第36話
庭園の花は、いつ見ても花が満開で美しさを保っている。
もともと庭に東屋なんてなかったけれど、私を気遣った父がいつの間にか造らせていた。
その東屋でお茶をするのが、ここ最近の日課である。
私がセテラディート公爵家に帰って来てから、早くも一年が過ぎていた。
初めの半年は、ずっとベットで過ごしていた。
ベットから出られるようになってからは、リハビリに励む毎日だった。
そして、あれから毎日父と顔を合わせている。
前の、疎まれていた頃が懐かしい。
大きな変化があったのは、父だけではなかった。
クレア姉とクリス兄も、仕事が休みの時は、必ず顔を見せるようになった。
その際は、王都で流行りのお菓子やら花やら、色々とお土産を持ってくる。
ルヴィク兄は学園の研究科に進学していて、寮住まいから通学に切り替えたらしい。
半年後には、王立魔法研究室に就職予定だ。
ルヴィク兄も、毎日私に顔を見せにくる。
毎日確認しないと不安だ、と言っていた。
母は前の時と変わらず、定期的にヒステリーを起こしている。
変わらないことが、安心するとは思わなかった。
この数ヶ月、私は毎日のように勉強をしている。
なぜかと言うと、半年後には学園に通うことになるからだ。
学園。
正式名称を、王立ハルモニア学園。
学問や人間関係を学ぶ場として設立された、由緒正しき学園だ。
多くの王族や貴族が、13歳から15歳までの三年間の間、学園に通う。
特別な才能がある場合や、通学資金を支払える場合は、平民も通うことができる。
そのため、毎年一定数の平民が入学している。
学園に通うためには、一定以上の学力やマナーが必要なので、詰め込み学習中なのだ。
とは言っても、基本的には知っていることばかりなので、一度習えば合格をもらっている。
人間の歴史を知るのに、良い勉強にはなった。
先日父から、学園入学に関して気をつけることを教えてもらった。
学園には自国の王子、王女が通うだけでなく、他国からの留学生もいるのだとか。
一人目は、自国の第三王子。
ヨハン・ミュゼ・ドルテア。
第二側妃の子で、信仰心が強く、他種族排斥派。
二人目は第二王女。
リズベット・ジュノ・ドルテア。
同じく第二側妃の子で、信仰心が強く、他種族排斥派。
三人目は、ルオンダーク皇国からの留学生。
第一皇子のレオンハルト・リト・ルオンダーク。
四人目は、同じく留学生の第三皇女。
アンジェリーナ・シア・ルオンダーク。
五人目は、聖ロベスタ公国からの留学生。
エスメラルダ・カロット。
大神殿の聖女候補筆頭。
六人目は、同じく留学生。
カールハインツ・ジェダン。
次期聖騎士候補。
これを聞いて私が思ったのは、平穏は遠いと言うことだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます