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「なんだったんだよ、今の。」
「今のって?」
豊虫はとぼけた様子の三男雄に苛立つ。
「先生への態度だよ!彼女は動物たちのスターなんだよ。失礼があったら集まりにいけないよ。」
ため息をつきながら三男雄は謝罪する。
「それはごめん。でも、あの人は良くないんだ。危険な匂いがする。」
どこかで聞いたような話だ。
「何が危険なの?」
豊虫は怒りが引いて皆の言う危険というのがなんなのか気になってしまう。
三男雄は言い淀みながら話す。
「あの人は多分だけど…いや変なこと言うんだけど…。きっと人じゃない…。この世の存在ではあるんだけど…。なんて言えばいいのかなぁ。」
頭をガシガシ掻きながら言葉を選んでいる様子に豊虫はなんだか怖くなる。
「何が言いたいの?」
「そのさ。人と交わると不幸しか起こさない存在ってのがこの世にはいるんだよ…。あの世とこの世の狭間にいるような奴らが。」
にわかに信じられないが寺嶋やひぐっさんも先生を物怪の類だと言っていたことを思い出す。
「先生が…物怪…?」
「いや、別にそうとは限らないよ!だけど、なんだかやっぱり人とは違う存在ってのは何か感じるところがあるんだよ。」
「なんで…なんでみのっちはそんなのがわかるの?」
困ったように眉をハの字にしながら三男雄は考え込む。
「はぁ…。そうだよな。そう言う話になってくるよなぁ。」
腕を組みながら歩き始める三男雄に慌てて豊虫のはついていく。
しばらく無言で歩き続ける三男雄の3歩後ろに下がって豊虫は様子を見ていた。
すると急に立ち止まって彼との距離が一歩詰まる。
「うん!決めた!豊虫には言ってもいい気がする!てか、ずっとお前には言いたかった!」
ガシッと肩を掴まれて思わず豊虫は身構えてしまう。
「な、なにを?」
三男雄は豊虫の目をまっすぐ見つめて優しく微笑む。
彼もまた不思議な人を引き込むような表情をよくする。
そんな顔に見惚れそうになっている豊虫を抱き寄せる。
男が相手にも関わらず思わずドキッとしている彼の耳元で三男雄は囁く。
「俺も…物怪なんだよ…。」
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