心情やリアリティ重視の異能バトルモノ!
- ★★★ Excellent!!!
この作品の何が素晴らしいか、それは何よりも「ご都合主義の排除」や「リアリティへのこだわり」、「主要キャラの心情描写」である。
まず、この小説において説明じみたナレーションはなく、主要キャラたちの視点での描写を徹底し、リアリティへのこだわりを貫いている。その為、主人公たちが見聞きしたもの以外は描写せず、なんならキャラの容姿や生い立ちなどといったパーソナルデータすらも出てこない(当人たちからすればわざわざ言及する必要もないからだろう)。
この作品自体が感情の動きや主要キャラの群像劇に重点を置いているのでバトルシーンや能力の活用がメインではないものの、ストーリーやキャラの行動に感情移入がし易く感じるのでダレることなく飽きずに読めるのが嬉しい所である。
個人的に、ジンとマリアの言い争い〜カナメへの心情の吐露、この一連のストーリーには思わず胸が苦しくなったり、ジンの心境への共感で涙ぐんでしまった。
また、マリアの冷静冷徹のようで芯に思いやりと熱さがあるキャラ造詣には脱帽である。
ジンの親友への依存やカナメの優しさと甘さ、親友という関係のリアルな距離感であったり人間臭さや弱さといった描写も現実味を感じられてとても良い。
すでに主要キャラへの愛着がすっかり湧いてしまい困っているほどである。
まだまだストーリーとしては広がりがありそうなので、今後の展開やストーリーとしての終着点が非常に楽しみである。