第3話 文化祭のすれ違い
今日は学校の文化祭。
教室や廊下は人で溢れ、笑い声と音楽でざわついている。
私は胸の奥で少し緊張しながら、放課後の屋上での約束を思い出す。
「今日も葵と一緒にいられるかな……」
期待と不安が入り混じる。
お昼過ぎ、葵が私を見つけて手を振る。
「楓ー!こっちこっち!」
その笑顔を見ると、胸の奥がじんわり熱くなる。
私は思わず小さく笑い返し、彼女のいる場所へ向かう。
でも、近づくにつれて、私は少し戸惑った。
葵の周りには、派手な友達が何人もいて、楽しそうに話している。
笑い声、手を取り合う姿……その光景が、私の胸に小さな棘を刺した。
――私、なんでこんなに気になるんだろう――
でもギャル系の派手な友達も、わたしには自然と接してくれていて。
普段なら、他人のことなど気にしないのに、葵が関わると、心がざわつく。
葵が気づき、私の方に手を伸ばしてくれる。
「楓、来てくれて嬉しいよ!」
その声は、優しくて温かい。
でも、私の心の奥の小さな嫉妬は消えない。
――私も、ずっと葵と一緒にいたいのに――
胸の奥で呟く言葉は、まだ口には出せない。
午後、クラスの出し物を回りながら、葵は友達と楽しそうに笑っている。
私は少し距離を置いて、遠くからその姿を見守るしかない。
目が合う瞬間、葵は手を振ってくれる。
その一瞬で、胸の痛みが少し和らぐけれど、やっぱり少し切ない。
――どうして、こんなに心が揺れるんだろう――
放課後、やっと二人きりになれる瞬間が訪れた。
屋上ではなく、静かな教室の片隅。
葵がふっと息をつき、「今日は楽しかった?」と尋ねる。
私は少し照れながら頷く。
「うん、でも・・・少し、寂しかったかも」
思わずこぼれた言葉に、葵は驚いた表情を見せる。
「寂しかった・・・?」
その声は少しだけ、優しく震えていた。
「・・・うん、葵が友達と楽しそうにしてるのを見て、少し嫉妬しちゃった」
小さな勇気を振り絞って、私は言葉にする。
すると、葵は微笑みながら私の手をそっと握った。
「あはは、そっか・・・ごめんね、気づかなくて。
でも、楓がそう思ってくれるの、嬉しいな」
その瞬間、胸の奥がぎゅっと温かくなる。
嫉妬心も、少しずつ甘い感情に変わっていく気がした。
――葵のこと、もっと好きになっちゃいそう――
心の中で小さく呟く。
夕暮れの教室を出ると、まだ少し人が残る校庭を二人で歩く。
手をつなぐことはまだできないけれど、心は確かに近づいている。
胸の奥に残る甘く切ない余韻を噛み締めながら、私はそっと思った――
「明日も、葵と会えるかな・・・」
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