第4話 雨宿りの告白
放課後、空はいつの間にか鉛色に染まり、遠くで雷が小さく鳴っていた。
――もうすぐ降りそうだな・・・
教室の窓から外を眺める私の胸は、少しざわついていた。
そんなとき、廊下で声がした。
「楓ー!こっちこっち!」
振り向くと、葵が走ってきて、私の肩を軽く叩いた。
「わっ、びっくりした・・・」
少し濡れた髪が額に張り付いて、思わず手でそっと押さえる。
葵はにっこり笑い、私の手を取り、近くの軒先へと誘った。
屋根の下で雨宿り――二人きりの静かな空間。
心臓の音が、雨音にかき消されそうで、でも確かに耳に届く。
「雨って、なんか落ち着くよね」
葵の声は柔らかく、普段の元気さよりも少しだけ優しい。
私は黙って頷く。雨音の中で、二人の距離が少しずつ近づくのを感じる。
「ねえ、・・・昨日も言えなかったけど、屋上で会えて嬉しかったよ」
その言葉に、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
思わず目を伏せると、葵は少しだけ私の肩に寄るように身を傾けた。
温かい気配が伝わり、思わず息を止める。
「私、ね・・・」
葵は少し言葉を詰まらせて、でもちゃんと私を見つめている。
その瞳に引き込まれそうで、私は自然に息を吸い込む。
「楓と一緒にいると、なんだか安心するの」
小さな告白が、静かな雨の空間に染み渡った。
言葉を聞いた瞬間、胸が甘く締めつけられる。
私も、言葉にしたくて仕方なかった。
「私・・・・・私も、葵と一緒にいると・・・嬉しい」
声が少し震えるのを感じながら、心の奥の感情を素直に伝える。
葵は微笑みながら、そっと手を伸ばして私の手を包む。
その温もりが、胸の奥までじんわり広がっていく。
雨に濡れた髪と服、屋根の下のひんやりした空気――
すべてが甘く切ない、特別な時間になった。
しばらく沈黙が続く。言葉はいらなかった。
お互いの存在が、手の温もりが、心を繋いでいることを確かめるだけで十分だった。
雨が少し弱くなり、雲の隙間から光が差し込む。
「もうすぐ止みそうだね」
葵の声に、私は小さく頷く。
雨宿りが終わる頃、二人で教室へ戻る。
まだ手はつないでいない。でも、心の距離は確かに縮まった。
胸の奥で甘く疼く感覚――それが恋心なのだと、私はやっと理解する。
「・・・葵と、もっと一緒にいたい」
心の中で、そっと呟いた。
屋上での偶然、放課後の散歩、文化祭のすれ違い、そして雨宿り――
すべてが少しずつ私たちを近づけていく。
この気持ちが、これからどう育っていくのか、少しだけ楽しみだった――。
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