第2話

「ゆう兄!?」



ふと声の先を見ると見覚えのある顔があった。

それはさっきの電車で見かけた少女で、今ならわかる、俺の元義妹(いもうと)だ。

長い黒髪にリボンをつけ、昔と変わらない可愛い顔がそこにはあった。


星崎 凛、いや、離婚したから月宮 凛だ。


「えっと、、、久しぶりだね、元義兄(おにい)ちゃん。」

「ああ、久しぶり。」


俺はなぜかそっけない返事をしてしまった。

念願の家族の再会だというのに。

驚きすぎて言葉が思いつかなかった?それか、長い間会わなかったことで距離感がわからなくなった?

それとも、初恋の人にあって緊張したからなのか。



久しぶりの兄妹の会話が終わり、静寂が続いた。

この空気を切り裂いたのは俺でも凛でもない、村雨先生だった。

「2人とも兄妹なの?それ知ってたら他のクラスにしたんだけどね。」


俺が慌てて訂正する。

「ちょっと待ってください!兄妹と言っても義兄妹で、それに親同士が離婚してるんでほぼ他人ですよ。」



「元義兄(おにい)ちゃん、それは酷くない?」

俺の発言に待ったをかけたのは凛だった。


「私たちは他の兄妹より兄妹したんだから今でも家族みたいなものじゃん!」

「あんな?こともしたし、、、。」


教室中がざわめいた。

「あの子達、やることやっちゃってるの?!」

「月宮さんって処女じゃなかったのか!残念。」


いろいろ誤解を生む発言はあったが、凛の言い分は正しい。

なぜなら俺はすでに元義妹(いもうと)に対して恋人愛と家族愛の両方を注いでいたからだ。

俺がそれ以上の関係を望んでいたのに今さら他人扱いなんてどうかしていた。


「ごめんな、凛。俺は…


俺が言いかけた途中で村雨先生が割って入った。

「申し訳ないけどイチャイチャはホームルームの後にしてね。」

「それで星崎くんの席は窓側の1番後ろだから座っちゃってちょうだい。」


窓側の1番後ろなんて席替えでは当たりでしかないのに、凛と離れることになるため残念に思えた。


席に着くと

「よう、俺は石神 玲だ!よろしくしてくれよな!」

「…おう、よろしく。」

うん、多分関わったらめんどくさいタイプと隣になってしまったのは間違いない。


「隣の石神はいろいろ教えてあげなさいね。」

「任せてくだせえ。」


村雨先生はホームルームを進行した。

そして俺は遠くからある少女を見つめ続けた。

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