白髪ロリに指を噛まれただけなのに、あやかしどもの陰謀に巻き込まれて
@sississisisissisisiisiisisiisi
プロローグ
「ん? んん? 何じゃ? 余はどうして寝っ転がっておる。余は一体何をしておったんじゃ?」
眠りから覚めた妖狐は辺りを見回すと、直ぐに眼の前の少女を発見した。
「やぁ、妖狐。目覚めたようだね。では死んでもらうよ」
少女はそう言うと、拳を振り上げて妖狐を殴りつけようとした。
しかし、妖狐は先程までは持っていなかったはずの扇子で少女の拳を止めると、その勢いをそのまま返して少女を弾き飛ばした。
「何じゃ何じゃいきなり。物騒だのぉ。余に向かって名乗りもせずにいきなりぶつかってくるとは。ちと教育がなっとらんのじゃないか?」
そう言った妖狐は起き上がってそのまま扇子を少女に向けると「まぁよい、死ね」と扇子を振った。
しかし、何も起こらない。
不思議に思った妖狐は何度も弾き飛ばされた少女に向かって、扇子を振る。
扇子は微弱な風を起こすのみで、他には何も起こさなかった。
「何じゃこれは。どうしてかまいたちが出ない。それにこの違和感。明らかに妖力が減っておる。一体全体何が起きておると言うのじゃ」
妖狐は立ち上がって少女の下まで行くと、側にしゃがみ込んで扇子でクイと少女の顎を上げた。
「おい、これはお主の仕業か? お主が余から妖力を奪ったのか? おい、生きているのじゃろ? 何か応えよ」
少女は妖狐にガンを飛ばすと、返事代わりに唾をブッと妖狐の頬に吐きかけた。
「当たり前かのように私の真似事をしやがって。あぁ、そうだよ。私がお前の妖力を奪った。そして、私に二度と攻撃出来ない呪いをかけた」
妖狐は少女に怒りを覚え、語気を強めて捲し立てた。
「こんな生意気な小娘に余は呪いをかけられてしまったってのか! ハッ、中々やるじゃないかお主。では、返して貰おうか。私から奪った妖力を!」
妖狐は顎から扇子を外すと、今度は胸ぐらを掴んで顔をグイと引き寄せた。
睨み合う妖狐と少女。
先に睨み合いの均衡を崩したのは、少女だった。
ハハハと笑って、妖狐を見下した態度をとる。
「返す訳がないだろうが。返す理由が何処にある? どうしても返して欲しかったら私に命乞いをさせてみろ! と言っても今のお前は私に攻撃出来ないから無理だろうがなぁ!」
妖狐はそれを聞くと、少女を乱雑に突き飛ばして胸ぐらを離した。そのまま踵を返して神社の元まで歩いていき、賽銭箱の上にドカッと座る。
「ふん。なるほどのぉ。余が下手に出ていれば良い気になりおって。こんな軟弱な呪いなど余の妖力が万全ならば、簡単に解呪出来るんじゃがの」
妖狐は再び少女を睨み、それから扇子を振って空を切った。
扇子から飛び出た刃が空(くう)を切り裂き、少女の直ぐ後ろの木を切り裂いた。
少女はそれに動じず、ただ妖狐を睨みつけるのみである。
「まぁよいわ。余の妖力がなくなった訳ではない。主からは余の妖力を感じぬしの。放っといても敵ではないわ。大方何処ぞに隠しておるのじゃろう。直ぐに隠し場所を見つけ出して取り戻してやるわ」
妖狐はそうして立ち上がり、本殿内へ戻ろうと少女に背を向けた。
そして、背を向けたまま少女に警告した。
「最後に一つだけ言っておく。余の妖力が完全に戻ったその時には、必ず主を最初に殺す」
それから扉がバタンと閉じられ、もうこれ以上何の音もしなくなった。
最後に神社に残ったのは、はだけた着物を着た無名のあやかしが一体だけ。
少女はただ、一筋の涙を流して自分から全てを奪った妖狐に復讐を誓ったのだった。
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