第21話 ナウルの恋
子供を産んだのに、母親なのに、
引退なんか考えなかったと言った。
でも、お二人は万が一戦場で何かあっても、何が何でも帰って来ると、
どんな姿になっても帰ってくると言った。
そして、最期はお子さまたちの前で
なんて、お強いのだろうと思った。
ボクはそんな
ボクは、
でも、
ボクは
愛されてもいないのに、
ボクは
ボクは
「ナウル、無理するな」
「えっ?何をですか?」
ボクは何のことか分からなかった。
「
「えっ?
ボクの方が困ってしまう。
そんなこと言われても、ボク自身がどうしていいのか分からないのに。
「
アイツは女の扱いを知らない。
お前が望むなら、言葉で伝えないと伝わらないぞ、ナウル」
そんなこと言葉になんかできない。出来っこない!
ボクは
ボクは、ボクの側でボクの香りで
ボクは何も答えられなかった。
ナウルが側に居てくれるだけでよかった。
ナウルの立たす香りが好きだった。
ナウルの側でだけ、ゆっくりと休むことが出来た。
物心ついたころから一人で、家族は知らない。
気が付いたら兵士としての訓練を受けていた。
東に来てからも
やがて幹部の一人となり、
他の幹部と目的を同じにし、協力はしたが基本は一人だった。
今、ナウルが側に居る。
だから、何が何でも生きて帰ると、その想いが力となり強さとなっている。
だが、ナウルをどう扱っていいのか分からない。
どうしたらナウルを喜ばせられるのか。
ナウルの望みを
そもそも、ナウルの望みは何なのか?
「で、何でオレなんだ? ああ⁉
「仕方ないだろ?女の扱いならお前が一番詳しいはずだ」
「それが人にものを頼む態度か⁉」
元々、二人は同じような性格でそりが合わなかった。
その対応を任された
一匹狼で我流でやってきた
しかも前世、
人間になぜ教育されないといけない、と
しかし、部隊として動くのに勝手は許されない。
「うるさい、バカども。話にならん」
「
「そもそも、ナウルと話をしたのか?
ナウルから聞かないのか?
ナウルの心はナウルだけが知っている。
ナウルの口からナウルの気持ちを聞かないで、どうする?
お前、何年生きてきたんだ?」
ある日の午後、訓練場の上の小高い丘に
いつもの香りが
ナウルがそこに立っていた。
「ナウル、来たのか」
「何をなさっておいででしたか?」
ナウルがそっと近くに腰を下ろす。
「考えていた。俺はどうしたらいいのか。
どうしたらお前を喜ばすことが出来るのか。
お前が望むことを、どうしたら
俺はお前の心が知りたい。
教えてくれぬか?ナウル」
ナウルは突然のことで言葉が出なかった。
ナウルは自分の気持ちを伝えることが怖かった。
一度、
その時の悲しさ、
だったら何もなかったことにした方がマシだった。
「
こうして、
ナウルは自分に嘘をついた。
ついた嘘にナウルの心は悲鳴をあげそうになっていた。
苦しかった。悲しかった。
自分を
ナウルは
そんなナウルを見て、
「すまない、ナウル。
お前に嘘をつかせる気はなかった。
ただ、俺はお前の気持ちが知りたかった。
お前のことが知りたかった」
「
ボクは
ボクは…、
ナウルは気持ちを
ただナウルを
ただ寝るだけの何もない殺風景な部屋。
部屋に入って黙って立っている
ナウルが嬉しそうに顔を上げた。
二人の目が合って
「
ナウルが
ナウルは背伸びをして
ナウルがいつもの香りを立たせた。
ほんの少し違う香りを混ぜて。
ナウルは自ら衣服を脱いだ。
そして
ナウルの瞳から涙が
ナウルは
「
ナウルの
ナウルの口から歓喜の声が漏れる。
ナウルを求め続けた。
ナウルは幸せ過ぎて
この時がずっと続けばいいのにと心から願った。
数日後、
ナウルは見送り、
「想いが通じてよかったな」
「はい、
あの時、違う香りを少し混ぜたんです。いわゆる、媚薬です」
ナウルは少し困った顔で
「いいんじゃないのか?
お前の親は自分のためにその力を使えと言ったのだろう?
それに
ナウルはその言葉を聞いて目をしばたたかせ、そしてニコッと笑った。
fin
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