
凛が部屋に入ってくる。
「見てる? 雷牙と刃の配信」
「……ああ」
拓真は頷いた。
「どう思う?」
「……強敵だね」
凛は正直に答えた。
「勢いがあるし、視聴者も増えてる」
「だよな……」
拓真は項垂れた。
「俺たち、負けるかもしれない……」
「拓真」
凛は拓真の肩を叩いた。
「負けないよ」
「え?」
「だって、私たちには、私たちのスタイルがある」
凛は笑った。
「雷牙と刃は雷牙と刃。私たちは私たち」
「……そうだな」
拓真も笑った。
「俺たちらしく、やればいいんだよな」
「うん」
二人は拳を合わせた。
***
翌日。
拓真と凛は、事務所に呼ばれていた。
「お疲れ様です」
マネージャーが真剣な顔で迎える。
「赤羽雷牙さんと黒崎刃さんのこと、知ってますよね」
「はい」
「実は、二人から、コラボのオファーが来ています」
「コラボ……?」
拓真は驚いた。
「はい。お二人と雷牙さん、刃さんの四人でコラボ配信をしてほしいと」
「……どうします?」
凛が拓真に聞く。
「……やろう」
拓真は答えた。
「ライバルだからって、避けてたら意味ない」
「わかった」
凛も頷いた。
「じゃあ、調整しますね」
マネージャーは笑った。
***
一週間後。
四人コラボ配信の日。
「はーい! みんなこんばんは! 日里燈だよー!」
「東遊里です」
「そして、今日はスペシャルゲストがいます!」
画面に、二つのアバターが追加される。
「おっす! 赤羽雷牙だ!」
「黒崎刃だ」
『きたああああ』
『夢のコラボ!?』
『豪華すぎる』
コメント欄が爆発的に流れる。
同時接続数は、開始五分で三十万人を突破していた。
「今日は、四人でゲームしていきます!」
燈が宣言する。
「何やる?」
「APEXだろ!」
雷牙が即答する。
「おお、いいね」
「じゃあ、決まり」
ゲームが始まる。
四人でチームを組んで、APEXをプレイする。
「よし、どこに降りる?」
燈が聞く。
「激戦区!」
雷牙が答える。
「は?」
遊里の声が冷たくなる。
「また激戦区?」
「熱いだろ!」
「死ぬでしょ」
「死なねーよ!」
「いや、死ぬって」
刃も同意する。
『www』
『意見が割れてる』
結局、激戦区に降りることになった。
降下。
着地して三秒。
燈、キルされた。
「ぎゃああああああ!!!」
「ほら、言ったでしょ」
遊里が冷たく言う。
「俺も死んだ!」
雷牙もキルされた。
「お前らバカか」
刃が呆れる。
『www』
『バカ二人www』
「バカじゃねーよ!!」
燈と雷牙が同時に叫ぶ。
そして、二人は顔を見合わせた。
「……お前、俺と似てるな」
「お前もな」
二人は笑った。
『気が合いそうwww』
『バカ同士www』
「ちょっと待って」
遊里が口を挟む。
「燈と雷牙、組まないで。碌なことにならないから」
「同意」
刃も頷く。
「お前ら!!」
燈と雷牙が同時に抗議する。
『www』
『ツッコミ役も気が合ってるwww』
配信は、そのまま続いた。
燈と雷牙が暴走して、遊里と刃がツッコむ。
その掛け合いが、視聴者を大いに楽しませた。
***
三時間後。
配信終了。
「お疲れ様でした!」
四人は、お互いに挨拶した。
「いやー、楽しかったな」
雷牙が笑う。
「ああ。また機会があったら、コラボしような」
燈も笑った。
「おう!」
「じゃあ、また」
四人は、配信を終えた。
***
その後。
拓真と凛は、リビングでお茶を飲んでいた。
「なあ、凛」
「なに?」
「雷牙と刃、いい奴らだったな」
拓真は笑った。
「うん」
凛も笑った。
「ライバルだけど、仲間でもあるね」
「ああ」
拓真は頷いた。
「切磋琢磨していけたらいいな」
「うん」
二人は拳を合わせた。
***
翌日。
四人コラボ配信が、Twitterでトレンド入りしていた。
「#燈遊里雷牙刃コラボ」
のハッシュタグが、一位に躍り出ていた。
コメント欄には。
『最高のコラボだった』
『四人の掛け合い面白すぎる』
『また見たい』
そんな言葉が、溢れていた。
そして、VTuber週間ランキングも更新された。
一位:日里燈&東遊里
二位:赤羽雷牙&黒崎刃
順位は変わらなかった。
でも、二位との差は縮まっていた。
「……まだまだ、油断できないな」
拓真は呟いた。
「うん」
凛も頷いた。
「でも、頑張ろう」
「ああ」
二人は拳を合わせた。
***
その日の夜。午後八時。
いつもの二人配信。
「はーい! みんなこんばんは! 日里燈だよー!」
「東遊里です」
『きたああああ』
『今日も楽しみ!』
『昨日のコラボよかったよ』
「ありがとう! 雷牙と刃、いい奴らだったでしょ?」
燈が嬉しそうに答える。
「これから、いいライバルになりそう」
「切磋琢磨していきたいです」
遊里が笑った。
『頑張れ』
『応援してる』
「ありがとう! じゃあ、今日も配信頑張るぞ!」
「今日は何する?」
「視聴者参加型のゲーム大会!」
「また燈が勝手に決めた」
「勝手じゃねーよ!!」
『もう喧嘩www』
『安定してる』
配信は、いつも通りのペースで進んでいく。
喧嘩して、笑って、また喧嘩して。
でも、視聴者たちはそれを楽しんでいた。
***
配信終了後。
拓真と凛は、リビングでお茶を飲んでいた。
「なあ、凛」
「なに?」
「ライバルがいるって、いいな」
拓真は笑った。
「うん」
凛も笑った。
「切磋琢磨できる相手がいるって、楽しい」
「ああ」
拓真は頷いた。
「これからも、負けないように頑張ろう」
「うん」
二人は拳を合わせた。
***
その夜。
拓真は、ベッドで天井を見つめていた。
「ライバル、か……」
雷牙と刃。
いい奴らだった。
でも、負けたくない。
「もっと頑張らないとな」
拓真は呟いた。
「凛と一緒に」
拓真は、そのまま眠りについた。
***
翌朝。
拓真のスマホに、通知が来た。
雷牙からのDMだ。
『燈、昨日はありがとな! また機会があったら、コラボしような! でも、次のランキングでは負けねーからな!』
「……」
拓真は笑った。
『こちらこそありがとう。でも、負けるのはお前の方だ』
返信を送る。
すぐに返信が来た。
『上等だ! 待ってろよ!』
拓真は笑った。
「いいライバルができたな」
拓真は呟いた。
「負けないぞ」
拓真は、凛の部屋に向かった。
「凛、起きてる?」
「起きてるよ」
凛が部屋から出てくる。
「雷牙からDM来た。次のランキング、負けないってさ」
「へえ」
凛は笑った。
「じゃあ、私たちも負けないように頑張らないとね」
「ああ」
拓真も笑った。
「今日も配信、頑張ろう」
「うん」
二人は拳を合わせた。
世界一うるさい青春は、まだまだ続いていく。
新たなライバルが現れて。
切磋琢磨しながら。
拓真と凛は、これからも走り続ける。
喧嘩しながら。
でも、お互いを信じて。
そして、ライバルに負けないように。
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