大魔女の付き人
烏の人
第1話 大魔女の付き人
魔力が支配する現代日本。
御三家が一、
そして現在、次期統領候補として名高いのが大魔女の異名を持つ神楽
そんな人間に使える人物がいた。魔術の才能はあれど他は凡庸極まりない。何故それがそこにいるのかもわからぬような人間。
「お帰りなさいませ。彩羽様。」
「ただいま、想太。」
使用人としての出来はそれなり。
「さて、想太。」
「はい。」
「なんで私が怒ってるかわかるかしら?」
「いえ、見当もつきません。」
「あなた、今回の魔術論理のテスト…手を抜いたわね?」
「いえ、そんなことは。」
「騙そうったって無駄よ?私の魔術は星読み…その者の生まれ持った才覚、そしてこれから辿る道筋、可能性の全て…それを見れるんだから。あなたは紛れもなく魔術の天才。そろそろ本気を出してもいいんじゃない?」
「買い被りすぎですよ。今の僕にはあれが手一杯です。」
「私じゃ相手にならないって言うの?」
「そんなことは一言も言っておりません。」
「なら、私の
「それも、一言も言っておりませんよ。僕は、ただできることをしただけですから。」
「はぁ…この付き人ホントむかつく…私より才能あるくせに!」
「逆に、よいのですか?凡庸な僕に、成績トップのあなたが負けるなんてことがあって。」
「それ!見下されてる感すごいんだけど!!」
「別に見下してなんていませんよ。」
「はぁ…なぁんで雇っちゃったかなぁ…。」
「あなたが拾ってくれたんですよ。僕のこと。」
想太が彩羽の付き人として雇われたのは今から5年前の話だ。両親を失い、行く宛のなくなった想太を迎え入れたのは他ならぬ彩羽であった。
「私の目に狂いは無いわ。絶対にあなたに本気、出させてあげるんだから!!」
「だから、期待しすぎですよ。」
それだけ言い残すと、想太は自分の仕事へと戻る。
付き人の仕事と言えば、主人の身の回りの世話。鞄持ちや清掃等。だが想太の場合はここに護衛が入る。
「流石は占星魔術の天才…結界もピカイチだな。」
そう呟き、結界の綻びへと向かう。屋敷の中は広く、すれ違う他の使用人からは冷ややかな視線が向けられる。言ってしまえば、想太は「特別」なのだ。彩羽のお気に入り。その癖をして凡庸。それだけに向けられるそれは嫉妬に満ちている。
だが、気にしたら負け。事を起こしたら居場所がなくなるかもしれない。おとなしく想太は見ないフリを続けるのだ。
屋敷の北東の方角。結界の綻びはそこにあった。しゃがみこんで魔法陣に手を当てる。
「やっぱり御三家ってすげぇな。結界に綻びはあるけどこれでもずいぶん持つな。」
立ち上がり少し考える。この屋敷に張られている結界は12方位に配置されたシンボル、魔法陣によって成り立っている。
「占星魔術なら…。」
そう言って再びしゃがみこみ、指を当て魔力を流し込む。
「こんなもんかな。」
そうして、踵を返しその場を去ろうとしたときだった。背後からの物音に、想太は足を止めたのだった。
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