第27話

「なんで、ドレスが!?」

 ティアリスもまた驚いていた。


 ドレス? と思って自分を見て、セレスティーンも驚いた。


 ぼろ布寸前だったドレスを着ていたはずなのに、今の自分が着ているのは瀟洒しょうしゃなラベンダー色のドレスだった。銀糸の刺繍が華やかで、上品なレースが袖口にたっぷりと使われ、裾は可憐にふんわりと広がっている。


 髪は結い上げられ、薄紫の小花が飾られた。イヤリングは彼の目のような黄水晶シトリンで、ネックレスもまた大きな黄水晶にメレダイヤをあしらったものだった。


 夢の中と同じだ。彼はいつもこうして自分に素敵なドレスを着せてくれる。


「このドレスもいいな」

 満足げに彼は言い、左手を横に広げ、右手を胸の前に添えてお辞儀をした。


「お嬢様、一曲お願いできますか?」

「……はい」

 思わず頷いていた。

 彼は嬉しそうにセレスティーンの手を引いてフロアに向かう。


「昨日練習したから、大丈夫だよね?」

 いたずらっぽく笑う彼に、セレスティーンはやっぱり、と思う。


「まさか本当に会えるなんて」

「信じてなかったんだ?」


「だって、夢だと思ってたんだもの。それともこれが夢かしら」

「夢じゃないよ」


 彼に手を握られ、セレスティーンは夢見心地で握り返した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る