最初はお奨めのお酒や思い出のお酒の話だったが、そのうち『お薦め』が映画や本の話になり……いつしかお互いの“日常”の話になった。もちろんカレシに振られた話は押し隠したが……



「アハハハ! 篠崎さん! それ!ハ・ン・ザ・イですから!」


「いやいや! 僕は見たくて見たわけじゃないです! がいきなり番台の仕切り戸を開けたから!」


「でも篠崎さんはビン牛乳をラッパ飲みしながらしたんでしょ!」


 私はケラケラ笑いながら自分の右の手のひらを篠崎さんの左手の甲に乗せ、空いた手でぐい吞みをクイッ!とる。


はやりませんよ!ちゃんと履いてました」


「じゃあ、紐パンで女の子の裸をガン見してたんだ!」


「紐パンなんて持ってないし……女の子は居なかったです!」


「じゃあ誰が居たんですか?! その言い方だと『誰か』は居たんですよね!」


「それは……が……」


「ほら!やっぱり!! このスケベ野郎が!」


 戯れに叩こうとする私の手のひらを篠崎さんも手のひらで受けたら、私の指がスルン! とカレの指に絡んで……“恋人つなぎ”してた。



 ふたり、空いた手で……差しつ差されつ……


 と、私の肘が引っ掛かって徳利が倒れそうになり、慌ててカレから解いたほどいた右手で掴んだら……

 カレの空いた左手が私の右の内腿にポトリ! と落ちた。


「?!」と目を見開いたけれどカレは表情を変えず右手で私の猪口に酒を注ぐ。



 スパッツ越しにもカレの手のひらの熱が伝わり、私の心臓はトクトクする。

 繋いだ手も“湿気”を帯びてきた。


 腰から上は変わらずを続けているのに、黙って留め置かれているカレの手のひらが私の全身を熱くする……



 そう!

 そのままだったら!!

 良かったのに!!



「残念ながら今の僕の一押しの酒、『志梅泉の純米吟醸』はこのお店に無いのです。 ここから少し離れたところに深夜までやってる料亭の様に瀟洒なお店があります。そこなら掘り炬燵の座敷もありますし、そのお店の逸品“金華鯖の燻製”と志梅泉とのマリアージュは絶品ですよ!」


 くっ付けた肩越しに囁きながら……

 カレの左手はミニスカートの下をくぐり、スパッツの……

 もっと奥を探り出した。



 少しの間、成すがままにされていたけれど……



 私の全身はカレの右手の動きとは裏腹に冷えて行く。


 それを伝えたくて私は徳利を逆に傾け、徳利に溜められていた氷水をカレの左腕にサーッ! と掛けた。


 なのにカレの左手はますます激しく動く。


 堪らず私は席を立ち、カウンター越しに声を掛けた。


「すみませ~ん! 氷水をこぼしちゃって!! おしぼりをいただけます?」


 水に濡れたカレの腕を拭いてあげた後、自分のスカートの上に広がったみっともないを拭き、使ったおしぼりをカウンターへ置くと


お願いします!」と声を掛けた。


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