第2話
科学は発展して、昔は分からなかった不思議なことが色々と解明されていった。
でも未だに私たち人は、不思議なことで溢れている。
なぜ人を好きになると、こんなにも幸せになるのか
どうして、こんなに切なくなるのか。
そんな私は恋する花の女子校生、
趣味は料理とちょっとした運動。
好きなものは今通っている学校のセンパイ。(←キャッ><)
背とか色々小さいことがちょっとだけコンプレックスだったり。(女の子らしいってことなのかな?)
今日も私はセンパイへの恋心を胸に抱いている、センパイの気の抜けた顔も、綺麗な桜色の髪も、ものぐさなわりに厄介事に首を突っ込みたがるところも、全てが大好き。
「〜♪」
「朝からご機嫌だね伊達巻ちゃん」
いつも通りセンパイと登校し、教室にやってくるとクラスメイトの子が話しかけてくる。隣の席で教室ではよく話す、仲の良い子だ。
「あっ、分かっちゃう?ふふっ、今日もセンパイと一緒に学校に来たの!センパイってば、起こしに行ってあげないと起きれないんだから……」
「あー……センパイって、アレでしょ?"正義マン"……伊達巻ちゃんちょっと趣味悪いよ……?」
クラスメイトの子が言う『正義マン』、これは先輩のあだ名だ。
先輩はあんな性格で色んなことに首を突っ込んでいくことから、この学校ではちょっとした有名人なのだった。
「伊達巻ちゃんってあの3年のイケメンで有名な人とか、サッカー部のキャプテンからも告られてたでしょ?絶対あっちの方がいいと思うよ。」
「? なんで?」
「だって正義マン先輩って問題ばっかり起こしてるみたいだし、そりゃ顔立ちは悪くない部類だと思うけど……伊達巻ちゃんならもっと上目指せると思うし!」
「え〜?ただの綺麗なイケメンよりセンパイのほうがずっと素敵じゃない!それにセンパイは私がいないと死んじゃうから……」
「えぇ……伊達巻ちゃん、ダメンズウォーカーの素質あるよ……」
先輩がダメンズ……たしかにそれは言い返せないところ。
みんながセンパイをそう見てるのも仕方ないし、それにセンパイの良いところは私だけが知っていればいい。
「もう結構長いこと一緒にいるよね?まだ付き合ってないんだっけ」
「そうなの!もう出会ってから3ヶ月、朝一緒に来るようになってから1ヶ月になるのね!センパイったら、私のこと全然女の子として見てくれてなくて!」
「……伊達巻ちゃん、今からでも遅くないと思うな!乗り換えよう!」
「でも、そんなセンパイが……ぽっ♡」
「あらやだこの子全く話聞いてくれない」
そう、そんなセンパイとの出会いは私がこの学校に入学してすぐの頃…
「あ、しかもこれ長い回想はじまるね?」
………
……
…
春の季節
親元から離れた新生活が始まった私カタコはちょっぴりの不安を抱えながら新しい学舎を歩いていた
「オラっ!いいから出せよ!」
「や、やめてよ……っ」
(いじめ?いやカツアゲ……か、嫌なものみちゃった)
不良なんてどこの学校にも一定数はいる、わざわざ私が気にするほどでもないと知っていても目には入ってきてしまうもの
……助ける?できるけど、わざわざ面倒なことに首を突っ込む気はない
私は目立つことがあまり好きじゃないし、カツアゲされた生徒も死にはしない……リスクを冒してまで助ける義理もなかった。
(ま、先生くらいは呼びに行っても…)
ダダダダダ!
「待てい!そこの不良!」
私含め、ほとんどの人が見て見ぬ振りをする中……そこに勢いよく飛び出してきたのがセンパイだった。
「カツアゲとは悪逆非道な!この僕の目が虹色のうちは確定演出!悪は見逃しませんよ!」
「そりゃ目が黒いうちだろうが!毎回毎回邪魔しやがって!またボコボコにされたいのかよ正義マン!」
「何度やっても同じことです!僕が正義である限り、僕は
「うるせぇ!やっちまうぞコラァ!」
「ギャー!き、君!今のうちに早く逃げてくれ!なぁに僕は無敵さ!」
「とっくに逃げてんだよ!オラっ!今日こそは三途の川を見せてやるよ!」
「うぅ……!見える…あのブラジルにある世界最長の川が……!」
「そりゃアマゾン川だろうが!」
(……す、凄い!弱いけど……!)
