竜奇譚~空に舞い、地に祈り~
鈴懸
第1話 序章 始まりの時
「この
いつだ?どこで?何年、いや、何千年も前だ!
何が起こっている?どこに居る?」
古い大きな石城の中、長年、王として君臨してきた
世界を大きく四分割している大陸の一つ。
人と人外と魔性、ケモノや多種多様な生き物が混在する世界。
力のあるものが支配する弱肉強食の世界。
その中にあって
この地を何万年と支配してきた。
上級魔性の
美しい顔立ちにすらりとした
薄暗い廊下の向こうに長いマントを
「貴様、誰だ⁉」
黒い塊がゆっくりと動き、
「…ほう。珍しい生き物がいる。まだ生きていたのか?
こちらを見る薄紫の瞳がキラリと光る。
ゆっくりとフードを下すと漆黒の長い髪が揺れ、美しい整った顔が現れた。
「⁉ シオン!翼の一族の…どうしてお前がここに居るんだ⁉」
「久々に会うたのだ。もう少し歓迎してもよかろう?」
シオンと呼ばれたものがニヤリと笑う。
「誰が歓迎するか!お前の存在自体がろくでもないだろうが!」
「言い方…相変わらずだな、
何万年生きてきても成長せんな。まあ、よい。
お前にちょっと預かってもらいたいものがあってな」
シオンの手元が動く。
その
それぞれが
「シオン、何だそれ?まさか…竜じゃないか!
しかも放つ色は違うが三つともコハクだ!
コハクは
「実は生き残った姫がいてね。私が姫から頼まれて作ったのだ」
シオンから不敵な笑みがこぼれた。
「作った?そもそも生き残ったといって、いったい何千年前のことを言っている⁉
竜にそんな寿命はない!」
「私が少しずつ命を分け与えてね。でも、とうとう終わりが見えた。
だから、姫から懇願されてね。血を残すことにしたんだよ」
シオンが遠くを見るように言葉を紡ぐ。
「
私が少し
寿命も長いし力も強い。
今、世界はまた雑然としつつある。
お前が大切に守ってきたこの大陸も決して穏やかとは言えなくなるだろう。
この子たちは役に立つよ?この大陸のために、
この子たちを育ててみないかい?」
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