第2話:百萬エーカーと、加減を知らない炎
異世界二日目。 俺は広大な大地に立っていた。 昨日神に要求した100万エーカーの土地と、それを完璧に囲む「万全な結界」。
性能は昨日、魔物が突進してきて消滅したのを見て確認済みだ。 試しに今日も、結界の縁に近づいてみる。 案の定、俺の姿を見つけた巨大な猪のような魔物が、興奮して突進してきた。
ドンッ!
昨日と同じだ。透明な壁にぶつかった瞬間、音もなく霧散する。 完璧な安全。これなら農業に集中できる。
「……だが、安全だけでは生きていけない」
腹が、減った。 昨日から水以外、何も口にしていない。 ナイフ一本での火起こしは骨が折れるだろうな……と思ったところで、俺は神との最後の会話を思い出した。
『ケチな神だ』と思った俺に、神はこう言ったのだ。 『……ふむ。まあ良い。特別に二つくれてやろう。お主の望む「万全な結界」と、ついでだ、「最強の炎の魔法」もくれてやる』
そうだ。俺には魔法があるんだった。
俺は乾いた落ち葉を適当にかき集める。 「最強、ねえ……。とりあえず、焚き火レベルで頼むぞ」 イメージしたのは、キャンプファイヤーほどの小さな炎。 俺は軽く指を鳴らした。
ゴォォォオオオ!!!
瞬間、俺の目の前に高さ数メートルの火柱が立ち上った。 熱風が顔を焼く。 「うおっ、熱っ! 消えろ、消えろ!」 慌てて手を振ると、炎は嘘のようにスッと消えた。 ……集めた落ち葉は、灰すら残さず消滅していた。
「……最強ってのは、伊達じゃないらしい」 加減がめちゃくちゃ難しい。 だが、これで火の心配は一切なくなった。
さて、次は寝床だ。 火も水も確保できる場所がいい。 俺は川沿いを歩き、周囲を探索した。
幸い、そう時間はかからなかった。 川からさほど離れておらず、結界線(あのうるさい魔物の激突地点)からも適度に離れた場所に、手頃な岩棚を見つけた。 雨風をしのぐには十分すぎる。
「よし、拠点はここに決定」
見渡す限り、荒れ地と森と山。 安全は結界が保証してくれる。 火は魔法がある。 水は川が流れている。
残るは「食料」だけだ。 俺はナイフを握り直し、ひとまず食えそうな野草や根を探しに、再び森へ足を踏み入れた。 結界の外では、相変わらず魔物が壁にぶつかる音がしていた。
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