躊躇なく飛び込んでいったその姿は、決して見栄えの良いものじゃなかったけど…私には眩しいほどに輝いて見えた。
同時に、自分のことしか考えてなかったことが恥ずかしくなって…
「ハァ……!ハァ……!どうだ……!」
「まだまだ……!こんなもんじゃ、僕は……!」
「っち、割りに合わねー……次は首を突っ込んでくるなよ!」
「ふん……最後に勝つのは正義さ!」
不良が去り、ボロボロで壁にもたれ掛かるセンパイに私は思わず声をかけていた。
「あ、あの!大丈夫……ですか?」
「む、君は……新入生かな?」
それが3ヶ月前、センパイと私の出会い。
その時は危険を顧みず、厄介ごとに首を突っ込むだけの危なっかしい人……って思っていた
「センパイっていつもあんな危ないことしてるんですか?いつか死んじゃいますよ」
「応援ありがとう、なぁに僕は不滅さ!」
「心配してるんです!はぁ、いいですかセンパイ……気持ちだけでどうにかなるなんてこと、世の中そんなに多くないんですよ?」
「そんなに多くないからこそ、その中でできることを頑張ってるんじゃないか。間違いを正すこと、これは全ての人に与えられた権利だよ」
「そんなの、目の前の暴力には無力じゃないですか。殴られすぎたら人は死んじゃうんですよ?」
「ふむ、それも一理あると僕は思いますけどね。ただ、僕は力をより強い力で制すること……それが正義だとは呼びたくないな」
「正義か正義じゃないかじゃなくてですね……死んだら気持ちも何もないじゃないですか」
「そうかい?正義の気持ちがある限り、僕は何度でも甦りますよ。」
「はぁ……じゃあもういいです、せめて怪我だけは気をつけて。さようなら。」
「あぁ、君も気をつけて帰るんですよ!」
そしてそれからも学校で見かけたり喋ったりする中で私はどんどんセンパイに惹かれていった。
弱いけど、気持ちは人一倍強いこと
私生活はかなりだらしないこと
年上なのに結構わがままで子供っぽいこと
「はぁ……センパイ、分かってます?今日は本当に危なかったんですよ?」
「うぅ……そんなに怒らないでくださいよ……今日は流石に反省していますって……」
今の関係になる決定的だったことは、センパイがまた不良に絡まれる生徒の助けに入った時。
その頃にはもう私はセンパイが自然と目につくようになっていて、今日もやってるなあと遠目で見ていた。
運悪くか、はたまた幾度となく邪魔をするセンパイに痺れを切らしてか……その不良はとうとう刃物を持ち出していた
刃物を出されても一歩も引かなかったセンパイの前に流石に割って入ってしまった。
自分で言うのもアレだけど私は結構強かったりする、暴漢の一人や二人に苦戦なんてしないくらいには
その不良は私が即座に昏倒させて、先生に引き渡した。(今回のケースは流石に問題として警察沙汰になったそう)
「それにしても驚きました。伊達巻君、随分と強いんだね」
「え、えぇ……実家が武道の家系だったそうなので自然と……」
別に隠すつもりじゃないけど、センパイには可愛い後輩を演じていたくて…引かれちゃったかな?刃物持った不良を軽々倒す女の子だなんて…
「……引きました?暴力なんて、センパイ嫌いでしたもんね……」
「ん?何故です、その力に助けてもらったんですから感謝こそすれ引くことなんて……」
「そんな……だって刃物持った男性を軽々倒す女なんて、可愛くないじゃないですか」
「そうですか?驚いたけど、それで伊達巻君の魅力が損なわれることなんて無いと思いますが……」
「え、わ、私って……センパイにとって魅力……ありますか?」
「とても可愛らしい子だと僕は思っていますよ」
「センパイ……」
「それに、君のその目……いつも閉じてましたけど、色が左右で違うんですね。」
「えっ!あ!や、やだ!見ないで!見ないでください!」
私の左右で色が違う目、特に右目は赤くまともな視力が無い。
大概の人は見ると驚くから自然と閉じて隠してるのに……今回は私も動揺していたからか閉じていなかった。
「お、落ち着いて!オッドアイなんてカッコいいじゃないですか」
「……本当?怖いとか思ってません?」
「怖くなんてないですよ、悪いものじゃないんでしょう?まるでルビーのようで綺麗じゃないですか」
「センパイ……!」
本当にセンパイは、私のことをおかしくしてしまう。
こんなにどうしようもなく弱くて、見守っていなきゃすぐに死んじゃいそうで…こんなにカッコ悪いのに
どうしようもなく、私はこの人に惹かれている。
「……って、私のことはどうでもいいんです!……センパイ、分かってます?今日は本当に危なかったんですよ?」
「うぅ……そんなに怒らないでくださいよ……今日は流石に反省していますって……」
「……本当に?」
「……」
「沈黙は悪!」
「ごめんなさい!」
「……もう、せめて怪我をしそうなことは私の目が届く範囲でやってください」
「おや、それは……それだと伊達巻君はずっと僕を見ていなきゃいけなくなりますが?」
「じゃあ、これからはずっと側にいてあげなくちゃいけないですね!覚悟して下さいね、センパイ♪」
「あぁ、そうすると伊達巻君と呼び続けるのは少々堅苦しいかな。カタコちゃん……は少々気安すぎますか?」
「!! い、いえ!全然!そんなことないです!呼んでください!呼んでくれないと今日のこと許してあげませんから!」
そんなことがあり、私とセンパイの距離は今の近さになった。
まぁ……あんなに私生活の面倒まで見ることになるとは思わなかったけど……
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