第3話

 センパイとの距離感は相変わらず、付き合ってるんだか付き合っていないんだかの心地よい距離。


 朝は起こしに行ってあげて、一緒に学校に行って帰りは買い物をして帰る。

 晩御飯は一緒に食べたり、お泊まりはまだしたことがないくらい。


 周りから見たら私たちは付き合っているようにも見えるのかな?

 クラスの子は私たちがまだ恋人でないことに驚いているくらいだけど


 私はいつでも……えへへ。


「ふぅーーーむ」


「な、何ですかセンパイ?じっと見て……」


「むぅーーーん」


(せ、センパイって言動はアホちゃんだけど顔は悪くないから…そんな真剣な顔で見つめられると……♪)ドキドキ


「カタコちゃんってさぁ、よく見ると」


「は、はひっ!」


「漫画のキャラみたいですよね」


「は?な、なに……?」


「いや、ビジュアルとか漫画みたいだよなぁ……って改めて思いまして」


「設定ってなんですか、漫画じゃないですよ失礼な!ほら!ちゃんと実在してるじゃないですか!」


「じゃあもしかしてアニメ!?カタコ・ザ・アニメーションなのかい!?」


「アニメじゃない!」


「本当のことさぁ〜みんなが寝静まった夜……」


「夢を忘れた古い地球人じゃないです!」


「意外とオタクですねカタコちゃんは……」


「誰のせいですか……センパイと話合わせるために、たくさん勉強してるのに……うぅ、変な知識ばっかり増えていく……」


「その健気な心遣い、僕は大好きですよカタコちゃん」


「ふ、ふん……今更取り繕っても遅いです!」


「ところで、エックス日本のベニって有名な曲あるじゃないですか」


「あれはクレナイって読むんですよ、センパイ」


 他愛無い会話をしながら一緒に帰るそんないつもの放課後。


「むむっ、道路に飛び出した子供が車に轢かれそうになっている!シュバババ!」


「あぁこら!センパイ!」


 センパイが無茶するのもいつも通り。


 センパイが何かに突っ込む→私が助けに入るパターンがすっかり定型化していた。


「え、いま僕と子供抱えて車より早く動いてました?」


「じ、実家で鍛えられてたので……」


「実家すげーーー」


 私が慣れたのもあるけど、最近はセンパイが私が見ているところでしか無茶をしないので比較的心穏やかに過ごせている



………


……



 学校からの帰り道、僕たちはいつものように一緒に並んで帰る。


 カタコちゃんが晩御飯用の買い出しだったり、特売の日はスーパーに寄ったりするのだが、今日は買い出しの予定はない。


 ……晩御飯の事考えたらお腹空いたな。


「あー、今日寄り道してハンバーガーショップでも行きません?」


「ダメですよ、毎回買った後にジャンクで不味いって文句言うんですから」


「たとえ不味くても抗えない、あのジャンクフードには……!」


「この前はファミレスで私が頼もうとしたチーズインハンバーグをセンパイが食べたいからってセンパイが頼んで、「は?マッズ、あげますよカタコちゃん」って言ってきたじゃないですか。まだ忘れてないですからね」


「身に覚えがございません!」


「思い出させてあげましょうか?」


 あっ、やばいこれカタコちゃんわりと根に持ってるな。

 このままだとチクチク言われそうだし話題を変えよう。


「……あ!パトカー!」


 丁度サイレンの音をならして、パトカーが何台か道を横切った。

 最近はいろいろと物騒でパトカーがよく巡回している。


「最近警察の見回りが多いですよね。事件の予感……!」


「やめてください」


「まだ何もしてないのに……」


「警察がしっかり動いてるならセンパイの出る幕は無いです、もう一度言いますね?無いです。」


「わ、分かっていますよ……流石に警察沙汰のような僕の手に余ることには首を突っ込みませんて……」


「……はぁ、本当にやめてくださいよ?最近夜に通り魔が出たり暴漢が出たりでちょっと騒がしくなってるらしいので……まぁしばらくすれば警察がなんとかしますから」


「ふむ、この街も物騒になりましたね。カタコちゃんも気をつけてくださいよ。」


 まぁ、カタコちゃんは鬼強いので痴漢くらいぶちのめしてしまうと思うが……


「あっ、そうだセンパイ!今日は私、母に呼ばれてるので夜ご飯は作り置きするの温めてくださいね」


「おや、今日は親孝行の日ですか。ご実家に?」


 いつもはカタコちゃんと一緒に晩御飯を食べるのだが、今日はどうやら親に呼び出されている日のようだ(たまにあるらしい)


 うんうん、親子仲睦まじいことは良いことだ。


「えぇ、女の子の一人暮らしだからって心配しすぎなんですよね……わざわざ会わなくても電話でいいのに」


 たしかカタコちゃんは貸家に一人暮らしだと前に聞いたことがあるが、実家自体はそこまで遠くない距離にあるとか……


「いやいや、会えるなら会ったほうがいいですよ。」


 僕みたいに親がどこにいるかも分からないような状態よりはよっぽど良い。


「ただいま〜」


「おかえりなさいです、センパイっ」


「すっかり我が家感覚だねカタコちゃん、まぁいいけど……」


「そりゃあ、もうセンパイより熟知してますし…さっ作り置き仕込みますねー」


 家に帰った僕達、カタコちゃんは早速ご飯の作り置きを始めた。

 うーんいい匂いだ、早めの時間だけどできたらそのまま食べてしまおうか……


「ダメですよーセンパイ、早く食べたら夜お腹空いてコンビニとか行くでしょ」


 しかし先に釘を差されてしまった。

 僕の考えが読める、ニュータイプか!?


「……ハイ!作り終わりました!ということなので今日は帰りますね。センパイ、最近は夜物騒ですからホントに出歩いたりしちゃダメですよ?」


「女の子じゃないんですから別にそんな気にしなくても……」


「男とか女とか関係ないです!とにかく私がいない時はなるべく夜の外出はしないように!」


「今日はやけに念を押すね……まぁ今日はもうご飯食べて寝るだけだし心配しなくてもいいですよ。」


「はい!じゃあまた明日、起こしに来ますからね?センパイ♪」


 そういってカタコちゃんは帰っていった、最近街が物騒なのは僕も気になっているところだ

 カタコちゃんを一人で帰してよかったのだろうか?


 まぁカタコちゃんは僕やそこら辺の人よりよっぽど強いから、僕がカタコちゃんを心配するなんておかしな話だけど


「今日のご飯は何作ってくれたかな〜?おっ、ハンバーグだ!」

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