第14話 坂月タユタ様の作品

企画にご参加ありがとうございました!

仮面浪人の話ですね。身近にいました。都会と田舎では違うと思いますが、結構キツイものがありますw

では早速……



 この大学ほどぬるま湯という言葉が似合う場所もない。キャンパスの中心には芝生があり、学生たちはそこに寝転び、昼からタピオカを啜り、そして寝る。ゆるくて平和で、私はそれを見ながら「こんなとこで満足してる場合じゃない」と心の中で舌打ちしていた。

→ちょっと気になったのですが、時代、場所的にはどのあたりなのかなと。結構前ですが、都会で有名私立大の募集人数に制限がかかったあたりからチャレンジ受験控えが起こりました。不況だと地方大学志望者が増えて進学校ですら浪人控えをしたり、最近ではコロナで県内志望者が増え、地方中堅の大学に優秀な学生が残る印象があります。で、彼らは結構戦略的に活動しているイメージがあるんですね。都会は都会で、就職に有利な企業のバイトやイベントの主催をしていて抜け目なく生きている印象。

なぜこんなに細かいかというと、大学の雰囲気や先輩たちの設定が、主人公との対比になるので、気になりました。

もちろん私が知らないことは多々ありますので、この時点でイメージが合わずに違和感があったというお知らせであります。


 そのために私は、昼は涼しい顔で「この授業、眠いよねー」と言いながら友人とサンドイッチをかじり、夜には机に向かって英単語を詰め込む二重生活を送っている。

→すごく細かいのですが、仮面浪人のリスクに対して、夜の貴重な時間が英単語を詰め込むで良いのか?!という塾の先生としてツッコミがwww


 哲学科の三上先輩は「人間とはつまりカレーライスみたいなものだ」と言い、文学部の千秋先輩は「私の魂は常に徹夜明けなの」と言い、ある男子は「論理的に言えば、僕の遅刻は地球の自転のせいだ」と言った。

→これもちょっと違和感があったのですが、文学部があるのは結構偏差値高めの大学なイメージでして。ただ、もちろん私が知らないだけかもなんですが。


 全員が自分の愚かさを学問的に正当化している。私は内心思った。「こういう人たちにはならないようにしよう」と。

→主人公が、正当化だと思いこういう人たちにはならないようにしよう、に至るまでの思考回路がちょっとわからず。自分は、先輩たちの言葉を聞いて、「へー、そういう風に考えるんだ」と思いまして、そのあとの主人公のその反応だったので、過剰に感じたんですね。過剰さが正しい、正しくないではなく、なぜそういう反応になったのかが知りたい。別の言い方をすると、主人公が掴めないのです。


 しかし不思議なことに、彼らといると楽しかった。無駄話をして、どうでもいいことを考え、駅前のうどん屋で「このうどんには哲学がある」と言い張ってみたりする。

 夜風が柔らかく、笑いが絶えなかった。

→これは先輩たちの様子からわかります。


「人はね、未来のために今を犠牲にするとき、だいたい未来も犠牲にしてるものだよ」

「それ、なんか良い感じに聞こえますけど、つまりどういう意味ですか」

「つまり、カレーを冷ます間に、腹が減るってこと」

 なんだそれは。けれど、そのとき私は少しだけ胸を突かれた。もしかして、私が生きている今は、夢に見る未来よりも大切なのではないか。そんな考えが、一瞬、頭を掠めた。

→前半にあった「上に行く」が何を指しているのかは気になっていまして、「刺激的な場所」としかなかったので、大学のネームバリューのためだけに仮面浪人をしているように読めるのです。ここでいう夢とは……?


 しかし、私の決意は揺らがなかった。七月の模試で好成績を取り、私は勝利の余韻に酔っていた。

→七月の模試は現役生がまだ本気出してないので、全然あてにならないよ主人公!!と、塾の先生として心配が募ります!秋入学の大学とか?


 秋になり、サークルでは文化祭の準備が始まった。屋台で「文学的わたあめ」を売るという企画だ。「文学的」とは何かという議論に三時間費やし、結論は「ピンク色に染めれば文学だ」ということになった。

→秋入学じゃないから、やっぱり七月のは喜んではいけない!w主人公が受験に不慣れな印象。


 私はもう、笑いながら議論に加わっていた。仮の交友関係は、いつしか本物になっていたのかもしれない。しかし、それを認めるのは怖かった。なぜなら私は、彼らを見下してきたのだから。

→このあたりで内省があるのは良かったです。


 文化祭の前日、千秋先輩が言った。

「ねえ、あなた、来年いないんでしょ?」

「……え?」

「わかるよ。なんかね、あなた、いつも遠くを見てるから」

 私は言葉を失った。千秋先輩は笑って続ける。

「でもね、遠くを見すぎると、足元の石に転ぶんだよ」

 私はその夜、勉強の前にサークルで撮った写真を取り出した。笑っている私がいる。それを見て、胸がぐっと締めつけられた。

→先輩から見ている主人公の姿というのは、無理をしている、心から楽しんでいなさそうだ、ということだと思うのですが、「足元の石」が何を示しているかの解釈が難しいなと思いました。入学金と1年間の学費は払っていますから、仮面浪人で本気で受かろうとしたら覚悟は決めているはず。そんな主人公に、先輩は何を伝えたかったのか。(三上先輩はまだ六月だったので、今を大切に、みたいな話はありだと思いました)


「でも、行ってもいいし、行かなくてもいいと思うよ」

「……え?」

「君が何を選んでも、君が誰なのかは変わらない。だから、自分を誇張しすぎない方がいい」

「誇張、ですか」

「そう。人はいつも何かを演じてる。でも、演じることをやめる瞬間が、本当の意味で生きてる瞬間だと思う」

→個人的には、自分で中退を決意し、自分で目標を立て、自分で勉強をして合格したのだから、主体性を持って生きていて、本当の自分を実現しようと挑戦的に生きている…とも読めるのです。(ただ、人を下に見る癖は別として)

ここでは「誇張」がキーワードですが、主人公は何を誇張していたのか? 大学名にすがること? 人を見下して、相対的に自分が上だとしたいこと?


 そのとき初めて、ああ、私この人たちが好きなんだな、と思った。

→結局、ありのままのあなたでいいのよ、と言われて、それを受け入れたのかなと考えました。


 人はきっと、何かを装いながら生きている。でも、装いを脱ぎ捨てて笑えた時間が、人生で一番眩しいのだ。

→先輩たちとの楽しかった思い出の中に、本当の自分を見た、という感じですかね。



総評


人間関係から新たな学びを得て、特に等身大の自分を大切にするというのはなかなかできないことなので、主人公が先輩たちと出会えたのは良かったなと思います。


一方で、無理をしてでも挑戦し、自分を鍛えられる年頃でもあります。

仮面浪人してまで目標に向けて走り抜けるというのは容易ではないので、それをやり遂げた主人公に対しての先輩の言葉はちょっと私にはチグハグに感じました。


大筋としてはいい話だと思うのですが、細かいところの「?」の積み重ねが、主人公が掴めない、周囲との関係でチグハグに感じる、という印象です。

細かくてすみません!

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