好感度オーバーで刺された俺、異世界でもモテすぎて死にそうです

@Kanade02101220

第1話 転生

俺、天堂春樹(てんどう はるき)。

 生まれつき、人の頭の上に「好感度メーター」が見える。

 数字が上がれば好かれ、下がれば嫌われる――単純明快な人生のチート能力だ。


 俺はその力を使い、クラスでも教師にも、誰にでも好かれる“完璧な人間”を演じてきた。

 ……が、やりすぎた。


 学園のアイドル、篠宮れいな。

 天才美少女、九条沙羅。

 転校してきた絶世の美少女、月城ミア。


 全員のメーターが「100」を超えたその日、俺は3人に刺された。

 「春樹くんは、誰のものでもないの?」

 「じゃあ、死んで証明してね」


 最後に見たのは、3人の笑顔だった。

 ……笑顔って怖いんだな。


 ――そして目が覚めたら。


 俺は豪奢な天蓋付きのベッドで寝ていた。

 見知らぬ天井、見知らぬ服。

 体は健康そのもの。けれど鏡に映った顔は――


 金髪碧眼の貴族の青年だった。


 ドアが開き、黒服の執事が跪く。

「お目覚めになられましたか、セラフィナ・ヴァルモンド様」


「……せ、セラフィナ? 名前、女の子っぽくない!?」


「は?」

「いや、なんでもない」


 どうやら俺は、“ヴァルモンド公爵家の嫡男”として転生したらしい。

 年齢は17歳。剣と魔法が支配する国――エリュシオン王国。


 だが俺の目は、またしてもおかしなものを捉えていた。

 目の前の執事の頭上に、懐かしいUIが浮かぶ。


 【忠誠:82】【好感度:46】


「……やっぱり、見えるのかよ」


 転生しても消えない、好感度メーター。

 この世界でも、人の心が丸見えってことか。


 俺は天井を見上げて深く息を吐いた。

「今度こそ、平穏に生きる……絶対、誰のメーターも100にしない」


 そう誓った俺の後ろで、部屋の扉が開く。


「セラフィナ様! 婚約者のレイナ様が面会をご希望です!」


 ――なぜだ。

 嫌な予感しかしない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る