「君がため、常世に堕つ」
夜、裂けぬ。
彼方に君の笑み、ほの白く灯りて見えぬ。
澄める聲、血を薄めし指、
そのすべて、救いのかたちを成せり。
されど、救いは常に毒なり。
あはれ、君を慕ふたび、
この世は静かに崩れ落つ。
理(ことわり)は狂ひ、
祈りは罪と化し、
われが内なる神、われを喰らふ。
幾たび生を焦がるれども、
辿り着くは同じ夜の底。
輪廻は鎖となりて、
魂を繋ぎとむ。
紅を引ける唇、囁きぬ。
「壊して、繋げて、壊して、また繋げ」
あゝ、いづこまで壊せば、君に届くや。
屍の聲、花の都に満ちぬ。
名を呼ぶごとに、死者ひとり増ゆ。
それでもわれは征く。
君を連れ、空を亡くし、
この夜の淵へと堕ちてゆく。
——契りの果てに。
指を伸ぶれば、そこに君あり。
血の温み、ほのかに残れり。
もはや逃るる要なし。
帰る道も、いまはなし。
この輪廻を断たむは、
われらふたりの業(ごふ)なり。
夜明け来ぬ。
罪の色した朝日、
われらの影をひとつに溶かす。
そしてまた、世界は始まる。
——君がため、常世に堕つ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます