第3話

「朝のホームルームを終わります。あと星崎くんは放課後に残っててね。」

村雨先生は言い終えると教室を出た。


俺は席から立ち上がろうとする。彼女に会いに行かなければいけないから。

だが、それは不可能だった。


俺はクラス中の生徒に囲まれてしまったのだ。


「本当にヤったの?」

「お前マジふざけんなよ!

「純粋な凛ちゃんを汚さないで!」

教室に罵詈雑言や卑猥な言葉が響き渡った。

俺がこのクラスに馴染むのに時間がかかるのは間違いない。


「いやいやそれはないって。

 俺と凛が最後に会ったのは小学4年生の時だよ!そんな頃に良からぬことをしてる訳がない。」


「いや、怪しいなぁ?」

「行為はしてなくてもキスはしたんじゃねぇの?」

「変なことしてたら絶対許さねぇけどな!」


俺の否定はみんなを落ち着かせることはできなかったようだ。それを可能にしたのは、



「みんなやめなさい!」

「みなさま、それはいけませんわ。」


この2人の美少女だった。

凛と比べて少し大人びているように見えた。


「あなたたちは星崎くんや凛ちゃんとどんな関係なわけ?」

「2人の関係に口出しできる人なんて誰もいませんわ。」

彼女らの発言には強い影響力があるようで、俺を囲っていた集団は各々の席へと帰っていった。


「みんながごめんね、星崎くん。

 私は七川 舞香よ。これからよろしくね。」

舞香の見た目は清楚系だが、キレると口調が女王様になるため男子から人気らしい。


「それでこっちは桃川 紬。」


「初めまして、星崎様。」

紬は短いスカートをつまみあげ、お辞儀をした。

彼女の父は大企業の経営者、母は旧華族の血を引いているため、中学まではお嬢様学校に通っていたそうだ。


「それで星崎くんってどこ出身なの?」

「俺は天音市、別に遠くから引っ越してきた訳じゃないよ。」

「私と一緒じゃん!前の高校はどこなの?」

「天音高校だよ。」

「あの名門の天音高校でしたの。このクラスの見本になる方ができて嬉しいですわ。」

「はは、そうなれたらいいな。」


教室内の空気が落ち着き、他愛のない会話を続けていると



「ゆう兄が誰と仲良くしててもいいけど、なんかやだ。」


凛が弱々しく言葉を発した。

いつの間にか俺のすぐそばまで来ていたのだ。

電車ではシルエット、教室の前からは顔しかわからなかったが、首元が少し開いたシャツ、何回も折ったスカート、黒のニーハイソックスを履いたすらっと長い脚が見えた。

凛の顔や性格からは幼さが抜け切れていないが、彼女なりに背伸びをしたのだろう。


「悪い悪い、ちょうど凛に会いたいと思ってたところだよ。」


凛は少し照れたようだった。

それを隠すように言った。

「別に、私はそれほどじゃないけど、、、?」


素直じゃないのは昔のままのようだ。

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