第2話 婚約者は初対面からメーター95

 俺の名はセラフィナ・ヴァルモンド。

 見た目は貴族、頭の中身は日本の元高校生。

 転生特典は――他人の好感度メーター。


 前世はそれでモテすぎて刺されて死んだ。

 だからこそ、俺は誓ったのだ。


 **「今度こそ、誰のメーターも上げない」**と。


 ……その決意が、開始五分で崩れるとは思ってもみなかった。



「セラフィナ様、レイナ様がお越しです」


 執事が告げた名前に、俺の背筋がピクッと反応する。

 レイナ――どこか懐かしい響きだ。

 そう、前世で俺を最初に刺した子の名前もれいなだった。


 嫌な予感しかしねぇ。


 扉が開き、彼女は現れた。


 長い白金の髪、氷のように澄んだ青い瞳。

 まるで人形のような美しさの少女が、上品にカーテシーをした。


「お久しぶりです、セラフィナ様。婚約者のレイナ=エリュシオンです」


 ……やっぱり婚約者か。

 しかもこの国の王女って、どんだけ地雷踏ませる気だよ。


 俺は慌てて表情を取り繕い、軽く会釈する。

「えっと……こちらこそ、はじめまして。いや、お久しぶり?」


 その瞬間。


 彼女の頭の上に、ポン、と数字が浮かんだ。


 【好感度:95】


 は?


 まだ会話3秒だぞ!?

 俺、自己紹介しかしてねぇのに!?


「ずっとお会いしたかったのです。夢で何度もあなたを見ましたの」

 にっこり微笑むレイナ。


 ――そのメーター、もう99になってる。


「(まずい、まずいまずい!このままだと100行く!)」


 俺は慌てて冷たい態度を取ることにした。

「そ、そうですか。光栄です。えーと、用件は?」


「婚約者として、お手を取らせてください」


 ぎゅっ。


 手を握られた瞬間、数字がピコンと跳ね上がる。


 【好感度:100】


 ――チーン。


 笑顔のまま、レイナの目がすぅっと細くなった。

「……セラフィナ様。これで、逃げられませんわね?」


 背中が凍りつく。

 この世界、やっぱりヤバい。

 いや、俺がヤバいのか?


 どちらにせよ――


 俺の第二の人生、開始10分で死亡フラグが立った。

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