魔変の森

…外の光が眩しい…

それと…

「空気が気持ち悪い…」


お姉さんたちの話だったら…ここが…

魔変の森…

この森にあった魔力溜まりに突然異変が生じて、変異した魔力が空気や木々に大地を汚染してこうなったみたいだけど…


「最上位の魔物の核を植えられた私にとっては相性が最悪…」


私は最上位の魔物の核を植えられたせいで、魔力に敏感になってるから、ここの変異した魔力に汚染された空気は、すごく気持ち悪い…

でもなにより…


「…また魔物…」


変異した魔物が大量に蔓延ってる…


「この森にどれだけいるの…?」


魔物にも変異した魔力が影響して、魔物が変異魔力で強化されて狂暴化してるから…

倒せばするけどかなり面倒…


「いくら数がいても倒せるけど…数が多いと面倒くさい…」


今斬り伏せたのも、元はジャイアントスライム《巨大なだけのスライム》だったみたいだけど、禍々しい色になってるし…触手飛ばしてくるし…闇魔法は撃ってくるし…【力】で作った剣で魔法も触手もスライムも一撃で斬り殺したけど…


「ウザったい…」


それにこの森自体かなり広いみたいだから…

まだ14歳の私には辛い…

身体が強化されてるとはいっても…

【力】を引き出してない今の状態だと、そんなに持久力もないし…


「流石に…ちょっと休憩…」


この木の幹に身体をもたれ掛からせて…


「ふぅ…疲れた…」


大体あの洞窟から出てから2時間くらい…かな?

太陽の位置を見る限りは…そのくらいかな…


「…いつまで続くのかな。この森…」

「あと5時間ほどじゃのう」

「誰?!」


この森に人間がいるわけ無い!

それにさっきまで気配を感じなかった…!

【力】で気配がよく分かるようになってるのに…!

足音もなかった…!


「うむ?そう警戒するでない」

「………あなた何?」

「ぬ?」

「生きてる感じがしない、それに気配が

「くく……あーっはっはっ!その事を感じ取られるとは!そなたやはり普通の人間の少女ではないの?」

「……どうせ気づいてるでしょ?私の気配で」


きっとコイツの力量ならわかってる…

私は気配を隠すことが出来ないから…

…やり方もわからないし


「うむ。少々そなたを試したくてな」

「試す?」

「…まぁ我の予想通り…よく力を制御しているのう」


………私の【力】のことだね…


「…貴方は結局何なの?」

「ふむ…言っていなかったな…

…我は、そなたが植え付けられた心臓を持っていた魔物…神獣【ネイルフィータ】と同じ神獣【リファリス】である」

「神獣…」


わたしのこの【力】は…この植え付けられた心臓はやっぱり神獣の…


「……で、神獣が一体私の何を試したの?」


……予想はできるけど


「…我は、そなたが植え付けられた心臓の持ち主である神獣の知り合いでのう。

あやつの心臓が誰かに植え付けられた事に気づいての、その者があやつの力を使うのに適しているか…

いや、適合したか気になって見に来たら…

そなたがおった」

「………なるほどね」

「しかしまさか…あのクズを殺すとは

あのクズを殺すまでの道中かなりの敵が、強化された魔物がおったであろう?

アレを全て殺した上で、あのクズを殺したことに我は驚いておるのだ」


……へぇ…


「神獣にもあの悪魔の話は届いてるんだ」

「……あのクズはあやつがとある事があって死んだ際にその死体を我と複数の神獣がそれを処理しようとした際に、あやつの死体を奪って行きおった。

幸いあやつの気配がまだ残っていたからそれを辿っていってどうにか死体は処理できたが…心臓だけはもち逃げられての…」


……あの悪魔ってホントクソね


「あの洞窟も突き止めたのじゃが………あのクズがあやつの心臓を使って実験をしようとしていると知っての?」


……まさか


「実験に失敗し適合しなければ、理性と知性なき獣となりあのクズにも処理できぬと思っての、その際にあやつの心臓も処理してしまおうと思ったのじゃ」


…………………


「つまり…私が適合してしまったのは予想外だったと」

「そういうことじゃな」

「で…私の左腕に植え付けられてる、神獣の心臓を取っていくの?」

「……そんなことはせぬ」

「…………へぇ?」

「あやつの力がそなたに適合してしまっておるのだからな。それを奪い去っていくことはせぬ」

「ふーん…」

「それにしてもそなた…まだ14であろう?言葉遣いにその落ち着き具合は年齢のわりにかなり大人な雰囲気を纏わせているが……一体どうしたのだ?」

「…………」


どうせ、元々こういう性格って言っても騙せないだろうし…

………正直に言うしかない


「…私はね。神獣の心臓を植えられた翌日から、神獣の圧倒的な力の流入によって痛みに苦しみ始めると同時に、神獣のエネルギー全てに含まれていた神獣の力の使い方の知識が脳に流れ込んできたの」

「ほぅ…?」

「そして、14歳の私の脳は耐えられるわけがない、だけど私が壊れる前に、私の脳に流れ込んできた力の使い方で、治癒と身体強化があったから、それを使ったの」

「ふむ……」

「身体強化の応用で脳を永続強化するようにして、同時に治癒で脳が壊れないように修復した結果、私の脳は既に人のものじゃない」

「…なるほどな。そして、永続強化の影響で、口調から性格、ありとあらゆるものが、大人に近い、年齢にそぐわないものに変わったということかの?」

「そういうこと」

「興味深いのう…。」

「実験は遠慮させてもらうから」

「そのようなことはせぬわ!単なる、興味心じゃ!」

「ならいいけど」

「はぁ…そなた…よくそれを決断できたの?壊れていく以上、正常な思考は出来なくなるであろうに…」

「それは一つの奇跡ね」

「…………奇跡か……」


そう、あの時、私が生きれたのは、あの一瞬だけ、誰かに呼び掛けられた気がしてその一瞬で、生き残る手段に気づいて、それを行えた…

………あの一瞬に私は救われた

あの時に気づけなかったら私は壊れていた

でも私は気づけれたから今ここにいる

……正直、分の悪い賭けに偶然勝ったようなものだけど


「さて……私はそろそろ行くから」

「ぬ?もう行くのかの?」

「あくまで休憩しようとしてただけだから」

「なるほどのう…」

「じゃ、さよなら」

「うむ」 





「…我もついて行くかの」

「お断りさせてもらうから」

「……聞こえておったのか」

「で…ほんとについてくる気?」

「うむ、そなたに植えられたあやつの心臓のこともあるしの」

「はぁ…それを言われたら断る方法ないでしょ?」


どうせ計算づくなんでしょうけど


「それもそうかの。」

「……そういえば、私、力を使う際、どうしても負荷が掛かってかなり苦しいけど、これどうにかする方法ある?」

「……ふむ…そなたは元は人の身であるからのう…対処の方法かの…」

「ないの?」

「いや、制御すれば問題ないのじゃが…神獣の力にそなたの左腕が既にほとんど侵食されておるじゃろ?」


……確かに私の左腕はもう既に、神獣の力に侵食されて、爪は神獣の鋭い爪のようになって、左腕全体から白銀の獣毛が生えてるし、もう殆ど侵食されてる。唯一、腕の形と手のひらはまだ形を保ってるけど…


「確かにそうね…」

「うむ…だから迂闊に制御しようとして失敗すれば、そなたがより侵食されてしまうのじゃ」

「……となると、別の方法を見つける必要があると」

「そういうことじゃな」

「……こっちの旅も長くなりそうね」

「…こっちの旅じゃと?」


そういえば言ってなかったっけ


「私は、私が幸せになる旅に出る所だったの」

「なるほどのう…」

「で、結局貴方はついてくるんでしょ?」

「そうじゃのう…我はちと、そなたのその旅に興味が湧いてきた、少々それを見届けるためにも、ついて行こうかの」

「……わかった。じゃ、よろしく、リファリス」

「うむ、よろしく頼むぞ…………………名前なんじゃ?」


………そういえば言ってなかったわね


「リーアよ」

「うむ。良い名じゃの」

「…ありがとう。私も今のこの名前は気に入ってるから、そう言ってくれると嬉しい」

「……今の…ということは…」

「うん、私と同じあの、悪魔の実験の被害者のお姉さんの遺言で、もし自分の名前が名乗れ無いならお姉さんが名付けたこの名前を使ってって言われて、この名前を使わせてもらってるの」

「……なるほどのう…」

「…じゃ…行こうか、リファリス」

「うむ。まずはどこに行くのじゃ?」

「まずは…ここから一番近い人間の都市、エイリス」

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