第4話 動いた後はお茶の時間

 グリグリを倒した僕たちは、廊下を奥に向かって歩き出した。廊下の先は、壁沿いに緩い螺旋階段があった。後宮なんて庶民には入れないところだから、ついキョロキョロしてしまう。壁には、過去の魔王との戦いと思わしき絵画が並べられている。キーヴが「なんか、設えの良いダンジョンって感じだね」なんて言うものだから、ちょっとワクワクしてきた。


 階段を上がると、再び扉の前に出た。最初の扉と同じように重厚な造りの扉だ。幼馴染たちが頷くのを確認して、扉をゆっくりと押す。


 その瞬間、強い風に引き込まれ、何かがすごい勢いで僕の目の前を通り抜けた。


「わっ…‼」


 思わずのけぞると、今度は背後で何かが通り抜ける。それは、黄と黒の柄を交互に持った魔物だった。スピードに目が慣れると三頭が僕を囲んでいた。みると、幼馴染たちも同じように囲まれている。魔物は僕たちの周りをぐるぐると回っているだけで襲い掛かってくる様子はない。でも、その輪が徐々に小さくなっていることに気づく。試しにジャンプしてみると、少し遅れて彼らもついてくる。


「ヤーシュ! 巻き込まれないで! ネックレスを奴に向けて投げて!」


 キーヴが叫ぶ。僕は急いで、装備品のネックレスを外し、魔物に放り投げた。するとネックレスはくるくると回転しながら霧のようなものを放ち、魔物を覆い始めた。しかし、魔物の勢いは変わらない。


「キーヴ! シカ! 同時に上に飛んで!」


 二人に声をかけて上方に向かって床を蹴る。三人とも身体強化がかかっているからある程度の高さの確保はできるはず。僕は、全員が輪から飛び出した瞬間に合わせて、魔物と僕たちの間を隔絶するように遮断の魔法を放った。魔物は、僕たちを追えないまま、その輪を徐々に小さくする。そして、霧の中でぐるぐると回り続け、次第に溶けていくように消えた。僕たちは魔物が完全に消えたことを確認して、ゆっくりと着地した。


「ふう…びっくりした。何の魔物だったんだろうね?」

「さあ?」


 部屋の中には、もう魔物の気配はない。ダンジョンでいうなら、階層クリアということかな。だったら、宝箱とかあってもいいよね、なんて思っていると、キーヴも「宝箱ないかな?」なんて言ってる。さすが幼馴染、考えることが似てるね。部屋の中を探索すると、壁の一角に隠し扉を見つけた。罠はなさそうだ。扉を開けると、中に入っていたのは一枚の紙。 


「なにこれ…?」

「はなまる…だよね?」

「もしかして、なんかの暗号だったりするのか?」

「いや…どうだろ…?」


 他には何も見つけられなかった僕たちは、とりあえず手に入れた紙を、持参したマジックバッグに入れておくことにした。


「ここまでは、そんなに強い魔物には出会ってないよね」

「そうだね。ダンジョン的には、まだ浅い層ってことなのかな?」

 

 うん、キーヴ、ダンジョン好きだね。


「なら、部屋から出る前に少し腹を満たしておくか?」


 さすが菓子屋。お茶のタイミングを外さないね。


 シカがマジックバッグからピクニックシートとお茶セットを取り出す。あ、これこの間見た新作のお菓子だ。花びらを模った薄焼きのクッキーにクリームと二色のチョコレートがトッピングしてある。クッキーがちょっと立体になっているのが、よりおしゃれな感じだね。女の子が好きそう。


 僕たちが休憩をしていると、廊下からカツカツと何かが近づいてきた。


「ちょっと! いつまで待っても来ないと思ったら、こんなところで呑気にお茶なんてしてんじゃないわよ!」


 え? 誰?


「私は王妃の娘、ユマ。自分の役割を忘れているような無礼な輩はお仕置きよ!」

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