第2話 まずは改めてステータスの確認ですわ!!




 さてさて。

 もう逃げなくていいように、死なないように強くなると決意したところで、まずは森を歩きながら改めてステータスチェックですわ。


 何事も自己分析は基本中の基本ですもの。




個体名:竜宮院妃咲

種族名:レッサースモールドラゴン

レベル:1


称号:転生者 逃走者


生命力:10╱10

精神力:10╱10

持久力:10╱10


筋力:8

技量:8

知力:8

速度:8


装備

なし


スキルポイント:100


所持スキル

〈えっちゃん〉〈竜鱗〉〈飛翔〉〈隠密〉




 むむむ……。

 やっぱりママゴン様や勇者に比べるとクッソ弱ェですわね!!


 って、あら?



(なんか不名誉な称号が増えてますわ!!)


『称号【逃亡者】は戦闘離脱時に速度に補正ボーナスが発生します』


(えっちゃん丁寧な説明サンキューですわ!! でも補正ボーナス? 称号はステータスに影響が出るのですわね……)



 もう逃げないとは誓いましたが、相手が遥か格上の場合は例外ですわ。

 その時はこの【逃亡者】の称号に頼らせてもらいましょう。



『ステータスの補正に限らず、何らかの特殊効果がある場合もあります』


(なら最初から持ってた【転生者】にも何らかの効果がありますの?)


『称号【転生者】の効果は不明です』


(不明? えっちゃんでも分かりませんの?)


『情報の開示に必要なセキュリティクリアランスが足りません』


(……ふむ。分からないのではなく、教えられないのですわね。えっちゃん、今からわたくしは幾つか質問をしますわ。答えられないことは答えられないと仰ってくださいまし)


『了解しました』



 それからいくつかえっちゃんに質問して、分かったことがありますわ。



(えっちゃんはこの世界の成り立ちや魔物が存在する理由、ステータスやスキルが存在する意味については話せないのですわね)


『……はい。申し訳ありません』


(責めているわけではありませんわ。少なくとも、今のわたくしに知る術がないことを知れたのですから)



 まあ、つまりは――今はそういう細けーこたぁ気にせず強くなれ!! ということですわね!! 分かりやすくて助かりますわ!!

 っとと、ちょっぴり話題が本筋から逸れてしまいましたわね。


 今は能力の確認が最優先でしたわ。



(ええと、次はスキルの確認を……ふむふむ。〈竜鱗〉はドラゴン系の魔物が生まれた時から持っているスキルで、物理ダメージと魔法ダメージを10%カットする!?)



 うわ、すっげ!! チートスキルですわ!!


 どんなダメージも一割も減らすとかシンプルに強力ですわ!!

 生命力が極低のわたくしには心強い味方ですわね!!


 あとは〈飛翔〉……。


 ふむ。

 翼を持つ生き物が共通で持つスキルで、一秒毎に持久力を1消費して空を飛べる、と。


 

(そーらを自由に、飛びたいな!! アイキャンフラーイッ!! ですわ!!)



 ぬおっ!? 本当に飛べましたわ!!


 スキルの使い方なんてこれっぽっちも分かりませんけど、直感で使えるもんですわね!!

 これが、空!! わたくし、鳥のように羽ばたいて空を舞ってますわー!!



『警告。すぐに地上へ降りてください』


(え? まだ持久力は半分も残ってますし、大丈夫ですわ)


『……持久力が尽きたらどうなると思いますか?』


(そりゃあ、地面に……落ち……て……ちょちょちょ!! アイキャンフライ中止ですわ!! 急いで地上に降り――)



 と、そこでタイムアップ!!


 持久力が0になったのか、まだ地面まで数メートルもあるのに疲れがどっと押し寄せてきて翼を動かせないですわ!!


 これ滑空してゆっくり落ちる仕様にできないんですの!?


 いやあああああああああああああっ!!!!



(おごふっ!!)



 い、いたたた……。

 でも痛いということはまだ生きているってことですわよね?


 ゲッ!? ステータスを確認したら生命力が残り1になってますわ!?


 これ、〈竜鱗〉のダメージ軽減効果がなかったら今ので死んでいたってことですの? ……考えるだけでゾッとしますわね。



『これに懲りたらスキルの実験は慎重に行ってください』


(うっ、ド正論すぎて返す言葉もありませんわ)



 それにしても、結構な高さから落ちたはずなのに骨折すらしてませんわね。痛みはありますけど。


 わたくしの身体が頑丈なのかしら?


