第15話 封印の守護者 アーリウス

封印を解いたと同時、


砂漠を抜けたキトたちは、やがて伝承で語られる“禁忌の地”

**封印の聖塔〈セラフィム・スパイラル〉**

ここは龍の神殿であると同時神の監視下でもある聖塔でもあった。


塔は天へ突き刺さるようにそびえ、無数の光の紋章が絡み合っていた。

それは、神がこの地上に残した最後の鎖。


「知らなかった、」

青龍は呟く


ルキが腕を組み、低く唸る。「近づくほどに空気が重いな。息が詰まりそうだ。」


フィストが拳を握る。「でも、行くんだろ? 兄貴。」

「……ああ。行くさ。」

キトの声は静かに燃えていた。


足を踏み入れた瞬間、空気が反転する。

時間が止まったように感じる静寂。

そして、響く声。


「封印を、乱す者たち。」


白光が塔の中心に集まり、人の姿を成した。

鎧のような光を纏い、背に天輪を浮かべる男。

その名は アーリウス。

神々に仕える“封印の守護者”。


「我が名はアーリウス。神より与えられし使命はひとつ。

 この塔に封じられし“神の欠片”を護ること。」


「神の欠片……?」

キトの瞳が鋭く光る。

「なら、そいつを解けば何か分かるかもな。」


アーリウスの目が細められる。

「人の身で神域に触れるか……愚かだ。秩序を壊す者は、例外なく滅びる。」


地鳴りのような光が塔の床を走り、結界が発動する。

瞬間、全員の身体が重くなり、足が地に縫いつけられた。


「な、なんだこれ……っ!」

ルキが呻く。


「神の領域では、肉体の法則が通じぬ。」

アーリウスが手をかざす。

光の矢が無数に生まれ、四方八方から襲い掛かる。


「うおおおっ!!」

フィストが咆哮し、拳で光の矢を砕く。

だが一撃ごとに皮膚が焼けるように痛む。


「……強い。」

青龍が短く息を吐く。

「完全に次元が違う。これが“神の防人”か。」


キトは前へ踏み出した。

足元の砂が焦げる。

「封印を護るってんなら、俺たちはそれを“壊す”側だ。」


アーリウスの瞳が光る。

「ならば、選別する。神に逆らう力を持つ者かどうか。」


二人の衝突は、音より早かった。

アーリウスの拳が振るわれ、キトの腕がしびれる。

空間が歪むほどの重圧。

だが、キトの瞳は燃えていた。


「これで倒れるかよッ!!」

再び殴り返す。

鬼の血がうっすらと呼び覚まされ、皮膚の下に紅の紋が浮かぶ。


アーリウスが一瞬、驚愕に目を見開く。

「この力……まさか、神と鬼の混血……?」


キトは息を荒げながら言う。

「混じってようが関係ねぇ。俺は、俺だ!」


ルキと青龍が同時に援護に入る。

ルキの蹴りがアーリウスの防壁を揺らし、青龍の斬撃が光の結界を削る。


「キト! いまのうちだッ!」

フィストの声が響く。


「いくぞおおおおッ!!!」

キトが雄叫びを上げ、拳を突き出す。

紅の紋が光り、衝撃波が塔全体を震わせた。


「ッ……神の秩序が……揺らぐ……だと?」

アーリウスが膝をつく。


その瞬間、塔の上空が崩れ、封印の光が天へと流れた。

地面が爆ぜ、空が裂ける。


「アーリウス!! 終わりだ!」

キトが拳を構える。


だが、アーリウスは微笑んでいた。

「終わりではない。“観測”は完了した。」


「神界へ伝達……神鬼、確認。」


光が弾け、アーリウスの姿は粒となって消える。


静寂が戻った。

ルキが汗をぬぐいながら呟く。

「……伝達? 誰にだ。」


青龍が低く答える。

「おそらく神界の者だ。これで……奴らが本格的に動き出す。」


キトは塔の残骸を見上げた。

拳を握り締め、血が滴る。

「……上等だ。神だろうがなんだろうが……この拳で全部壊す。」


フィストが隣で笑う。

「なら、俺が守る番だな。」


風が吹いた。

封印の光が夜空に散り、

六騎士の物語は、ついに“神の監視下”へと入る

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