第1話 主人公とヒロイン

「──これより、新入生諸君に“契約モンスター”を授与する!」


 入学式を終え、クラス分けも終わった後、契約モンスターを授かる為の儀式を行う。

 その為に『召喚の間』に案内される。実物を見れるとは、感動のあまり泣いちまいそうだぜ。


「ではまず、アレン・シグルズ、前へ!」


 アレン・シグルズ、この世界の主人公の名前だ。

 背はそこそこ高い、整った茶髪の透き通った黒目のさわやかイケメンって感じだ。三人称視点でしか見たことなかったけど、実際に見るとマジの美男子ですね羨ましい。


「さあそこの紋章の中に入り、祈りなさい。そうすれば君と相性抜群のモンスターと出会えるわ」


「はい!」


 先生が指し示す。床に記された召喚の為の紋章だ。

 先生の指示に従って中へと入り、両手を組んで祈りを捧げると、紋章が輝きを放ち、放たれた光の粒子は主人公の前に集まり、小型の白銀のドラゴン。尻尾が星屑みたいに煌めく。


「こ、これは『コメットココドラ』だ!私も初めて見るよ!」


「え!こ、この子があのSランク級の!?」


 その場に居た人たちがわっと歓声を上げた。

 だが俺だけは違った。なぜなら簡単な話、前世で知っているからだ。


(やっぱり主人公はコメットココドラだったか)


 ここまでは前世で見た光シーンだ、まあそこからは他の人達のは省略されたみたいだけどね。

 俺が一人で納得して、うんうん、と頷いてる間も儀式は進んでいく。


「次、エリュシア・キューレ・フォン・アルトリア」


「は、はいっ!」


 次に呼ばれたのはエリュシア・キューレ・フォン・アルトリア。王都『アルトリア』の第三王女で、主人公のヒロイン兼ライバル的存在。柔らかな金色の髪を揺らし、澄んだエメラルドグリーンの瞳をぱっちりと開いた少女。周りからの評価が高く、その為『あの方が第三王女の…』『…美しい』『とてもお綺麗』とかちらほら周りから聞こえてくる。そしてなんといってもデカい、デカいんだよ、どことは言わないよ?


おっと、エリュシアも祈りを捧げるポーズをする。めっちゃ様になっとる。ゲームでは見れなかったからめっちゃ感動嬉しい最高感謝。


 そして出現したモンスターは、薄灰色の毛並みが整った、子供の狼だった。


「ふむ、『ルミウルフ』だな」


 ルミウルフか、序盤は器用貧乏だが、中盤、後半になって行くとどんどん化け始め、いずれ神獣にまで至るモンスターだ。

 さすがライバル、この時に契約してたんだな、感動です。


「な~んだ、ハズレモンスターじゃあねぇか」


 …え?


「エリュシア様可哀想、お気の毒に」



 お前は何を言っているんだ、って思わず言いかけた。

 絶対にハズレじゃない、ないない。むしろ優良モンスターだろうに。


 この世界では正当な評価がされていないんだろう、まあエリュシアなら大丈夫だろ、多分。


「…こほん、では次、ヒスイ・カイザー」


 そしてヒスイ・カイザーこと俺の出番が来た。元の体の脳内駆け巡ってようやく思い出した名前だ。

 ちなみに見た目は超平均的スタイルの黒髪黒目だ。顔は普通のモブです。残念。


さぁて何が出るかな?最初からスライムだと助かるんだけどな。楽しみだぜ。


 

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