「民主主義」から「資本主義」へ人類社会のガバナンス(統治)を改変した設計図

プラナ

第1話:資本主義「設計図」の変遷とガバナンスの奪取

この「設計図」は、哲学と政策がどのように人々の日常を形作るかを視覚化する試みです。

本文と挿絵は、単なる歴史整理ではなく、「気づき」が引き起こす孤独とその先にある選択を描きます。

読み手に求めるのは同情でも説教でもなく、現実を直視するための鋭い視点と、その先で共に考え、動ける小さな手触りです。

この構造の変化が誰に利益をもたらし、誰を置き去りにしてきたのかを明確に示します。

感じたことを忘れず、無力感を燃料にして「つながる」一歩を探してください。

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資本主義「設計図」の変遷とガバナンスの奪取


【原設計図】

アダム・スミス (1776年頃) - 倫理の小屋


設計思想:

「道徳が礎石となる、人間規模の共同体の家」


基礎:

共感(『道徳感情論』)


大黒柱:

労働(富の真の源泉)


調整装置:

見えざる手(自然な調和)


屋根(目的):

社会全体の繁栄と、道徳的な個人の育成


▶ 視覚的・感覚的イメージ:


道徳が礎石となる、人間規模の共同体の家


素材: 地元で採れた温かな石と木材。

空間: 暖炉の火が揺らぐ、話し声と笑い声が響く共同体の小屋。

音と匂い: 談笑する声、パンの焼ける香り。

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【第一期 改修: 19世紀後半】

「科学」という名の鉄骨化 - 限界革命



設計変更:

「道徳の石基礎を撤去し、数学的鉄骨を挿入」


変更点:

「限界革命」(ジェヴォンズ、メンガー、ワルラス)により、経済学は価値判断を排した「科学」へ。

人間は合理的な経済人と再定義。

効用と均衡が共感に取って代わる。


【対照的な修正設計図】:

マルクスはこの鉄骨を「階級闘争」と看破し、ケインズは後に「政府による積極的な補修」を提案した。


▶ 視覚的・感覚的イメージ:


道徳の石基礎を撤去し、数学的鉄骨を挿入


素材:

冷たい鉄骨が石組みを貫き、無機質な様相へ。

空間:

計算尺と設計図が広がる、人影の少ない作業場。

音と匂い:

金属を叩く乾いた音、埃っぽい空気。

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【第二期 改修: 1970年代〜】

「自由」という名のエンジン化 - 新自由主義



設計変更:

「労働の大黒柱を、資本の巨大エンジンに交換」


変更点:

新自由主義(フリードマン、ハイエク) が設計主導。

規制緩和/小さな政府/民営化を推進。

労働者は富の源泉から人的コストへ。

雇用は長期の信頼から短期の契約へ。


変更の真の意図:

資本の自己増殖スピードの極大化。


▶ 視覚的・感覚的イメージ:


労働の大黒柱を、資本の巨大エンジンに交換


素材:

むき出しのコンクリートと排気ガス。

空間:

轟音を立てるエンジンがそびえ立つ、薄暗い巨大工場。

音と匂い:

機械の轟音とベルトコンベアの音、油と鉄の臭い。

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【第三期 改修: 1990年代〜】

「グローバル化」という名の空中庭園化


設計変更:

「国民国家の屋根を取り払い、ガラス張りの空中庭園を建設」


変更点:

グローバル標準(IMF, WTO)の名のもと、各国の規制が均される。

企業は国家ショッピングを開始。

グローバル資本エリートが新階級として誕生。


変更の真の意図:

資本の国境からの完全な解放。


▶ 視覚的・感覚的イメージ:


国民国家の屋根を取り払い、ガラス張りの空中庭園を建設


素材:

反射するガラスと軽金属。

空間:

地上から切り離された、透明で冷たい空中庭園。

下を見下ろす優越感。

音と匂い:

かすかなエアコンの音、消毒された無臭の空気。

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【最終設計: 現在】

「ガバナンスの奪取」- 資本神殿の完成



設計変更:

「民主主義という設計主を退場させ、資本主義を新たな設計主に据える」


変更点:

デモス(人民)からカピタル(資本)への主権移譲 が完了。

一票より一ドルが強力に。

国家は市民の代表から資本の利益代行機関へ。


【新たな制御装置】:

AI統治、アルゴリズム政治が、この神殿を最適化、維持する「神官」として機能し始める。


▶ 視覚的・感覚的イメージ:


民主主義という設計主を退場させ、

資本主義を新たな設計主に据える


素材:

光るスクリーンと流れるデータ(光そのものが素材)。

空間:

中央に巨大な「株価表示板の祭壇」が輝く、荘厳な神殿。同時に、入り口のない監獄。

音と匂い:

データが流れる微かな電子音、一切の生活臭が排除された無菌状態。

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ここまで目を通してくれてありがとうございます。

本稿は問いを投げ、場面を描き、行動への出口を探るための地図です。

絶望が「理解の証」であるなら、その理解を孤立で終えず、連帯や小さな実践に変えることが次の課題です。

具体的な一歩としてできることは、周囲と経験を共有すること、地域や職場での相互援助の仕組みを模索すること、政策や制度について声を上げることです。

変化は一夜にして来ないが、見える化と共感がなければ始まらない。

あなたの感じた違和感を、大切な出発点にしてください。

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