第31話

「……さて、今回の主題だが……グレーターデモンについて。詳細は事前に渡した資料を確認してくれ。」


 長官の司会で、今回の会議が始まった。

 皆が真剣な顔になって各々事前にもらった資料の睨みつける。


「今回尽力してくれた伊達巻カタコ君には感謝してもしきれない。」


「ユキちゃんの頑張りもあったからですよ」


「うむ、早苗ユウキ君の正式な討魔剣士認定も落ち着き次第行うことを約束しよう。禍津を祓える能力に、魔鬼を倒せる戦闘力があるのであれば認定には問題ないだろう。」


「なんだよ、それだけできるならすぐにでもくれてやれよ。超絶人手不足だぜアタシら討魔剣士はよ」


「なかなか正式にとなると手続きが難しいんだ、特に彼女は討魔剣士の基準霊力を大きく下回っているからね」


「あぁ、原則討魔兵装の解放が出来る霊力が基準……でしたっけぇ?はやく廃止すればよろしいのに」


「そうはまいりません、リナさん。特例はありますが基準なくしてはリスクが大きくなるだけですわ。」


「ん、でも人手不足は解消したい……カタコを北に戻すことを進言。」


「西国乙女連合にも、カムイ君にも苦労をかけてすまないね。だが、どうしても中央の守護にはカタコ君の力が必要なことを理解してほしい。」


「ふーん、どいつもこいつもカタコカタコ……そりゃ強さは認めるけどさぁ。噂に聞けば、そいつ男連れてデート気分で任務やってるらしいじゃん!長官いいの!?」


 男連れって、センパイのことか……一応センパイの協力については報告上げてたから知られてはいるみたいだ

 デート気分でだなんて気持ちは少ししかないけどね、少しだけね。


「良いとも、任務に支障が無ければね。特にここ最近は禍津増加の影響もあるが、活躍が目覚ましいね」


「私としてはもう少し落ち着いてほしいんですけどね」


「う〜〜〜!カタコばっかチヤホヤされてズルい〜〜〜!あーしもあーしも〜〜〜!」


「あーもう、チカはアタシらが十分チヤホヤしてるだろ……」


「チカちゃんよしよし〜」


「バブ……」


「さて、話を戻そう。グレーターデモンの件だが……まずはこの国が全面的に非がある問題であったことを、討魔剣士の皆々に謝罪したい。」


 長官はグレーターデモンの事件のあらましを説明し、神妙な顔つきで頭を下げた。

 当然だ、国でタブーとされていた魔鬼を兵器利用する実験を国が容認していてそれが問題を引き起こしたのだから


「ん……国が魔鬼を利用した兵器を秘密裏に開発、それが流出。」


「皮肉なものねぇ、国を守るためだったはずなのに国に仇なす存在になるなんてぇ……」


「都市伝説じゃなかったんだ、ぶっちゃけありえないんですけど〜」


「ただでさえ討魔剣士が減って手が回らねぇ状況なのに、禍津増加もその実験が原因かもしれねぇって…国が討魔剣士の敵増やしてどうすんだよ……」


 国が討魔剣士を裏切ったような所業、厳しい視線と空気が長官に向けられる

 無理もない、私だって聞いたときは怒り心頭だった。


「謝罪も補償も、この件が落ち着いたら国ができることであれば何でもすると誓おう。だが今は、この事件の解決に討魔剣士一丸となって尽力してほしい……この国の為に。」


「それはもちろんですわ、国を魔から守る……それが討魔剣士ですから!」


「「「「……」」」」


 長官の言葉に賛同の言葉を発したのは、ミコトさんだけだった。

 私は個人的な因縁があるから、そのグレーターデモンの事件を追うことは問題がないけど……国の為に動くような意見に賛同するのは難しかった。


「み、皆さん……?国の危機で……」


「だからさ〜その国があーしら裏切ってんでしょ〜?」


「……だな、チカの言う通りだ」


「本当よねぇ〜、調子良過ぎるんじゃなあい?」


 西国の人達は特に不満の声が大きい。

 元々の不満も多かった人達だ、討魔剣士としての誇りを活動のモチベーションとしてる人達だからこそ……国に裏切られたという事が許せないのだろう


「まぁ個人的な感情は色々あるだろう、君たちの感情は正しいさ。今回の件を聞いて本音を言えば、私もなんて愚かだと嘆いたものだからね」


「長官まで!か、カタコさんは……」


