第41話|支えの鼓動──誰かの涙に触れた日
※この作品は台本(脚本)形式で執筆しています。
会話の前にキャラクター名が入る構成です。
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こんにちは、お疲れ様です。西竜愛星です。
みなさん、いつも読んでくださってありがとうございます。
術後の結愛は、少しずつ日常を取り戻しながらも、心と身体の両方で大きな壁に向き合い続けています。
そして今回――その結愛の前に、一人の少女が現れます。
彼女との出会いが、結愛自身の“歩んできた道”を見つめ直すきっかけとなり、
また新しい“誰かを支える力”へとつながっていく……そんな大切な回です。
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前回のエピソード
https://kakuyomu.jp/works/822139837672594690/episodes/822139839982196766
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⚠️ご閲覧に際してのご注意
本エピソードには、手術への不安・心理的負担に関する描写が含まれます。
また、術後回復期の患者同士の会話や、手術内容に触れる場面がありますが、実際の手術シーンの詳細な生々しい描写はありません。
病気・手術に関する話題が苦手な方は、無理のない範囲でお読みください。
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🕗 8:10〜
〈鳳英医科大学附属病院・一般病棟・結愛の病室・術後26日目〉
朝の回診が終わった直後。
胸の状態も呼吸も安定していて、寺西はタブレットに記録を打ち込みながら言った。
寺西「……よし。患部も問題ない。順調だ」
結愛は落ち着いた声で返す。
結愛「……ありがとうございます……先生」
寺西は軽く頷き、そこでふと視線を別の記録に落とした。
少しだけ、迷うような間があったあと——
寺西「……結愛さん。少し頼みたいことがある」
結愛は瞬きをして、寺西を見る。
結愛「……なんですか……?」
寺西はタブレットを閉じ、結愛のベッドの近くに腰を下ろした。
いつもの厳しい表情ではなく、どこか柔らかい。
寺西「近々、手術を控えている子がいましてね。
結愛さんと歳が近くてな。……その子が、かなり“怖がっている”」
結愛の表情がわずかに揺れる。
寺西「もちろん、我々医療者も説明やケアはしています。
だが……“同年代で、同じように大きな手術を乗り越えた患者の言葉”は、医者以上に届くことがあります」
ゆっくりと噛みしめるような声だった。
寺西「……もし、結愛さんが良ければでいい。
話をしてやってくれませんか?」
結愛は、しばらく考えた。
自分も手術前は、説明を受けても怖くて、逃げたくて……。
あの時、誰か同じ歳の子が「大丈夫、私は戻ってきたよ」と言ってくれたら——
どれだけ救われただろう。
結愛は息を整え、小さく頷いた。
結愛「……はい。
あたしでよかったら……話します。
その子……すごく怖いと思うから……」
寺西は穏やかに微笑む。
寺西「ありがとう。
君になら頼めると思った」
その言葉に、結愛の胸の奥が温かくなる。
寺西は立ち上がり、
寺西「午後少し時間をとる。
その時に、紹介しよう。
……無理だけはしなくていいからな」
結愛ははっきりと頷いた。
結愛「……はい」
寺西はカルテを手にし、静かに退出した。
病室に戻った静けさの中で、結愛は胸にそっと手を当てる。
結愛(心の声)《……あたし、誰かの力に……なれるかな……手術……本当に怖かった……
でも……あたし、生きてる……》
鼓動は少し強く、確かに響いていた。
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🕣 8:30〜
麻未が配膳ワゴンを押して入室した。
麻未「結愛さん、朝ごはんですよ。今日も軟菜食です」
トレイには、普段とあまり変わらない“やわらかい食事”が並んでいる。
結愛は軽く頷き、特に驚く様子も見せない。
結愛「……ありがとう……」
麻未がベッドの角度を少し上げる。
麻未「いつも通り、ゆっくりで大丈夫ですよ。
手、疲れたら言ってくださいね」
結愛はスプーンをゆっくり持つ。
