ロボット対魔族
魔族の戦闘スタイルというのは
産まれ持った体に左右される。
翼がある者は空を縦横無尽に飛びながら
素早く動いて相手を翻弄するのが得意で、
角がある者は圧倒的な筋力と鋭さで
攻撃を徹底する戦いを得意としている。
そして、セヴァルと対している彼は
後者の戦闘スタイルを持つ魔族だった。
「おらおらぁ!」
対するセヴァルは全身に魔力を流すことで
身体能力を上昇させ、
蹴りを中心とした武術と
遠距離の魔術攻撃を組み合わせた
総合性の高い戦い方だ。
「どうした!防戦一方か!」
だが、彼は拳と爪による攻撃を
織り交ぜることによって、
セヴァルに反撃の隙を与えない。
正面からの拳なら受け止められるが、
爪はセヴァルの硬い表面を傷つける程に鋭い。
そのため爪の攻撃の際には受け流すか
避ける必要があるのだが、
彼の魔力を帯びた拳は中距離まで届き、
セヴァルの守りに穴を空けてくる。
拳で隙を作り、爪で傷をつける。
なるほど、かなり戦い慣れているようだ。
戦争の時は遠距離から広範囲の魔術攻撃を
放つことの方が多かったので、
魔族一人一人とこうして
直接戦うことはほとんどなかったが、
彼らもこれ程に強かったのだろうか。
だが、彼からの攻撃手段は単純な
肉弾戦だけではなかった。
「この時を待っていた!」
セヴァルが一度体勢を整えようと、
彼から距離を取ったその一瞬だった。
彼の手のひらから放たれた
魔力の網がセヴァルの体に絡みつく。
「どうだ、動けないだろう。
それはお前を捕らえるために用意した
特製の魔力網だ。」
これはただの魔力網ではない。
時間が経過していくに連れて
どんどん強く縛りつけてくる。
更に言えば、これはどうやらセヴァル自身の
魔力を吸収しているようだ。
かかったら最後、決して抜け出せない
穴のない網と言ったところか。
確かに、魔力を吸収されてしまうのなら
魔術で焼き切ることは不可能だ。
吸収が間に合わない程の魔力で
一気に破ることなら可能だろうが、
それだけの魔力を消費してしまえば
彼からの攻撃を防ぎ切れなくなる。
魔族のほとんどを葬ったセヴァルに
どんな作戦で勝つのかと思っていたが、
まさかこんな隠し玉を持っているとは。
少しばかり、彼を甘く見ていたようだ。
「大人しくしていれば、
楽に終わらせてやるよ。
お前のような機械兵器に
楽も苦もないだろうがな。」
セヴァルにトドメを刺そうと、
彼は爪を尖らせながら近づいてくる。
だが、相手を甘く見ていたのは
セヴァルだけではなかった。
「───っ!?」
一瞬にして魔力網がバラバラになり、
近づいていた彼の腹に
セヴァルの痛烈な蹴りが入った。
なんとか堪えた彼であったが、
何が起こったのか分からずに
思わず地面に膝をついた。
そして、顔をあげてセヴァルを見ると、
その秘密を目の当たりにした。
「忘れていた……。
お前は医術者をやっているらしいな…。」
セヴァルの両手の12本の指。
それらが医術のための指ならば、
当然その中には患者の体を切るための
刃物が搭載されている。
網を切り裂くなんて造作もないことだ。
本来なら刃物以外の道具もあるのだが、
戦いになることを想定していたセヴァルは
あらかじめ刃物を多めに用意していたのだ。
「私の所へ単身で殴り込みに来る者が
どれ程の実力か測るつもりだったが、
このような小細工を使ってくるとはな。
街の者や弟子たちのこともあるが故、
ここで終わらせてやる。」
サラの市場に現れたという手配書の男が
どのような結果を呼んだか分からない以上、
治療所を長く留守にする訳にはいかない。
護衛が残っているとは言え
手配書の男が彼と同じ魔族だとしたら、
最悪の事態も想像できる。
「俺がそう簡単にやられるかよ。
一度攻撃を当てたくらいで
調子に乗らない方がいい───」
顎に蹴りを一撃。
膝、脛、腹、胸、背中、腕、肩、
次々にセヴァルの蹴りが決まる。
大武術家マーシャ直伝の技は
文字通りの鋼の肉体を持つセヴァルと
非常に相性がいい。
人間より遥かに丈夫な魔族でさえ、
その連撃をまともに喰らっては
立ることもままならないだろう。
だが、彼も魔族の誇りと
父親の仇のためにそう易々と
倒れる訳にはいかない。
彼を中心に高濃度の魔力が漂う。
「……がはっ…!く、クソ……。
こうなったら、この街まとめて吹き飛───」
全ての魔力と命をかけた、
魔族特有の最終手段。
それは体内の魔力を集中させて
大爆発を起こすという自爆技だ。
あの時は戦場のあちらこちらで
爆発が起こっていたので、
被害を抑えるのに苦労したものだ。
だから今度は自爆される前に
彼の意識を狩り取ってしまう。
セヴァルの手刀が彼の首を捉え、
彼は力なく地面に倒れた。
彼女たちが眠る場所で
このような荒っぽいことは
あまりしたくなかったのだが、
彼がここに来たのだから仕方ない。
セヴァルは彼の体を糸で縛り、
担いでその場を後にした。
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