第26話

 目を向けると、ざわめく女性たちの間をアーロンが歩いてくるのが見えた。

 彼がセレスティーンに正対し、ざわめきは一段と大きくなった。


「汚い手を放せ」

 アーロンは金の瞳に憎悪を燃やしてドルファスをにらむ。


「い、いや、こいつは私の婚約者で……」

「手を放せと言っている」

 他国とはいえ、皇子だ。再度の命令に、ドルファスは悔しそうに手を放した。


 アーロンは目に穏やかさを取り戻し、セレスティーンを見る。

「セレスティーン。会えてうれしいよ」


 彼女はとっさにショールを抱きしめるようにしてドレスを隠そうとした。


「俺があげたドレスはどうしたの?」

「……破れてしまって」

「嘘が下手だな。まあいい、とにかく君に合うドレスを」


 彼はぱちんと指を鳴らす。

 同時に光が放たれ、セレスティーンの目が眩んだ。光は一瞬だったが、治まってからも目がちかちかした。


「お前……」

 驚いたドルファスの声に、セレスティーンは首を傾げる。

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