お嬢様、竜に転生す。〜極低ステータスも進化を繰り返せば強靭・無敵・最強ですわ!!~
ナガワ ヒイロ
第1話 わたくし、竜に転生しましたわ!!
暗い!!
狭い!!
怖いですわ!!
ここはどこですの!? くっ、落ち着きなさい、わたくし!! クールになれですわ!!
まずは冷静に覚えているところまで記憶を辿るのですわ!!
ええと、最後の記憶はたしか……。
そう、家庭科の授業中でしたわ!! たしか家庭科室の中にガスの匂いが充満して――
あ、これ絶対にガス爆発しましたわね!?
ということはわたくし、もしかして死にましたの!? まさかここは天国!?
いや、こんな真っ暗で狭い天国とか嫌すぎますわ!! これなら地獄の方がマシですわ!!
ガンッ!!!!
痛っ、クッソ痛ぇですわ!! 暴れてたら頭打ちましたわ!!
……あら? 痛みがあるということは、わたくしまだ生きているのでは?
というか、わたくし箱か何かに入れられているのかしら?
はっ!! も、もしかしてわたくし、棺に入れられて仮死状態から目覚めたのでは!?
ということは――火葬される寸前ですの!?
嫌ですわ!!
さっきは地獄の方がマシと言いましたけど、生きたまま炎に巻かれるのは絶対にゴメンですわ!!
『落ち着いてください、
(ぴょえっ!? な、何!? 誰!? わたくしの脳内に直接語りかけてくるのは誰ですの!?)
『スキル〈叡知〉です』
エッチ?
どこのどなたかは存じませんが……。
そういうお話はもっと親しくなってからすべきだと思いますわ。
『……スキル〈叡知〉です』
(あら? し、失礼しましたわ!! 叡知ですわね!? って、スキル? 何言ってますの? そんなゲームみたいな……)
『説明の前に、まずは殻を破ってください』
(殻? それならわたくし、とっくの昔に破っておりますわ!! 親友のみっちゃんから借りたライトノベルを読み漁り、ネトゲやレスバをしたりなど、オタクを名乗れるくらいには以前の価値観をゴミ箱にダンクシュートしましたもの!!)
『……貴女は現在、卵の中にいる状態です。まずは殻を破り、この世に生まれてください』
はて?
声さんの仰っていることはいまいち理解できませんが……。
要はわたくしが入れられている箱をぶっ壊して外に出ろってことですわね?
ふん!! ぐぬぬぬ!! ふんっ、はあっ!!
(やりましたわ!! 殻? から出ることができましたわ!! ……って、ここどこですの!? 洞窟の中!?)
『ここはバンデルシア大陸北部、アルガーナ大森林奥地にある洞窟の中です』
(ばんで? あるが? 聞いたことのない土地ですわね)
『当然かと。ここは竜宮院妃咲、貴女にとっての異世界ですので』
(……異世界?)
異世界……イセカイ? いっせーかい!!
(い、いいいいいい異世界ですの!? わたくし、異世界に転生しちゃったんですの!?)
『はい』
ひゃっほぅ!!
みっちゃんから借りたラノベで何度も読み返した異世界!!
夢にまで見た、あの異世界ですのね!?
これから美少女や美女を助けてハーレム作っちゃったりするのですわね!?
サンキューですわ、神!!
わたくし神様なんて信じていませんでしたけど、今日から毎日お経を唱えますわ!!
『お経は仏教では?』
(あら、〈叡知〉さん。鋭いツッコミ助かりますわ。しかし、いきなり異世界転生したと言われても何をすればいいか分からないですわね)
『……まずはご自分の容姿を確認してください』
(容姿を確認? まあ、分かりましたわ)
あら、ちょうどいいところに水溜まりがありましたわ。
これなら自分の姿を確認……でき……。
え? ええ!? なんか人間じゃないわたくしが写ってますわ!?
灰色の鱗や大きな翼!! 長い尻尾!!
あたまからは捻れた角が生え、牙と爪は見るからに鋭そうですわね!!
そして、ちょっぴりお腹が出て丸々とした可愛らしいフォルム……。
(わたくし……わたくし、ドラゴンに転生しましたわ!?)
いやまあ、でも冷静に考えたら人間が卵から生まれてくるわけないのですけど!!
さっきから喋ろうとしても上手く口が動かせないわけですわね!!
前言撤回ですわ!!
なんということをしてくれやがったんですの、クソ神!!
前世は超お金持ち、文武両道で才色兼備な上に頭脳明晰で容姿端麗、しかも眉目秀麗!!
おまけにおっぱいも大きくて男子の視線を釘付けにしていたわたくしがぽっちゃりドラゴンに転生だなんて!!
『……』
(あら? 〈叡知〉さん、何か言いたいことがありまして?)
『……容姿端麗と眉目秀麗は同じ意味かと』
(細けぇこたぁいいんですのよ!! それくらいわたくしが美少女だったということですわ!!)
