第27話 飛竜
クライスとフレイアはナーガに言われたとおりに、再びスケイルシティのギルドに来ていた。
「おはようございます。ナーガ市長」
「おはようございます。クライスさん、フレイアさん。これを...」
ナーガは2人にチケットを其々、手渡した。
それは
「これで【精霊の森】に1番近い街である【ドライアシティ】に行けます。出発は1時間後になりますので、乗り場までご案内しますね」
「ありがとうございます!よろしくお願いします!」
「ではこちらへ...」
ナーガ市長の案内でギルドの奥の部屋に入ると【
「これは?」
「空港までの【
ナーガと共にクライスとフレイアは【
ブゥンッ!!
魔法陣が輝きだす!!
そして...
シュンッ!!
一瞬だった!!気づいたら目の前の風景が変わっていた。
「すごい...!!」
クライス達の目の前に大人の
全員が綺麗な銀色をしている。大人のワイバーンの片方は首にピンク色のリボンを着けている。
「彼らが飛行船を引っ張って行ってくれます。彼らは家族なんです」
「へ〜...すげぇ〜...」
クライス達は、その雄大な姿に見惚れてしまっていた。
そんなクライス達が気になったのか、子供の
「キュルル〜」
「うわっ!びっくりした〜」
「フフッ。どうやらクライスさん達の事が気になるようですね」
「ナーガ市長...この
「大丈夫ですよ。この
「
「そうですね。性格の荒い【
「キュルルルル〜」
「うわっ!ちょっとっ!」
クライスは顔をベロベロと舐められた!!
「うげっ!!」
「クライスさん。その子に気に入られたみたいですね」
「良かったな、クライス。モテモテじゃないか」
「ちょっと2人とも...見てないで助けてくださいよ〜!!」
「キュルルルル〜♡」
ベロベロッ!!ベロベロッ!!
「ちょっ!ちょっと!!うわぁ〜!!」
「クライスさん。その子の名前はジルと言います。名前を呼びながら頭を撫でてやると落ち着きますよ」
ナーガ市長、早く言ってよ〜!!
「よ〜しよし、ジル!良い子だ...」
ナデナデナデナデ...
「キュルルルル〜♡」
「やっと止まってくれた...はぁ...疲れた...」
クライスの顔はジルの涎でベタベタになった。
「クライス...顔洗ってきたら?」
「お手洗いはあちらです」
「はい。行ってきます...」
クライスはナーガ市長が指差す方へ向かった。
ジルはトボトボと歩いていくクライスの後を追ってきた!!
「キュルル?キュル〜♡」
クライスに顔をスリスリと近づけてくる。
鱗がめちゃくちゃ痛い...
「ジル...少し待ってて。ちょっと顔を洗ってくるから...」
「キュル〜♡」
「我儘言わないの!ほら、な?良い子だから!すぐ戻ってくるから...」
「キュル〜♡キュルルル〜♡」
ジルは中々、クライスから離れようとしない...
「クライスさんの魔力が心地よいのでしょうね。相性が良いのだと思います」
「相性とかあるんですね」
「勿論ありますよ。魔力の相性が良いと、
「キュキュ〜♡」
「はぁ〜、わかったよ〜」
クライスは仕方なく、ジルを連れたまま顔を洗いにいった。
ジャーッ!バシャバシャッ!バシャバシャッ!
「ふ〜...とりあえず洗えたけど...」
「キュ〜♡キュルル〜♡」
「頼むから、顔をベロベロするのはやめてくれよ。せっかく洗ったばっかりなんだから...」
「キュ〜」
「それにしても、子供って言う割にはデカいよな〜。普通に俺が背中に乗れそうだもんな〜」
「キュ〜!!キュルル〜!!」
「お?もしかして俺を乗せてくれるのか?」
「キュキュキュ〜♡」
「アハハッ、ありがとう。でも今から飛行船引っ張って貰わないといけないし、疲れるといけないから、また今度乗せてな!」
「キュル〜♡」
何となく、ジルの言いたい事がわかる気がする...
これが相性ってやつなのか?
「よし!皆の所に戻ろう!!」
「キュ〜!!」
ジルは出発時間ギリギリになるまでクライスから離れなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
出発前のアナウンスが聞こえる。
『まもなく
「そろそろお別れですね。クライスさん、フレイアさん、お元気で!」
「市長、お世話になりました!!」
「御二方の、これからの活躍を期待しております!」
「はい!!」
クライスとフレイアは飛行船に搭乗した。
搭乗と同時に離陸のアナウンスが流れる。
『まもなく、この便は離陸いたします。危ないですので手摺から身体を乗り出さないように、御注意ください』
下を見るとナーガ市長が笑顔で手を振っている。
「市長!!さようなら〜!!」
『離陸いたします』
ブゥンッ!!
飛行船が徐々に空中に浮かんでいく!!
