第24話

休憩室に入り、彼に促されるまま奥へと進んでいくと、半分ほど進んだところに、座り心地の良さそうなソファがいくつか置かれているスペースがあった。


もっと奥にもスペースがありそうだったが、パーテーションがわりに置かれた観葉植物に遮られていて、なんとなく立ち入ることを阻まれているような気がした。


観葉植物の葉が、天井に埋め込まれたエアコンからの風で揺れていて、その向こうに誰かが座っているようだった。


引き締まった細い足首に黒いピンヒール。

ヒールの先端には、金色の装飾が施されていた。


僕が立ち止まると、彼はその人物に向かって声をかけた。


僕の尻を撫で回していた手は、今は腰に軽く添えられているだけだ。


「悪い、待たせた」


すると、観葉植物の向こうで動く気配があり、それと同時に


「え、何、嘘だろ」


という男性のヒソヒソ声と微かな笑い声が、バタつく雰囲気と共に聞こえてきた。


僕よりも背が高い隣の彼には、向こう側の様子が見えているようで、


「あーー……」


と言いながら、呆れたような顔をした。


「終わるまで待っててもいいけど?」


彼は覗き込むように、首を伸ばして向こう側にいる人物に言った。


そんな彼の問い掛けに応えたのは、少し低めの女性の声だった。

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