いえ、わたくしが美少女云々は置いといて、まずは落ち着いて状況を整理しなくては!!
落ち着いて冷静に……いや、落ち着けるわけねーですわ!!
転生したらドラゴンだった件とか、ギリパクりタイトルとして炎上するヤツですわ!!
「グルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
ぴゃっ!?
な、なななんですの、今の地鳴りは!? いえ、今のは地鳴りではなく、叫び声!?
『竜の咆哮です』
(竜? めっちゃ見たいですわ!!)
『危険です』
(あら、何が危険ですの? わたくしが生まれた場所の近くにいるということは、その竜はわたくしのマザーかファザーということですわ。是非挨拶に行かなくては!!)
ふんふんふーん。
あら、しばらく歩いていたら外の光が見えてきましたわね!!
……むむむ? 何やら激しい爆音や金属音が聞こえますわね。
ちらちらっ。
何となく外に出るのが怖くて洞窟の中からチラ見で様子を見ていると……。
めちゃくちゃ大きなドラゴンと人間の集団がガチバトルしてましたわ。
(な、ななななんですのあれ!?)
『ドラゴンとドラゴン討伐の依頼を受けてやってきた冒険者のようです』
(冒険者!? ファンタジーの定番職業ですわね!!)
見たところ、ドラゴンが冒険者たちからわたくしの目覚めた洞窟を守るように戦っているようですわ。
あら?
ということはおそらく、あのドラゴンはわたくしのこちらの世界でのお母様かお父様?
あ、コレもしかして目の前で親が殺されかけているんですの!?
い、いえ、落ち着くのですわ、わたくし。まだ慌てる時間ではありませんわ。
ドラゴンといえばファンタジーに出てくる最強クラスのモンスター。
ただの人間が数人程度で倒せるほど弱っちぃ存在じゃねーはずですわ!!
『スキル〈叡知〉を使用して対象を鑑定しますか?』
(対象を鑑定? それってもしかして、ステータス的なものを覗き見できるってことですの? ちょうどいいですわ、まずはママゴンから鑑定ですわ!!)
むむ!? 鑑定した瞬間、文字が見えてきましたわ!!
個体名:ザリオン
種族名:グレーターフォレストドラゴン
レベル:85
称号:虐殺者 人類の天敵 森のヌシ 偉大なる竜
生命力: 415╱4357
精神力: 25╱3271
持久力: 393╱5644
筋力:2581
技量:2064
知力:1992
速度:3210
装備
なし
スキルポイント:0
所持スキル
〈竜鱗〉〈飛翔〉〈暴風魔法〉〈大地魔法〉〈光魔法〉〈超速再生〉〈火耐性〉〈土耐性〉〈水耐性〉〈風無効〉〈思考加速〉〈生命〉〈魔力操作〉〈神速〉〈縮地〉〈空間機動〉〈悪食〉〈虐殺〉〈剛力〉〈睡眠無効〉〈麻痺無効〉〈毒耐性〉〈暗視〉……
スキル多っ!!
比較対象がないのでいまいち分かりづらいですが、クッソ強そうですわ!?
と思いましたけど、生命力の数値が十分の一以下にまで減ってる?
生命力、いわゆるHPですわよね? それが尽きかけているということは……ママゴン様、死にかけてますの!?
あ、あの人間たち、この強そうなママゴン様を追い詰めるほど強いんですの!?
(〈叡知〉さん、今度は手前の一番強そうな男性に鑑定を!!)
『承知しました』
続いて人間たちの先頭で戦っているイケメンを鑑定したら……。
個体名:アルフォンス・フォン・リザーリア
種族名:人間
レベル:59
称号:勇者 人類の救世主 剣聖 魔物殺し 高貴なる者 聖剣使い
生命力:1854╱2091
精神力: 642╱1375
持久力: 891╱1544
筋力:895
技量:634
知力:772
速度:985
装備
聖剣ティンダルク 聖盾グラムト ミスリルアーマー 竜骨の首飾り
スキルポイント:1200
所持スキル
〈勇者〉〈聖魔法〉〈剣聖技〉〈火炎魔法〉〈大地魔法〉〈魔力操作〉〈縮地〉〈空間機動〉〈剛力〉〈幸運〉〈思考超加速〉〈並列思考〉〈神速〉〈聖剣召喚〉
え、勇者!?
……ふむふむ。数値上の能力では劣るものの、仲間との連携で少しずつママゴン様を追い詰めているようですわね。
いや、卑怯ですわ!!
数人がかりで一匹に襲いかかるとか騎士道精神や武士の心得というものがありませんの!?
くっ、ここはママゴン様に加勢してお助けしなくては!!