「私、大切な人を二人も病院送りされてますけど……それでも聞きます?」


「ん、ミコトだって内心はムカついてるはず」


「「「「……」」」」


 長い沈黙が流れる、この場にいる全員同じ気持ちだ

 国への忠誠はそのまま国の不信感に変わっていた。


「で……でも、だからって!討魔剣士としての使命を放棄するわけにはいかないでしょう!?」


「……誰も、討魔剣士の使命を放棄するなんて言ってねーよ。今まで通り人を襲う禍津や魔鬼は倒す、降りかかる火の粉は払う……それでいいだろ?」


「事件の調査とかなんとかは勝手にしたら〜?」


「ワタシたちは自分たちのところ守るので精一杯ですからぁ」


「ん……見かけたら報告くらいはする。」


「……ま、それだけでも十分すぎるさ。今回の会議の目的はこの件の共有だからね。」


「全く、これ以上厄介なことになってほしくないですよ」


「さて……それはどうなるか、一応今分かってることはすべて君たちに包み隠さず共有したい。もう少しだけ付き合ってくれたまえ。」


 長官は資料からいくつか抜粋して指差す、そこにはグレーターデモンの元になったと思われる機械についてやその仕様などが記載されている


 前にお母さんから聞いていたものに加えて、今回の事件の首謀者と思わしき人物の情報がまとめられていた。


「これは事件を受けて調べたものでね、おそらく首謀者と考えている人物だ。当時の計画の一員で、その頃から戸籍も名前も顔も偽装されていてね……今は『瀬甲斐牛次郎せかいぎゅうじろう』と名乗っているらしい。」


 セカイ……ギュウジロウ……世界牛耳ろう?

 なんだかふざけた名前だとこの場にいた全員が思った。


「ハハハ、これも偽名の一つだろうけどね。ふざけた名前だが、冗談とは言えないのが現状だ。」


「ん、顔も名前も分かってるなら……さっさと見つけて捕まえちゃえばいい」


「そう単純じゃないんですわよ、資料にある写真は当時の偽装されたもの……今の顔も分からないし足取りも不明。この名前だって横流しの隠れ蓑に使われてた山国一家の情報から少し出てきただけで……」


「山国一家か……たしか何年も前に重火器の密輸で摘発されて離散したヤクザ一家だったよな?」


 西国の乙森さんは九州出身、山国一家について知っているらしい

 様々な事件に関わる討魔剣士は地元の事情に精通していることが多い(私はそんな詳しくないけど)


「あぁ、たしか乙森君の地方の話だったかな。その通り、その密輸のパイプがグレーターデモンの横流しに使われていたようでね」


「じゃあそのヤクザの誰かが知ってんじゃないの?」


「隠れ蓑にするくらいだもの、それで辿られるようなことはしていないんでしょお」


「瓜本君の言う通りだ、山国一家の関係者は誰一人として瀬甲斐牛次郎に繋がる情報を持っていなかったよ。生活に困っていた一家の残党に金銭的な援助をしていたらしいが……足取りは追えず、そもそも彼に関する情報は全てが嘘にまみれている。国の軍部であれだけの研究をしながら存在を秘匿し続けていたのは伊達じゃないさ」


「ん、じゃあこれからどうするつもり?」


「受動的にはなるが、また向こうからのアクションを待つか……あるいは今解析中のタクミ君が何か手がかりを見つけるかになるかな。そして、君たちは日々の任務の中でもし手がかりが見つかれば速やかに報告してほしい」


「ま、仕方ねーな……できる限りは協力してやるか。」


「え〜〜〜……まぁソウにゃんが言うならやるけどさ〜」


「ほほほ、まぁ普段とやることは変わらないわよねぇ」


「さ、西国乙女の皆さん……!」


 結局私たち討魔剣士のやることはあまり変わらない、人に仇なす魔を倒す為に動くだけだ


 こうして、若干のしこりは残ったものの急遽行われた討魔剣士の集会は無事終わった。


(あっそうだ、一応センパイに皆紹介できるか確認しとかなきゃ……)


「あ、あの!会議が一旦終わったならちょっと皆さんにお願いがあるんですけど……!」


「あん?なんだよ、珍しいな」


「えーなに〜?面白いこと?」

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