第19話 天昇(てんしょう)
「お前、誰だ?」
時々、一人になりたくて結界を張ることがある。
ある時、その結界の中に入って来た子供がいた。
どうして入って来られた?
上級魔性として生まれ、その強い力で他のヤツらを消してきた。
東の大陸の王となって
俺に忠誠を誓ったヤツらも信用なんて出来なかった。
いつ手の平を返してくるか分からなかった。
弱肉強食の世界で俺は生きてきた。
俺の側仕えに
俺が大陸を治めるようになって随分経った頃、
城で働いていたヤツと気が合った。
以来、そいつの一族が俺の側仕えとなり、俺の世話をしてくれるようになった。
魔性としてもそれなりに強い力を持っていた。
一族はいつも俺の側で影のように俺を支えてくれた。
「お前、誰だ?」
結界を張った中に子供が一人入り込んできた。
まだ十歳ぐらいの淡い茶色の髪の薄い金色の瞳の男の子。
そいつも不思議そうに俺を見ていた。
「…
子供はそう俺に答えた。
遠くで子供の名を呼ぶ声が聞こえた。
側仕えをしている
では、
俺はそいつの顔を見た。
無垢な心。子供の純真な魂が見えた。
子供は声のする方へ駆けて行った。
「
俺は聞いてみた。
「はい、
いつも穏やかに話し、笑顔を絶やさなかった。
俺が動きやすいように、生活しやすいように、いつも配慮してくれていた。
俺は、俺以外のものに興味を持たなかったから、
いつも側にいた
「
俺は思わず俺らしくないことを口にしていた。
「王さま、こんにちわ」
俺はその笑った顔を見て、何故だか「いいな」と思った。
今まで子供の笑顔を見ることなどなかった。
いずれ俺の側仕えにさせると
見習いをさせ、早く仕事を覚えさせるためだと言った。
俺は
いつも周囲を気遣い、誰かの手助けをするような子供だった。
俺は他人のために動く
力を持つ魔性ほど自己中心的だ。
自分以外のものに目を向けるなんて考えられなかった。
いつしか、俺は
ある時、
「
まだ、中央だけですが平穏で人が笑っていられる。
俺のお陰と言われて俺は困惑した。
俺は俺のためにこの大陸を支配してきた。
俺のために戦ってきた。
だが
「
俺は聞いてみた。
「はい。とても穏やかで温かい地です。
私はこの大陸全体がそうなればいいと思っています」
そんな風に思っているヤツがいることが不思議だった。
俺は
自分以外に興味を持つことなど初めてだった。
側仕えの仕事以外にも大陸や世界のことを学んでいた。
城の中の体制や働いている職人、魔性たちのことも把握しようとしていた。
俺は
そして、時間があれば俺の話し相手をさせた。
俺は
「
少しきつめの美人で、元々この東の大陸で俺の下についていた。
気まぐれで、フラッと他の大陸へ行っては
俺とは男女の関係にあった。
「
俺は
「本当にそれだけ?」
そう言うと、
いつもならそのまま
何故か
何故だ?
いつしか
今までなら無理やりにでも手に入れていた。
オレにはその力があった。
だが
俺は
俺を尊敬の眼差しで見る瞳も好きだった。
俺は丸ごと
「
俺は
「
この大陸のためにご尽力してくださっています。
私はそんな
けれど、もう一人の私は…私は、
もう一人の私は、
俺は嬉しくて
「
俺は
俺は
今までにない感覚だった。
誰かを抱いて心が満たされることなんてなかった。
誰かを愛しいと思うことなんてなかった。
俺は
「私よりその子供がいいの?私がこんな子供に負けるなんて!」
俺は
昔の俺だったらすぐに
きっと
そして、全土を敵に回して、その
悲惨な死に方だったと聞いた。
肉体は
俺は
そして、そこを直轄地にした。
*
しかし、
力のある魔性でも
長い間とても大切にしてくれたこと、全てに感謝していると言った。
そして、月は夜空からいつも
そして
長い年月、
そして、時が経ち、
雰囲気や話し方、立ち振る舞いなど
性格も
そして、いつしか
一族が代々仕えてきた王に自分も仕えることが出来て嬉しかった。
そして、
幼い頃から聞かされて育った。
だから、城に上がった時、昔からいる魔性から
一族が誇りにしている者に似ているなんて、何て素敵なことだろうと思った。
そして、より
だが、
だが、
鈍感なふりをした。
差し伸べてくる
しかし、このままだと
だが、
それも
そして
「ねえ、
ある時、
「
「
結界まで張っていたのに
そして、タマゴまで持ち出した。
まさか今頃、
しかし、タマゴから
そしてタマゴから
しかし、
強い魔性の子を、ただの使い魔にするとは、
今になって
だが、その不安は的中した。
だから、
本当は魂を消滅させることも出来た。
だが、それは転生する機会を失う。
いつか、
傷は手当てしたが
心の傷は誰にも治せない。
そして、首を絞められる
その傷を指でそっと
突然、
そして口付けてきた。
唇を合わせ、唇を割って入り込み舌を絡めて来た。
激しく
どうすればいいのか分からなかった。
唇が離れた時、
「私は
「
俺は
俺は
「私をですか?
「初めて見た時、
確かに雰囲気も話し方も仕草も、
だが一緒にいるうちに
俺は、目の前にいるお前を見ている。
「
けれど、すぐに苦しくなった。
私は
一族の誇りの
私は
私は
今度は優しく口付けする。
そしてゆっくりと唇を
熱を帯びた声が漏れる。
心が満たされた。
久しぶりに味わう感情だった。
だから待っていた。
次の日、三つ子たちと一緒に
「
「
三人の小竜たちが声を揃えて言った。
fin
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