第22話
「センパイにっ、何してるッッッッ!!!」
僕の後ろで風が走った。衝突事故のような轟音とともに、あのロボットがぶっ飛び……聞き覚えのある声が聞こえた。
僕が一番信頼していて、今一番聞きたかった声。
「カタコちゃん!」
振り返る僕の目の前には、襟巻きを風に靡かせて……背には金色の蝶の羽の刺繍が入った装束を纏った少女。
最強の討魔剣士、カタコちゃんが立っていた。
「遅れてすみません、禍津の数が多くて……!でも間に合って良かった……」
「ホントだよカタコちゃんっ!僕は、僕はもう……流石に死ぬかと思ったよ!?」
「……どうやら、そうみたいですね。まさか、こんなことになってるなんて。」
カタコちゃんが僕とユウキさんの様子をジッとみる。
僕は擦り傷まみれの血塗れだし、ユウキさんは悪い顔色で気を失っている。
<新タナ目標ヲ確認、巨大ナ霊力反応ヲ感知。パターン検索……照合完了、伊達巻カタコ。>
ぶっ飛ばされたロボットが何事もなく起き上がる、音声からカタコちゃんについての情報も持っている様子でまたこちらへ立ちはだかる。
「しかも、アレは何?ロボット……いや、この気配は魔鬼にも似てる……?」
「わっかんないよ、でも魔鬼倒した後にアレが出てきて……早苗さんもアレにやられて……!そうだ、早苗さんが危なくて……!」
「そう……お前が、ユキちゃんを……こうしたの?」
ギロリ、とカタコちゃんの目に怒りが宿るのが分かる。
「お前が、センパイを……傷つけたのかっっっ!」
カタコちゃんの身体から溢れる殺気が、否応なしにその場を震撼させた。
「……センパイ、すみませんがそのまま下がっていて下さい。すぐ終わらせますから。」
「カタコちゃん、うん……任せたよっ!」
<実験パターン1、プログラムニヨリ排除シマス。>
「やってみろ、ガラクタ人形ッッッッ!」
ロボットとカタコちゃんが激突した!道路のアスファルトに亀裂が入り、跳ね上がるような衝撃が地面を揺らす。
「うおぉぉ〜〜〜!!!」
僕は早苗さんを引きずりながら巻き込まれないように大きな瓦礫の影に退避する
カタコちゃんはロボットとぶつかると、その剛腕と取っ組み合い……そのまま力ずくで押し返している。
「……ははっ、マジですか」
あれだけ恐怖し、敵わなかった相手がカタコちゃんには力負けして押されている現状に乾いた笑いが出る。
「お前はなんなんだっ!何のためにセンパイを、ユキちゃんを襲った!」
<パワーガ不足シテイマス、コノママデハ目標ノ確保ニ失敗。>
「さっきから意味の分からないことを……!だったらそのままスクラップになるかっ!」
カタコちゃんが刀を大きく振り被る、しかしあの装甲は早苗さんの槍も通用しない硬さがある……カタコちゃんの刀も例外ではなく表面を軽く傷つけたが斬ることは出来ていない
「っ!硬ッ、私の剣で斬れない……!?あの赤い装甲……なんなの!?」
「カタコちゃん!その装甲は早苗さんの槍も通らなかったんです!切るのは無理かも!」
「センパイっ!ありがとうございますっ!危ないから引っ込んでてっ!」
「それは失敬!頑張ってくださいっ!」
僕はカタコちゃんにロボットの情報を伝えて、また安全な場所に引っ込んだ。
ただまぁ、カタコちゃんのパワーならそのまま無理やり倒してしまうことも可能そうなのが恐ろしい。
<目標トノ交戦、予測開始……目標ノ達成ハ困難デアルト判断シマス。>
「……さっきから実験実験って、お前の後ろには何がいるっ!答えろっ!」
<目標ヲ捕獲カラ、交戦データノ収集ニ切替マス。>
ロボットがカタコちゃんの問いかけに答えることはない、しかし聞こえる音声から何かを目的に……つまり背後に何かがいることは確実だ。
魔鬼に似たロボットの、その背後にいる何かとは……一体何なのであろうか?
