第20話
契約を終えると、クマノは大きく翼を広げ、
静かに空を見上げて言った。
「――人の国へ行く」
「やっとこのサバイバル生活からオサラバか」
痛む身体をさすりながら、オレは立ち上がる。
「お前と初めて会った時のことを覚えているか?」
クマノの問いに、少し考えてから答える。
「オレは、人に選ばれなかった……とか、そんな話だったか?」
クマノはゆっくりと頷いた。
「その通り。だが――今、人の国に“選ばれた”二人の男と女が現れた。」
「……今、来た?」
意味が分からず眉をひそめる。
クマノは羽をたたみ、淡々と続けた。
「お前が元の世界に帰るためには、彼らを助けねばならぬ。」
ますます訳がわからない。
オレがこの世界に来たのは、“あの日”――前の世界で、秋と冬の境目だった。
こちらの世界では、春に近い柔らかな気温で、
そのおかげでどうにか野垂れ死にせずに生き延びてきた。
だが、クマノが言うには――
“本当に人が現れる季節”は、冬と春の間なのだという。
春に命が芽吹くように、
理想の“変わり目”は冬と春の狭間だ。
しかし、オレが迷い込んだのは秋と冬の変わり目。
実りの終わりと、生命に厳しい季節への境界だった。
だからこそ、オレは“厳しい世界”――バケモノの国に現れた。
同時に、その変わり目から移動したことで、
オレの力は生き抜くために歪み、
本来の人の国では持ち得ないほど、強力で過酷なものへと変革した。
それでも運は味方していた。
案内人である八咫烏・クマノもまた、
偶然か必然か、共に変わり目を渡ったのだ。
本来の召喚とは異なる方法で迷い込んだオレの場合、
元の世界へ戻る際の“時間のずれ”はごくわずか――
一日も経たないほどだという。
なぜそうなるのか、その理(ことわり)には多くの矛盾があり、
人の理解を超えた現象だとクマノは言った。
そして彼は続けた。
――お前が元の世界に戻るためには、
今、人の国に召喚された二人が成す「世界の変わり目」を見届けねばならぬ。
そのために、お前は自らの力を使いこなし、
彼らのどちらかを、あるいは両方を――守り抜く力を得ねばならない。
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