2:花街と檻

 ***

 

 全員起床したので、とりあえず先へと進む。その先も合っているのか分からない。私の気が向く方に魔物がいる、と言うのは昨日も言われたことだ。そのように進んでいる。

 そうしていたら、塔から遠ざかっていた。前方に花街が見えてローランが逃げようとするので、カインが肩を抱いて留めている。

 

「ところでリーダー。カルアとエスちゃんとモニ太くん連れて、あんなところ行っていいんですかぁ?」

 

 カルアが前方を指す。巨大な檻に囲まれて、提灯がぶら下がっている幻想的な街だ。提灯の火は色とりどりに揺らめいていた。遠くで囃子の音が聞こえる。

 リヴァイアの文化の異常性は昨日のノルマンの一件で浮き彫りになっている。そのため麻痺していたが、確かに本来は未成年の子どもたちを連れて歩くべき場所でもないだろう。

 

「つっても、あたしの故郷ですし。ま、あたしの故郷を再現した場所なんでしょうけど。モニ太、モニ太は大人かっこ笑だから大丈夫すよね」

『……? 花街だろう? 何故そんな話になってるんだ?』

「? 花街だから聞いてるんすけど」

 

 モニ太くんが小首を傾げるように筺体を傾けた。鏡写しにエスも首を傾げる。

 モニ太くんに表示されている電光の目は訝しむように細目になる。逃げ出そうとしたローランの足音を聞いて、エスは得心が言ったように「あ」と声を出した。そして私も同時に理解した。

 

「花街って、地名でも物理的な花売ってるメルヘンな場所でもないんすよ」

『ん?』

「女売ってんすよ」

『人身売買か? しかも女性を? 許せないな』

 

 エスの困った顔と目が合う。

 ローランを連れ戻してきたカインがその会話を聞いて、私に耳打ちする。

 

「面白いからライヒェが気づくまで曖昧にしとこうぜ」

「まあ、間違っちゃないのはそうなので。面倒くさそうになったら、リーダーが何とかしてくださいす」

「えぇ……」

 

 面倒を体良く押し付けられた気がする。いつもは聡明なライヒェが何も分かっていない様子が、どうにも不思議な気持ちである。

 とりあえず、際どい場面になったら視界だけは塞いでやろうと思い、私の肩に止まってていいよ、と言い、半ば無理やりモニ太くんを肩に押し付けた。

 

「やばそうならあたしがカルアちゃんの目塞いどくんで。カインはローランお願いします。あたしの直感なんすけど、多分、この中入らないとなので」

 

 花街を覆う巨大な檻がこちらを見下ろしている。

 昨日見た黄の夜空戦争の風景は、土嚢が詰まれたり、塹壕が出来ていたり、砲撃のせいか道は酷く凸凹だった。

 ここはリヴァイア地方の経済の中心なのだろう。続く道からして広く平らに整備されている。

 

「じゃあ、行こうか」

 

 檻に囲まれている街の入口は、私たちが近づくとゆっくりと開いていく。提灯が風で揺らぐ。意を決して踏み出すと、拍子木の音が強く鳴らされてから無音になった。

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