反重力魔法で機体を浮かしているらしい。
どんどんと高度が上がっていく。
そして...
『
「ギャオオオオオンッ!!」
飛竜便の雄叫びと共に飛行船が進み出した!!
船内にはアナウンスが鳴り響く。
ピンポンパンポーン!!
『御搭乗ありがとうございます。これより、この機体は精霊の森方面、ドライアシティに向かいます。到着予定時刻は明日、午後3時となっております。それでは快適な空の旅をお楽しみください』
ピンポンパンポーン...
「すごい...俺たち空を飛んでる!!」
「クライス、先ずは自分達の部屋に行ってみないか?」
「そうですね!!」
クライス達は自分達の部屋へ移動した。
この飛行船の中は3階層に分かれており、それぞれに部屋がある。
1番上の3階は甲板にも近いので人気が高い。
ナーガは2人の部屋を3階の1番見通しが良い所にしていた。
「え〜と...315...315...あ!315号室!ありました!!」
ガチャッ!!
「これは、すごいな!!」
部屋に入ると一部分が全て硝子張りになっており、飛行船を引っ張っている
どうやら、この部屋は操縦席の真上に位置する部屋のようだ。
「あ!ジルだ!!」
父と母の間を一生懸命、羽ばたいているジルが見える。
「あいつ頑張ってるな〜!」
「こうやってみると大人の
「なんでも、市長が言うには、こうやって子供に飛ぶ事を覚えさせてるらしいです。たぶんジルは一生懸命なんでしょうけど、大人の
「なるほどな。これからの事を考えてということか」
ちなみに【
「フレイアさん、甲板に出てみませんか?」
「そうだな!せっかくだし行ってみよう!」
2人は飛行船の甲板に出ることにした。
ガチャッ!!
甲板への扉を開けると美しい景色が広がっていた!!
「これはすごい...!!」
「なんだか気持ちが良いな〜!!」
「でも、全然風を感じませんね?」
「この飛行船の周りには結界が張られているみたいだからな。その影響だろう」
「あ〜、そういえば念のための安全措置って言ってましたね!」
「これくらいの結界だったら、相当な威力の攻撃を、ずっと喰らわない限りは大丈夫だろうな!」
「なら、安心して空の旅を楽しめますね!」
「そうだな!私は早くご飯が食べたい!!」
「ナーガ市長が機内で出される食事は絶品だって言ってましたもんね!」
「ああ!その話を聞いてから、楽しみで楽しみで仕方なかったんだからな!」
「俺も楽しみです!......ん?」
「どうした?」
「フレイアさん、あそこ...何か黒い物が見えませんか?」
「ん?どこだ?」
「ほら!あそこです!」
クライスの指差す方向をジッと見つめると、遠くに黒い何かが見える...
「あれは....?遠くて何なのか見えないな...」
「なんだか、こっちに近づいているような気がするんですけど...」
クライスとフレイアがジッと黒い何かを見続けていた、その時...!!
ブーッ!!ブーッ!!ブーッ!!
突然警報が鳴りだし、機内アナウンスが流れる。
『お客様に御連絡です。当機体に魔物が近づいております。くれぐれも甲板には出ないよう注意してください。今、甲板にいらっしゃる方は早急に機内へ退避してください。繰り返し御連絡です。当機体に魔物が...』
「クライス!聞こえたか?」
「はい!魔物が近づいているって...もしかして、あの黒いやつですかね?」
「遠すぎて正体は分からんが、きっとそうだろうな...」
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッ!!
甲板に向かって走ってくる音が聞こえる!!
どうやら飛行船に同乗している騎士団員達の様だ。
弓矢隊が慌てた様子で甲板に入ってきた。
「全員配置につけー!!」
ザッザッザッザッザッザッザッ!!
隊長の命令で全員が甲板の左側に並んだ。
弓矢隊の隊長が甲板に残っていたクライスとフレイアに話しかけてきた。
「お客様、ここは危険です。機内にお戻りください」
「何があったんですか?」
「飛行船の
「群れ?もしかして...あの黒いやつですか?」
クライスは遠方に見える黒い物体を指差した。
「そうです。今まで、この空路で魔物が出たことは無かったのですが...」
「魔物の正体は?」
「もうすぐ分かると思います!!」
「隊長!!」
大慌てで騎士団員が隊長に話しかけてきた!!
「御報告します!!あの黒い塊は【
「【
「間違いないそうです。その数300!!」
「300だと!?何と言うことだ...結界を破られる訳にはいかん!!厳戒態勢を取れ!!」
「イエッサー!!」
「高度を下げ、群れと鉢合わせしないように調整しろと操縦室に連絡を入れろ!!」
「イエッサー!!」
「予定の航路から外れても構わない!!無事お客様を目的地まで、お届けするのだ!!」
どんどんと慌ただしくなっていく甲板。
だんだん近づいてくる【
楽しいはずの空の旅に暗雲が立ち込めるのだった。
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