チア落ちアイドル三姉妹♡
えむいちまるろくHC
第1話 重なり始めた三つの夢
「あの広川レッドフィッシュズの一員に
なれるかもなの~~!!」
わたしは夢野愛(ゆめのあい)。大好きな野球
チーム、広川レッドフィッシュズの
チアガール募集を見て心が舞い踊っている♪
やりたい!私の服をほぼ赤に変えてしまった
ほど好きな広川レッドフィッシュズ!
そのチームの来季チアガールオーディション
が10月末に行われるというのだ!!
「これはもう『あの子達』も巻き込んで
参加するしかない♪」
『あの子達』というのは私の妹、次女の恋
(れん)と三女の心(こころ)のことだ。二人は
野球にもダンスやチアガールにも興味はあま
りない。だけど3人で挑みたいんだ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ただいま~!恋(れん)~心(こころ)~
いる~?」
私は帰って玄関を開けすぐに二人を呼んだ。
「お姉ちゃ~ん♪おっか~えり~♡」
まるでハートを飛ばしているかのように
ルンルンで駆け寄ってくるのは
次女の恋(れん)だ!
私の事が好き…なのは嫌じゃないけど、
私にベッタリ過ぎて少し先が不安になる。
「あい姉…おかえり…」
後からゆっくりやってきたのは、三女の心
(こころ)。私や恋とは違う、大人しくて地味
だけど知的な雰囲気を醸し出す、驚異の中2
だ。
「お姉ちゃん♪お姉ちゃん♪そんなに恋と
早く会いたかった?
恋もね♡早くお姉ちゃん帰って来ないかな~
って思ってたんだ~♪」
約10cm下で私を抱きしめ見上げながら
ニコニコして言う。
「よしよし♪良い子にして心の言うこと聞い
てた?」
私は優しく、そして少しイタズラに答える。
「ぶ~恋の方が、こころちゃんより1つお姉
さんなんだも~ん!」
恋が顔を膨らませて不満そうに言う。それを
見てクスッとなる。そんな私達のいつものよ
うな風景を見て心が聞く。
「あい姉、何かあった?」
そうだった!大発見をいち早く伝えたくて呼
んだのだった。
「恋、心、二人とも聞いて!あの広川レッド
フィッシュズが来季チアガールのオーディシ
ョンを行うらしいの!!」
思い出したらまた興奮して少し叫び気味にな
ってしまったけど、私の興奮は思った通り
共有されなかったみたい…
「お姉ちゃん良かったね♪恋はお姉ちゃんの
応援してるよ♡」
恋は私の広川レッドフィッシュズへの想いを
知ってるからか、賛成こそしてくれたが一緒
にする気はないようだ。
「今から始めるの…?競争率高そうだし大変
じゃない?止めはしないけど…」
心は冷静に落ち着いて告げる。だが私が欲し
かったのはそれじゃない。
「2人も私と一緒に挑戦しよう!真っ赤に輝
く夢を3人で掴みたいんだ!!」
目を輝かせて叫んだ。そう!
3人で挑みたい…私一人じゃダメなんだ!!
「えっ!
ええええぇぇぇぇーーーー!!!!」
恋も心も一緒に誘われるとは思ってなかった
ようで驚いた様子だった。
「お姉ちゃん!恋、今年受験生なんだよ~?
お姉ちゃんと同じ高校を目指すために、
頑張らないといけないんだよ~?」
恋は必死に断ろうとしている。
「大丈夫!一緒にしてもらう代わりに
受験勉強は全力でサポートする!それにそん
な時のために恋も入りやすい高校を選んだん
だから♪」
こんなオーディションがあるとは思っていな
かったけど、恋が入りやすい高校を選んで
正解だった。
私の優しさが実を結ぶ時が来た(?)のだ!
「う~!でもぉ~でもぉ~!あ、
こころちゃんは参加するのは嫌だよね?」
恋は嫌がり反対しながら心に賛同を願った。
「…私は三人でどうしてもと言うなら…少し
試しにくらいなら考えてもいい…」
心は正直乗り気ではないみたい。だけど私に
反対するのも悪いと思っているようだ。
「なぁんで~なあんでぇ~!」
賛同を願った心からの思わぬ返事に、語彙力
なく反対を続ける恋。私は追撃をかける。
「1本の矢は折れやすいけど3本集まれば
強くなる!
3人で見たことの無い世界を見たいんだ!」
二人はあまり好きでもないし
興味も無さそう、だけど一緒に目指したかっ
たんだ。
「…おもしろいわね…戦国時代であったよう
な誘いじゃない…れん姉も試しにくらいは
どうかしら?…あくまで試しで…」
心にはどうやら口説きが少しは通じたらし
い。恋はまだ不服そうだ…
「れんちゃんは私のこと嫌い?」
私は少し屈んで同じ高さでお願いしてみる。
「もぉ~!そのお願いの仕方はインチキだか
ら~!そう言われて断れるわけないよ~♡」
困っているか喜んでいるか、わからないよう
な複雑な表情で答える恋。
私の熱意は通じたのだ♪
「その代わり受験勉強のお手伝いしてくれる
のと~決定じゃなくてお試しなのと~」
ここぞとばかりに色々と交換条件を乗せてき
た恋、負けていない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
だけどこうして「ひとまず」だけど
私達三姉妹の新しい挑戦が始まった!
真っ赤に輝く夢を目指し始めた三本の矢!
私達なら出来る!大丈夫!!
窓から春の風に乗ってやってきた桜もそう言
っているようだった…
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