『ギフトの結界が最強すぎて、俺は農業に集中するだけ。~元農家の知識で始める百萬エーカー開拓記~』

@melon99

第1話:俺は死んだ。そして「万全な結界」を要求した。

俺は死んだ。 トラックにはねられたとか、過労死したとか、そういうありふれた理由だったと思う。まあ、どうでもいい。


気づいたとき、そこは真っ白な空間だった。 目の前に「神」と名乗る、やたらと発光した老人が立っていた。


「気の毒に。お主を異世界に転生させてやろう。特典として、ギフトを一つだけ要望できるぞ」


異世界転生。きたか。 ラノベで読み漁った知識が頭をよぎる。最強の剣か? 無限の魔力か? それとも不老不死か?


いや、どれも面倒くさい。 戦いも、冒険も、出世も、もういい。俺は静かに暮らしたい。


俺は少し考えてから、こう答えた。 「それじゃあ、100万エーカーの土地と、その周囲を完璧に守る国境レベルの結界が欲しい」


神は少し眉をひそめた。 「それは二つではないか? 土地と結界。望みは一つだけだ」


ちっ。ケチな神だ。 だが、俺はすぐに考え直した。抜け道はある。


「なら、こうしよう。俺の望みは『万全な結界』だ。ただし、その結界で囲む範囲は、人間が誰も住んでいない荒れ地や山林、だいたい100万エーカーぶん。それでいい」


俺は農業がやりたかった。 実家が農家で、その知識と経験だけはあった。都会の仕事に疲れた俺にとって、土をいじって自給自足する生活こそが理想だった。


どうせ誰もいない土地だ。結界で囲ってしまえば、そこは俺の土地も同然だ。 神は少し目を丸くしてから、つまらなそうに頷いた。


「……良かろう。戦闘チートも求めぬとは、変わった男だ。お主の望む『万全な結界』を与えよう。魔物も、人間も、物理的な攻撃も魔法も、内側からの許可なくば何人たりとも通さぬ壁だ。では、行け」


光に包まれ、俺の第二の人生が始まった。



そして今。俺は広大な大地に立っている。 見渡す限りの荒野、森、遠くには山脈。水も豊富そうだ。ここが俺の100万エーカーらしい。


そして、周囲は見えない「壁」で囲まれている。 いや、よく見ると、空間が薄く歪んで見える。ガラスのような透明な壁だ。


ゴォォォッ!


早速、牙をむいた巨大な狼のような魔物が、土煙を上げて突進してきた。 俺は身構えもしない。


ドンッ!!


鈍い音がした。 魔物は、俺の数メートル手前にある透明な結界に鼻面を叩きつけられ、そのまま潰れた。音もなく、まるでぶつかった箇所から粉々に消し飛ぶように。


なるほど。「万全な結界」とはこういうことか。 これなら安心だ。


結界の向こう側では、別の魔物がまだ俺に気づいて威嚇している。 だが、俺には関係ない。あいつらは永遠にここへは入れない。


俺は背を向けた。 さあ、忙しくなるぞ。 まずは、この荒れ地を耕すところからだ。

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