第37話


ルオンダーク皇国は、この世界の大国の一つで、ドルテア王国に友好的な同盟国だ。


そして、問題の聖ロベスタ公国。

聖女候補筆頭と、聖騎士候補生。

父が言うには、治癒魔法が使える私を探りに来たのではないか、とのことだった。

そして後見人として、大司教が一緒に来るのだとか。

他種族排斥を謳う国の大司教。

しかも、学園に在籍する自国の王族は、二人とも他種族排斥派。


波乱が起こるとしか、考えられない。

もしかしると、この三年間に在籍する貴族は、他種族排斥派に転向するかもしれない。

注意して、見ていないと。


他種族排斥派は、もれなく貴族至上主義。

つまり、選民意識が強い。


私は、王族に継ぐ公爵位の娘。

問題が起これば、私が対処しなければいけない。

…学園って、本当に行かないといけないのだろうか。

父からは、学園では自由にしなさいと言われているので、最悪放置でも良いかな。


そんなこんなで、先行きに不安しかない、今日この頃である。




ーーーーー


今日は朝から、侍女たちが殺気立っている。

理由は、国王陛下との謁見のため、王城に向かうからだ。


夜明けと同時に侍女に叩き起こされ、お風呂で磨かれ、すでに疲労困憊だ。


侍女たちは顔を突き合わせて、アクセサリーがどうの、ドレスが、髪型が…と言い合っている。

正直、見れたものならなんでも良いと思う。


ようやく決まったのか、勝ち誇った顔をした侍女、打ちひしがれる侍女…実にわかりやすい。


一通りの準備が終わって玄関に行くと、父が待っていた。

仕事で王城に行ったはずだが、態々戻って来てくれたようだ。


「うちの娘は、世界一綺麗だね。」


「ありがとうございます、お父様。」


「さあ、行こうか。」


父の差し出す手を握り、公爵邸を後にした。


王城に行くのは二回目だ。

馬車に乗って、あの時のことを思い出した。

あれから四年以上経っている。

王城も、何か変わっているのだろうか。


考え事をしていると、すぐに時間が経つ。

気がつけば、王城に着いていた。

父のエスコートで馬車を降りる。


久しぶりに見た王城の感想は、魔王城より小さいな、だった。


王城に着くと、すぐに謁見の間に通された。

陛下が来るのを、礼をしながら待つ。


左右の壁際には、護衛の騎士か宮廷魔法師が数名。

あの聖騎士より弱い気配。

この国の戦力は、だいたい把握できた。


「国王陛下の御成です。」


「楽にせよ。」


国王のお許しがあり、身体を起こす。

正面の玉座に座っているのが、ドルテア王国の国王。

国王の斜め前に気配が気配が二つ。


王族だろうか?


父が口上を述べるのを聞きながら、そんな事を考えていた。


 

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