出会いとマドレーヌ②
「山田ってお前と同じクラスだよな? どんなやつなんだ?」
「山田くん? 僕の印象でしかないけど、とにかく真面目な人だね。確かバスケ部で、頼まれ事もそつなくこなすし、テストの順位も上から数えた方が早かったような気がする」
「俺とは正反対じゃんかよ〜」
確かに性格的に反対の二人だが、山田くんは真面目すぎるがゆえの取っ付きにくさがある。
「そんな山田がなんで冥と二人でいるんだよ。僕的には俺と同じで真反対だぜ?」
「そこは僕にもわからない。気になるなら一回包島さんに聞いてみたらいいじゃん。包島さんだったら答えてくれるかもしれないし」
「でも直接聞くのもあれじゃん?」
「まあ確かに」
下手をしたら関係が拗れてしまうわけなので、慧が慎重になるのも無理はない。
それに、間接的に聞いたことを聞くとなると、それもそれで展開としては面倒くさい。
「僕は包島さんと実行委員で一回しか会ったことないけど、彼女が浮気するとは到底思えないけどな」
実行委員で話した印象では、何かやましい事を裏でやっているような子ではない。
もちろん表面的な部分でしか接していないのでわからないことの方が多いが――
何か慧の方に問題があるのでは、そんな違和感を抱いてしまった。
「俺も疑いたくはねぇーけどさ。でも見た証人が目の前にいるわけだしな」
「慧は本当に心当たりないの?」
「だからねーって!」
慧の荒らげた声は教室全体にこだまする。
「まあいいや、とりあえずはこのままでいく。またなんかあったら相談するから」
「ああ、わかった」
慧の煮え切らない態度が、より一層僕の疑心をかき立てた。
その後も少し近況を話し、帰ろうと席を立とうとすると、慧が気まずそうな表情を浮かべていることに気づく。
「慧、なんか気になることでもある?」
と僕は咄嗟に尋ねてしまう。
「実はさ……今回呼んだ理由は一つだけじゃなくてさ。実はお前を紹介してくれってやつがいてよ」
慧は机で指をもじもじさせる。
「俺のクラスメイトの女子なんだけど、会ってくれないか?」
先程よりも声のトーンが一つ下がり、バツが悪そうに頼みかけてくる。
「まあ、会うくらいならいいけど」
慧が人を紹介することなんて滅多にない。
だからこそ断ると慧の顔が立たないと思い、僕は思い切って会う提案を受け入れることにした。
「ホントか? 良かった〜。断られたらどうしようかと思ったぜ」
慧は安心したのか、ホッとした顔をしている。
だが同時に、額に汗を滲ませていた。
「会うのはいいとして、理由だけは聞いてもいい?」
「あぁ理由か。なんかお前のお菓子が食べたいらしい」
「僕のお菓子? 腕前には自信があるけど、正直プロと比べたら全然だよ?」
僕が作ったお菓子を理由に会いたいというのは、いささか不自然だ。
もう少し違う理由ならともかく。
「それに、“会うだけ”って言っただけで、お菓子を作るなんて一言も言ってないからね」
そう、僕は“会う”と言っただけで、先方の提案を受け入れるとは言っていない。
義理もない人にお金と労力をかけるほど、お人好しではないのだ。
「それでおっけー。俺も前置きとして伝えてはあったんだが、本人から伝えた方が何かと都合がいいだろ」
「作らなくていいの?」
僕はあっさり引いてしまう慧に少し驚いてしまう。
頼み込んできたからには、紹介相手の要望を叶えるように動くと思ったのだが、そうではないらしい。
「全然いいよ。てか俺が作るか決めれるわけじゃねーし、お前が作りたくなかったら作らなくてもいい」
「そっか、ならそうさせてもらう。なんかごめんね」
「いや、お前に無理強いして作らせた方が気分悪いだろ。それに彼女も、お前から断った方が納得できると思うしな」
ピコン、とスマホの通知音が鳴る。
慧は慌ててスマホを確認すると――
「彼女が用事終わったらしいから、迎えに行ってくる」
そう一言を残し、教室を後にした。
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