■5億年ボタンで剣の修行をしたのに我流の悪癖がついて全然通用しない件【抜粋・長編小説】

■5億年ボタンで剣の修行をしたのに我流の悪癖がついて全然通用しない件 第3話(1)

 著者:ぷてらの丼

 キャッチコピー:■俺の暗黒空間での5億年の修行が……嘘だと言ってくれ!!



 ギルド本部から少し離れた場所に教練場があるというので、俺は偉そうな女剣士――ダリアとかいったか――に着いていく■

 

 ネフィも俺の服の裾をつまんで、うつむき加減で後ろから着いてくる■知らない人間ばかりで、しかも好奇の目を向けてくるので緊張しているみたいだ■

 

「ミリオ様……私、心配です……」

「大丈夫だよネフィ■すぐに終わるから」


 教練場には野次馬の人だかりができていた■

 ダリアが鞘から剣を抜き、俺に向けて突きつける■


「不埒者め■王国正統の剣術を愚弄したこと、後悔させてやろう」

 

「誰だか知らないけど、ダリアさんに勝てるわけねえよ」

「女ながらに王国剣術を10年修めて皆伝の実力だぜ」


 と野次馬たちが話すのが聞こえる■

 10年だって? 悪気はないが笑ってしまう■

 俺はあの暗黒空間で5も剣を振り続けたんだ■


 俺も剣を抜き、ダリアに対峙する■


「どっちが勝っても、恨みっこなしだぜ」

「ふん、大した自信だな■田舎いなか剣術風情が」


 そう言うと、ダリアは身体の中心で剣をまっすぐ正面に構えた■

 正眼の構え……確かに、王国剣術の基本中の基本の構えだ■

 そして、ダリアはそこから動かない■俺の方から打ちかかってこいと言わんばかりだった■

 大した自信はどっちの方だよ■

 そういうことなら……遠慮なく行かせてもらおう■


「――ハアッ!」

 ガキンッ!

 強烈な金属音■


 5億年振り続けた俺の剣の最初の一太刀を、ダリアは自らの剣で防いでいた■

 

「へえ、意外とやるもんだな■一太刀で終わりかと思ってたよ」

「抜かせ、戯言を……」



 ならば――

「シィッ!」

 俺は逆方向から袈裟斬りを繰り出す■暗黒空間でも一番長く練習した技だ■


 ガンッ!!


 しかし、ダリアはこの剣をも受けの太刀で防いでいた■

 俺の両手に、重い痺れが走る■


「ミリオ様!」

 ネフィが心配して声を出した■

 やれやれ、すぐに終わらせるって言ったのにな■やるじゃないか、ダリア■


 一度間合いをとって離れ、俺は剣を斜めに担ぐように構え直す■

 まだこの技は取っておきたかったが、仕方がない■


 「鷹爪烈華ようそうれっか――」

 それぞれ別々の四方向から放たれる、高速の連撃――■

 俺が暗黒空間で5億年かけて編み出した秘剣の一つだ■

 

 キン! キキン! ガキン! ガガンッ!


 その俺の秘剣を――

 まるで事もなげに、ダリアは四連撃とも防ぎきっていた■


 これをも防がれるとは、予想していなかった……■

 

「ハァ……ハァ……■やるじゃないか、ダリア■口先だけじゃないな、あんた■」

「笑止■ それしきの剣では、王国剣術は破んぞ」


 随分と骨のある女剣士様だ■

 そういうことなら……■

 俺は次の秘剣をお披露目してやることにする■


 

 

 

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