「もういい……答えないなら、殺す。」
カタコちゃんが刀を深く、腰を落として構える。
空気が揺らぎ、あれだけ戦闘でうるさかった場が静まり返った。
(初めて見るカタコちゃんの構えだ……)
僕はこれまで、カタコちゃんの振るう刀を見る機会はそれなりにあったはずだけど…あの構えをしているところは見たことがなかった。
素人の僕が何となく分かるのは……アレは、居合か何かの構えなのか……?
「伊達巻流討魔剣、参ノ太刀……!」
参ノ太刀、カタコちゃんの使う剣術で……僕が知っているのは2つまでだった。
そもそも技を放つような敵なんてカタコちゃんはそうそういないし、見る機会も少ないのだけど
それでも、今から放つ技が……カタコちゃんの今まで使っていた技よりも別格なのが肌感覚で分かった。
「『
一振りのはず。刀を振り抜いたはずだ。
それでロボットの両腕が弾け飛んだんだ、あの赤い金属装甲がまるで意味を成していなかった。
「……ッ、フゥー……!」
カタコちゃんは姿勢を変えていない、深く腰を落として刀を構えたままだ。
周りとロボットに変化がなければ、動いていないと思うだろう。
カタコちゃんの背後、刀が振るわれた跡だろうか?大きく2つ、地が抉れておりその跡はまるで羽ばたいた翅……あの跡を見ると、あの一瞬で2回の攻撃だったのか……?
「……やっぱり、硬いですね。これで、仕留めきれないとは……」
<損傷率23%、両腕部ガ消失。可動ニ問題ナシ。戦闘続行ニ支障ガアリマス、繰リ返シマス戦闘続行ニ……>
今まで僕が見てきた技とは明らかに隔絶した威力の一撃だった、カタコちゃんの様子を見る限り最大級の技だったのだと思う。
両腕が無くなったロボットは、未だ胴体部分が無事であるため動作に問題が無い様子だが……あれではもう戦うことはできないだろう。
あの技を食らって動いているロボットか、それともあの硬さのロボットをものともしなかったカタコちゃんを驚くべきか迷うところだが……とりあえずこの戦いはもう終わりだ。
「……まさか、センパイたちをあんな目に合わせといてこれで終わりだと思う?」
えっ、いや……カタコちゃん?なんでまだ構えを解かずに力を込めて……
「『
<ガッ、ガガガガガガガッ、損傷率、不明ッ、ガ……>
メッタ打ちだった。居合で。まったく止まらない。
一撃ですら十分過ぎる威力の斬撃が、ロボットの身体を摩り下ろしていく。
「『飛ッッッッッッ翔』!!!!!!」
気づけばロボットは原型を留めずスクラップと化して地面に転がる。
この状態では、見た人は元の姿が巨大な人型ロボットであったことなど判断もつかないだろう
「はぁっ……!はぁ……っ!はばた……っ!」
「カタコちゃんっ!カタコちゃんっ!もう終わってる、終わってるから!」
もう誰が見ても動くことはない鉄屑の残骸に、まだ刀を振るおうとしているカタコちゃんへ僕はたまらず止めに入った。
「センパイ……っ」
「落ち着いてカタコちゃん、深呼吸です深呼吸」
「は、はぃ……あ、あぁ〜……センパイ、センパイぃぃ……ごめんなさい、遅くて、こんなに傷が……」
「大丈夫、大丈夫ですよ……カタコちゃんが助けてくれたから、僕は無事です。それよりも、早苗さんを、お願いします……っ」
「……っ!そうだ、ユキちゃん!」
「気を失ってて、顔色も良くないんです……!はやく病院へ!」
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