『竜宮院妃咲のステータスを表示します』
(あら? わたくしのステータス? まあ、あれほど強そうなママゴン様の娘ですし? 子供でもそこそこ強いはず――)
個体名:竜宮院妃咲
種族名:レッサースモールドラゴン
レベル:1
称号:転生者
生命力:10╱10
精神力:10╱10
持久力:10╱10
筋力:8
技量:8
知力:8
速度:8
装備
なし
スキルポイント:100
所持スキル
〈叡知〉〈竜鱗〉〈飛翔〉
ク、クッソ弱ェですわ!!
い、いえ、もしかしたらあの勇者やマザードラゴン(暫定)が強すぎるだけで、わたくしは平均的な強さという可能性も……。
『この世界で最弱の魔物、スライムの平均ステータスが3です』
(わたくし、
『はい、クソザコです』
(そこはもう少し気を遣った物言いをしてほしいですわ!!)
どうすべきかしら。
この程度の強さでは勇者には全く歯が立ちませんわよね……。
(……あら? もしかしてこのままママゴン様が負けたら、わたくしも殺されてしまいますの?)
『はい。確実に殺されます』
(ひいっ!! 嫌ですわ!! わたくしまだ死にたくないですわ!! に、逃げないと!! ママゴン様には申し訳ありませんが、所詮は出会って三分の間柄!! ここは自分の命を最優先させていただきますわ!!)
『落ち着いてください』
(落ち着けるわけねーですわ!! それとも〈叡知〉さんはクソザコのわたくしに戦えと言いますの!?)
『逃げるために落ち着けと言っているのです』
あ、はい。……そ、そんなに強く言わなくてもよくありません?
『今下手に動けば、人間たちに気付かれてしまいます。戦闘音に足音を紛らわせるように、慎重に、ゆっくりと後退してください。洞窟には戻らず、森の草木の茂みに隠れてください』
(わ、分かり、ましたわ)
抜き足差し足忍び足、ですわ!!
ふぃー、どうにか戦場から離れることができましたわね。
これも全て〈叡知〉さんの的確なアドバイスのお陰でしてよ!!
いえ、ここは敬意を払って〈叡知〉様と呼ぶべきかしら?
『ご随意に。私はただのスキルにすぎないので』
(あ、それなら『えっちゃん』と呼びますわ)
『……えっちゃん?』
(嫌なら他の呼び方にしますけれど……)
『……いえ、えっちゃんで結構です。スキル〈えっちゃん〉に改名します』
ステータスのスキル欄を確認したら〈えっちゃん〉に変わってましたわ。
声は無機質ですけれど、結構ノリのいい方のようですわね。
(それにしても、ステータス極低ドラゴンに転生とか災難にも程がありますわ。……えっちゃん、一つ質問よろしくて?)
『何でしょう?』
(もしかしてわたくし、というかドラゴンって人間から敵視されておりますの?)
『はい。この世界ではドラゴン、引いては魔物が人類にとっての害であり、討伐対象です。特に竜の素材は高く売れるため、積極的に狩られるでしょう』
オゥノゥ、ですわ。
わたくしも逆鱗や天鱗、宝玉が欲しくてモ◯ハンのモンスターを何度も狩りまくりましたが、いざ自分の立場になると怖いですわね。
(……わたくし、まさか死ぬまで逃げ回らなきゃいけませんの?)
『その答えを、私は把握しておりません』
(そう、ですの)
……嫌ですわ。
(わたくし、逃げるのは大嫌いですの!! 無論、死ぬのも絶対嫌ですわ!! 何より他者より何かが劣っている自分を許せませんの!!)
『ええ、承知しています』
(流石はわたくしのスキル!! わたくしのことをよく知っていますわね!! えっちゃん、どうにか強くなる方法はありませんの!?)
『あります』
あるんですの!? ダメ元でも聞いてみるものですわね!!
『魔物は一定のレベルに達すると、進化することができます』
(進化って、ポケ◯ンとか、デジ◯ンとかの?)
『はい。魔物を倒して経験値を獲得し、進化すればステータスは向上、種族に合わせたスキルを獲得します』
(なるほど、本当にゲームっぽいですわね)
とりあえず、えっちゃんのお陰で当分の目標は決まりましたわね。
目指すは強靭・無敵・最強!!
とりあえずブルーアイズでホワイトなドラゴンを目指しますわー!!
『……レッサースモールドラゴンの進化先にブルーアイズでホワイトなドラゴンはないです』
(ないんですの!?)
こうして、わたくしの異世界生活が幕を開けたのですわ。
―――――――――――――――――――――
あとがき
ワンポイント前世の竜宮院妃咲
金髪ゆるふわロングでメロン並みのおっぱいを持つ超絶美少女。元々は物語で見るような箱入り令嬢だったが、親友のみっちゃんの影響を受けてアニメを見たりラノベを詠み漁ったり、ゲームをしたりするように。また、ネットスラングも多用する。両親からアニメや漫画、ゲームを「低俗なもの」として二度と見るなと言われた時は無言の腹パンで黙らせた。自覚はないが、男より女が好き。
「このお嬢様愉快すぎる」「なぜその進化先があると思った……」「あとがきが面白い」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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