■5億年ボタンで剣の修行をしたのに我流の悪癖がついて全然通用しない件 第3話(2)
脱力を効かせた、自然体に近い構えを取る■
ゆらり――と俺はダリアに近付き、夢の中を歩くような手つきで剣を振るう■
相手の意識の隙間を縫うように殺気を消した剣■
その名を、
「剣に力が入っていないぞ■これが限界か?」
ダリアは――またしても俺の剣を、いとも簡単に弾き返していた■
「……ッ…………!」
「ミリオ様……」
ネフィの心配そうな眼差しと俺の視線が交差する■
何だっていうんだ■
女剣士ダリア――どれほどの実力者だというんだ■
俺は……俺は!
「うっおおおおおあああああ!」
爆発しそうな感情に任せて、俺はダリアに斬りかかっていった■
闇雲に、我武者羅に、剣を振り続ける■
あの暗黒空間で5億年もそうしてきたみたいに!
俺は誰もいないあの孤独な空間で、ひたすら剣を振り続けてきたんだ!
5億年! 5億年も!
俺の放つ全ての攻撃は、ダリアに最小限の動作で捌かれる■
どれほど狙い澄ました剣を放とうが、ダリアは的確にそれを防いでいた■
俺の剣が!
こんな小娘の王国剣術なんかに負けるはずがないんだ!
たかが10年ばかり修行した程度の剣に!
俺の……俺の剣は5億年の剣なんだぞ!
こんなことがあってたまるか!
こんなこと……信じられるか!
「ぬうあああああああっ!」
大きく振りかぶった、その隙を衝かれて■
ダリアが剣の柄頭で俺の
「ミリオ様!」
「っぁ……かふっ…………」
途端に呼吸ができなくなって■
俺は床に膝をついてしまう■
視界が揺れている■野次馬が大きく湧いた声が、どこか遠くで響いているみたいに聞こえる■
「太刀筋が美しくない■それ以前に構えた時点で姿勢が悪い■恐らくは我流の弊害だろうな■視線と体勢から狙う部位が見え透いているし、命中の瞬間の手首から先の冴えがない■これでは防ぐのは容易い」
俺の、俺の5億年振り続けた剣は……■
暗黒空間で発狂しそうになりながら5億年も耐え続けて身に付けたはずの、俺の剣術は……■
指導者も練習相手もいない、我流ゆえの悪癖だらけだったっていうのか……?
そんな、馬鹿な……■
そんな、そんなことが、あるかよ……■
「だが、最後の攻めの気迫は見事だった■ 鬼気迫るものがあったと言って良いだろう■ 貴様さえ良ければ、我がギルド『嵐ヶ峰』の一員として歓迎しよう」
ダリアが俺に、和解の握手を求めてきていた■
(続く)
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