第34話 発見

 バスセンターの屋上。千春が仁王立ちしている。


「晴真! 柚希を見つけたならなんで連絡しないのよ!」


「いや、こいつが連絡するなって」


「そうなの? 柚希?」


「うん、ごめん。千春」


「どうして?」


「……だって、結局、蓮司君はウチじゃなくて、千春たちの方が好きだから」


「そんなことない……って言いたいけど、言えないな」


「だよね。分かってる。ウチ、もう蓮司のところには戻らない」


「じゃあ、私たちと一緒に――」


「行かないよ。黒瀬たちのところには。しばらく一人で居るよ」


「そっか……」


「でも、ウチは大丈夫だから。今日はもう帰るけど、明日はちゃんと学校行くし、心配しないで」


「うん……わかった」


「探してくれてありがとう」


「当然でしょ? 友達だもん」


「うん……やっぱり、千春にはかなわないや」


「え?」


「なんでもない。じゃあ、荷物取りに学校に戻ろうかな」


「一緒に行こうよ」


「うん!」


 二人は連れだって去って行く。おいおい、俺のこと、忘れてないか?

 ふと売店の店員を見るとにやにや笑ってやがる。俺が2人にフラれたわけじゃないからな!


◇◇◇


 翌日の朝。西原柚希はちゃんと登校してきた。


「おはよう、千春、黒瀬」


「おはよう、西原」

「おはよう、柚希。大丈夫?」


「平気平気。でも……正直言うとちょっと恐いかも」


「だよね……」


 二人で一条の席の方を見る。今日はまだ一条は登校していなかった。ああいうことがあったあとだし、西原が一条を怖がるのも無理は無い。


「柚希、大丈夫?」


 他の女子たちも心配して声をかけてくる。西原はそのまま女子たちに連れられていった。

 ……あいつ、ちゃんと友達いるじゃねえか。大丈夫そうだな。


「そういえば、晴真」


 西原が去った後、千春が俺に言った。


「ん?」


「昨日、柚希に告白されてなかった?」


「はあ? されてるわけないだろ」


「そう? 蓮司と同じとか言われていたような」


「う……」


 なんかそんなことを西原が言おうとしたとき、千春が来たんだった。


「ちょっと目離すと、すぐ口説くんだから」


「はあ? 口説いてなんかない!」


「嘘ばっかり。『俺のハーレムに来ないか?』とか言ってたじゃない」


「そんなこと言うか! あれは……」


 そう、部室に来いと言ったんだった。だけど、西原は同じ間違いはしたくないと断った。ん? でも、それって千春が来る前の会話だけど……


「お前、聞いてたのかよ」


「聞こえてたのよ」


「千春、お前、結構前から居たのか?」


 屋上に来てすぐに声を掛けてきたと思っていたが、まさか――


「さあ?」


 とぼける千春。


「どこから聞いてたんだよ」


「忘れちゃった」


「はあ?」


 とぼけやがって。


「でも、なんか晴真、柚希に優しかったよね。なんで?」


「別に優しくなんかしてないだろ」


「優しかったよ。いつもハーレム女子には冷たいのに! なんで柚希だけ」


「そりゃ……あんな泣き出したりしてたら当然だろ」


 それに、俺には少し罪悪感があった。一条のハーレムは俺のせいで崩壊したのかも知れない。だとしたら、西原が泣いている理由は俺にもあるわけで。だから、つい、優しくしてしまったのかも。


「少し、やけちゃった」


 恥ずかしげもなく言う千春。それ、もう好きってことだからな。


「じゃあ、すぐ口を出せば良かっただろ」


「だって……そんな優しい晴真をもう少し見てたかったんだもん」


「やめろ。恥ずかしいだろ」


「あー、照れてる」


「やめろって!」


 そんなことを言っていると、急に声を掛けられた。


「朝からイチャイチャですか?」


 その声に振り向くと、美空ちゃんが立っていた。


「してないから!」


「別にいいんじゃないですか? イチャイチャしても」


「なんでだよ」


「だって、付き合いだしたんですよね?」


「はあ? そんなわけないだろ!」


「あ、まだでしたか。さっきの様子を見ててっきり……すみません、勘違いして」


「まったく……それで、何か用か?」


「はい、兄は今日、学校を休むそうです」


「そうか」


 結局、一条蓮司は休みか。

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