第二十五話 ボン太郎捕獲大作戦

 教室を飛び出した來楓らいふとニュウは、ボン太郎が階段を駆け上がって二階に向かう後姿をかろうじてとらえた。

 來楓とニュウはすぐに後を追った。

 二階に上がるとボン太郎は廊下を駆け抜け、もう一方の階段の踊り場に入っていった。


 ボン太郎が踊り場に入った瞬間、ボン太郎の姿を見失った來楓はボン太郎が階段を降りて一階に向かったのか、それとも階段を上がって三階に向かったのかわからなくなったが、ニュウがなんの迷いもなく三階に向かったので後を追って階段を駆け上がった。


 三階に到達した來楓は廊下に出たが、廊下の先にはボン太郎もニュウの姿もなかった。

 來楓は二人を見失ったとあやぶんだが、階段横の教室からニュウの鳴き声がしたので、二人は三階に上がってすぐに教室に入り込んだことがわかった。

 來楓もすかさずその教室に飛び込んだ。


 教室に入ると、ニュウが掃除用具のロッカーの前で「やんのかステップ」状態で油断なく身構えていた。

來楓はボン太郎がロッカーに逃げ込んだことを瞬時に理解した。


「ありがとう、ニュウ。ボン太郎をロッカーに追い込んでくれたのね」


 來楓は興奮状態のニュウをさすってろうねぎらいつつ、ニュウに落ち着いてもらうようになだめた。

 それからロッカーの中にいるであろうボン太郎に語り掛けた。


「ボン太郎、怖がらないで。私たちはあなたに何もしないよ。扉を開けるけど、お願いだから逃げないでね」


 そう言って來楓はゆっくりとロッカーの扉を開いた。

 ロッカーの中にボン太郎がいると思った來楓は、ロッカーの中の光景を見て目を疑った。


「……えっ? な、なんで……? これって、どういうこと……?」


 來楓がロッカーの中を覗くと、そこにボン太郎はおらず、代わりにのだ。


「あ、あなたは……だれ……?」


 來楓はそう尋ねたが、男の子の髪が鮮やかな若草色で、瞳の色も澄んだエメラルドグリーンであることから瞬時にこの子がボン太郎であると直感した。


「ボン太郎……あなたなの……?」


 來楓にそう問われるとボン太郎は敵意をむき出しにした目で來楓をにらみつけた。


「大丈夫よ。あなたに危害を加えたりしないから」


 來楓はそう言ってボン太郎に手を差し出したが、またしてもボン太郎に手を打ち払われてしまった。


「サワるな。來楓はボクのテをろうとしたからキライだ」


 そう言われて來楓は異世界に転移する前、お弁当のお箸の代わりに、つい出来心でボン太郎の枝を箸の代わりにしようと剪定バサミをボン太郎に伸ばしたことを思い出した。


「しまった……。そうだったわね。あの時は本当にごめんね」


 來楓は後悔し、謝罪した。

 しかし、その件を責められたことで、やはりこの男の子がボン太郎で間違いないと確信した。

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