第3章第2話 図書室の怪しい動き



放課後の図書室は、静かというより落ち着かない雰囲気に包まれていた。

碧と結は机に座り、昨日の目撃情報を整理している。


「まず、原稿を最後に見たのは佐藤さんよね」

「うん。昨日の放課後、全部集めて机に置いたって」

「でも、今日来たら消えてた……」碧が首をかしげる。


結はメモ帳を広げ、図書委員の出入りを確認した。

「鍵を持っているのは、委員長の高橋先輩、副委員長の田中先輩、佐藤さん、それと私たち以外の数名だけ」

「怪しいのは……昨日の放課後、誰が出入りしたかだね」


碧は棚の上や床の隙間を覗き込みながらつぶやく。

「うーん……インクの匂いが残ってる棚がある。もしかしてコピー機を使った痕跡?」

「コピー機……確かに原稿を保存するなら使うかもね」


その時、図書委員の田中がそっと入ってきた。

「碧ちゃん、結ちゃん、どうしたの?」

「ちょっと事件の調査中。昨日の原稿の行方を調べてるの」

田中は少し顔を曇らせ、手元のカバンをもじもじする。


「実は……昨日、コピーをしていたら、段ボールが倒れて原稿が床に散らばったの」

碧の目がぱっと光る。

「散らばった……つまり、一部がどこかに紛れたってこと?」

「そう。でもすぐに拾ったつもりだったんだけど……一枚足りなくて」


結は冷静にノートを取る。

「それなら、原稿は図書室内にまだある可能性が高い」

「だね。犯人は隠すつもりじゃなくて、事故で紛失しただけっぽい」碧が言うと、田中は少し安心した顔を見せる。


だが、碧の観察眼は止まらない。

棚の隅に、かすかに折れた紙が見える。

「ん……あれ? ちょっと待って」

結も視線を合わせる。

「紙が、コピー機の近くから微妙に動かされた跡がある……」


碧は床にしゃがみ込み、紙を拾った。

そこには、原稿の一部がくしゃくしゃになった状態で残っていた。

「なるほど、コピー機の近くで落として、そのまま気づかれずに残ってたんだ!」


結は深くうなずく。

「事故だけど、複数人の動きが絡むから、ちょっとした事件みたいになったわけね」

「そう、でももう手がかりは揃った!」碧は小さくガッツポーズ。


こうして、碧と結は図書室の“消えた原稿事件”の核心に近づいた。

あとは、最後の一枚を見つけて全てを揃えるだけ――。


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