優しさの百分率

瀧田悠真

第1話

 光が街の風景を包み込んでいた。見渡す限り、全てが白い街を。

 時計塔や家々、小川の川底も、そこに架かる橋も。街灯も石畳も風見鶏も、白。行き交う人々の髪の色までみんな揃って真っ白なのだから、少し笑える。太陽の光を浴びるそれはとても荘厳な景観なのだと、街の人間は口を揃えて言う。

 冬が過ぎて雪がなくなっても色を変えないこの街にわずかな色彩を与えているのは、少しばかり残された木々の新緑と、窮屈そうに息づく生き物くらいだ。

 それは、綺麗な街だった。息がつまりそうなほど、綺麗な。

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