いない

翌日、教室に入ると同時に唐糸の姿を探した。

「晴海ちゃん!なにキョロキョロしてるの~?」

入り口で教師を見渡している俺に気づき小鳥遊が駆け寄ってくる。

「ああ・・唐糸。まだ来てないよね?」

「真司君?今日来るかな~?休みがちじゃん?」

「・・そうだっけ?」

確かに、教室にいないときもあったような気がする。

来たとしても遅刻ギリギリだし・・

(聞きたいことあったのに・・)

肩を落としながらポケットに手を入れた

その中には、昨日もらった紙が入っている

昨日のソレが消えた原因を色々考えたのだが、この紙があったからじゃないかと思った。

念のためと思い、あの後家中を見たが「ソレ」はどこにもいなかった。


それどころか・・


「なんだか、今日は家が温かい気がするわね」

と母さんが言っていた。

まあ、それは母親がそう思っただけだから因果関係は分からないが


「あいつに・・聞きたいことがあるんだけどな」

「真司君と喋ったこと無かったのに急にどうしたの?」

「どうもしないよ・・」

あいつが俺と同じものを視えて、しかも祓う事もできるのなら・・

俺にこの紙を持たせたのは、俺の部屋にあれが来ると分かっていたからなのか

(声が聞こえた事も話してみたい・・)

唐糸が俺の知りたい答えを全て知っている気がする。

早く話がしたいと思っていたのにその日、唐糸は学校に来なかった。

担任に何故休んだのか聞いてみると家の事情だと言われ

「なんだ、唐糸と仲いいのか?だったら、これ届けてくれないか?」

「なっ・・」

プリントを押し付けられ、聞かなきゃよかったと後悔した。

「なんで俺が・・」

こんなの、明日来た時に渡せばいいのにと溜息をつくと

「真司君の所に行くの?」

小鳥遊が笑いながら言ってきた。

「行くしかないだろ・・お前も来る?」

一人で行くのは何となく嫌だった。

「行かな~い!今日も先生に勉強教えてもらうんだ~」

へへっと嬉しそうに笑いさっさと教室を出て行った

(そんなに好きか?)

悪い先生ではないと思うけど、同性に惚れる感覚が俺には分からなかった。

女っぽいわけでもないし、かといって凄いイケメンってわけでもないと思うのだが・・

それに、小鳥遊は彼女だっていたはずだ。

それなのに佐久間が赴任してきたとき、彼は一目惚れした

その日のうちに彼女に別れを告げ、頬を赤くしていたのを覚えている。

「はあ・・まあ、でも目的は果たせるか」

唐糸と話がしたかったわけだし、あの神社に行くのは嫌いじゃない。

あそこの狛犬の顔は気に入っている。


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