 いえ、ステータスの上では瀕死状態ですし、そういうわけではない?


 ……まさか、ステータスの生命力が0にならない限り大きな怪我もしないとか?

 死ぬ以外は大したダメージにならないと思えば助かりますが、ますます謎ですわね。


 この世界の謎を解き明かしてみるのも、また一興かもしれませんわね。



(まあ、何はともあれ。ステータスが極低な現状では〈飛翔〉はお蔵入りスキルですわね)



 さて、能力の確認は終わりですわ。


 あと気になるのは、スキルポイントですわね。 ゲームだと欲しいスキルを取得する時に使うポイントだと思いますが……。



『その認識で問題ありません。スキルポイントはレベルアップする毎に100ずつ付与されます。スキル取得に必要なスキルポイントはスキルによって変動します』



 サンキューえっちゃん。


 となると、この最初の100ポイントで何のスキルを取得するかが今後の戦闘を有利に進める鍵になりますわね。

 とりあえずわたくしと相性のよさそうなスキルをいくつか見繕って――



「だ、誰かっ!! たすけてえっ!!」



 ぴゃっ!? 今の何!? 悲鳴ですの!?


 むむむ。

 わたくしが人間に狙われるドラゴンである以上、あまり人前に姿を晒したくないのですが……。


 流石に今の悲鳴を無視できるほど、わたくしは冷酷ではありませんわ!!


 悲鳴が聞こえた方角に全力ダッシュですわ!!



(いましたわ!! うおっ、とんでもねー美少女ですわ!?)



 雪を彷彿させる白銀の髪とアメジストの瞳を持つ十三、四歳くらいの美少女ですわ。

 しかも肩やへそ、太ももを露出したエッ!! な衣装を着ていますわ!!


 あと耳が尖ってる……?



『あの少女はエルフのようです』


(エロフッ!!)


『エルフです』



 まさか生エルフをこの目で見られるとは思いもしませんでしたわ!!


 しかし、問題はその美少女エルフに緑色の肌をした人型の魔物が一匹じわじわと近づいている点ですわね。


 あれはもしかして、ゴブリンかしら?


 フッフッフッ、ゴブリンといえばスライムに並ぶ雑魚モンスター!!

 えっちゃんがスライムの平均ステータスは3と言っていましたし、ゴブリンもそこまで強くはないはず!!


 妙に禍々しいオーラを放つ剣を持っているのが少し気になりますが……。

 所詮はゴブリン!! 勝つる!! 絶対に勝つりますわ!!


 美少女エルフを助けて、あわよくば友好的な関係を築くことだって夢ではないはず!!


 ……とはいえ、今のわたくしは瀕死の身。

 ここは慎重にゴブリンを鑑定し、能力値を確認しましょう。




個体名:なし

種族名:ホブゴブリン

レベル:8


称号:なし


生命力:39╱39

精神力:35╱35

持久力:28╱30


筋力:16

技量:12

知力: 5

速度: 8


装備

ポイズンダガー


スキルポイント:800


所持スキル

〈剛力〉〈物理耐性〉〈火耐性〉〈水耐性〉




 ただのゴブリンかと思ったら、わたくしより格上でしたわー!!

 名前からしてどう聞いても毒持ってそうなナイフ装備してますし!!


 ど、どどどどうしましょう!?


 ここは何も見なかったことにして、逃げるというのも手ですわよね!?

 


『スキル〈隠密〉と称号【逃亡者】の効果を発動しますか?』


(で、でも、ここでわたくしが逃げたらあの美少女エルフはどうなりますの?)


『……ゴブリンは女を苗床として繁殖する生態があります。殺されることはないでしょう』


(それ死ぬより辛い目に遭うってことですわよね!?)



 わ、わたくしは、わたくしはどうすれば!?








分岐ルート発生

           ⇨エルフっ娘を助ける

            エルフっ娘を助けない





―――――――――――――――――――――

あとがき

ワンポイント作者の一言


作者「作者はエルフっ娘を助けたいなー。助けたいけどなー。ちなみにどっちにするかはもう決めてます」



「いきなり不穏な感じがする」「墜落系お嬢様で笑う」「ちゃんと美少女エルフは助けてほしい」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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