手の震えは前より少しだけ落ち着いていた。
ひと口、ふた口。
特別な表情もなく、淡々と食べ進めていく。
麻未「うん、いいペースですよ。昨日より腕の動きが安定してますね」
結愛「……うん……少し……まし……」
半分ほど自力で食べ終え、残りは麻未に軽くサポートしてもらいながら完食した。
食後、結愛は短く息を整える。
結愛「……ごちそうさま……」
麻未「はい。ばっちり食べられましたね。午前のリハビリも無理しないでいきましょう」
朝食は、ただいつものように淡々と終わった。
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🕘 9:00〜
〈一般病棟・リハビリ室〉
詩織が近づき、明るく声をかける。
詩織「おはようございます、結愛さん。今日もできる範囲でいきましょうね」
結愛はほのかに頷き、車椅子でリハビリ室へ移動。
胸骨の圧はまだ残るが、呼吸は前日より安定していた。
詩織はメモを取りながら小さく頷く。
・座位保持:15秒 → 25秒に延びる
・立位保持:10秒が安定して続く
・手のリーチ動作:昨日より可動域が広い
・歩行器立位:まだ“立つだけ”だが、倒れそうにはならない
詩織「いい感じです。昨日よりずっと呼吸が乱れていませんよ」
結愛は肩で息をしながらも、小さく微笑む。
結愛「ほんとですか……?」
詩織「はい。本当に。前に進んでいますよ」
リハビリは無理をせず終了。
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🕚 11:00〜
〈結愛の病室〉
結愛の病室に、優子・将弘・翔太の3人が揃って来室。
優子「今日も顔色いいね。ほんと、よく頑張ってる」
将弘「日に日に良くなってるな」
翔太「……めっちゃ頑張ってるな」
結愛は照れたようにまばたきしながら、か細い声で返す。
結愛「……うんまだ……少しだけ……だけど……」
家族三人はしばらく穏やかに会話し、
結愛に負担をかけないよう早めに退出した。
扉が閉まる。
結愛は胸にそっと手を置きながら、小さく呟く。
結愛「……今日も……ちゃんと会えてよかった……」
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🕛 12:00〜
昼食が運ばれてくる。
この日のメニューは軟菜食だが、結愛にとってはもう日常になりつつあった。
麻未「今日も焦らず食べましょうね」
結愛は、昨日よりもスプーンをしっかり持てるようになり、ゆっくり時間をかけながら半分ほど自力で口へ運ぶ。
結愛「……ちゃんと……食べれるように……なってきた……」
麻未は嬉しそうに頷く。
麻未「はい、いいペースですよ。呼吸も落ち着いてます」
無理せず、しかし確実に。
結愛の動きは日に日に安定してきていた。
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🕐 13:00〜
リハビリの疲労と食後のだるさもあり、
結愛は自然と眠気に引き寄せられる。
麻未がブランケットを整え、
静かに部屋のカーテンを少し閉める。
麻未「少し休んでくださいね」
結愛は短い呼吸で「……うん」と頷き、
すぐに浅い眠りへ落ちていった。
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🕑14:00〜
軽いノックとともに、ドアが開く。
寺西「結愛さん、入りますよ」
結愛は昼寝からゆっくり目を開けた。
朝に受けたお願いのことが、すぐに頭に浮かぶ。
寺西「少し休めましたか?
……では、例の子のところへ行きましょう」
その言葉に、結愛は小さく息を整え、頷く。
結愛「……はい。
あの……どんな子なんですか……?」
寺西「話してみればすぐわかります。
結愛さんに“会ってほしい”理由も」
麻未が車椅子をゆっくりと準備する。
麻未「立ち上がりますよ。
胸、痛んだらすぐ言ってくださいね」
結愛は麻未の支えを受けながら慎重に体を起こし、車椅子に座る。
寺西「大丈夫そうですね。では行きましょう」
寺西が車椅子を押し、病室を出た。
結愛(心の声)《……どんな子なんだろ……どれくらい……怖いんだろ……あたしも……手術前は震えるくらい怖かった……だから……助けになれたら……》
同じフロアの女性病棟。
結愛の病室から、二つ隣の個室で足が止まる。
寺西「ここです」
結愛はまだ、その子の名前も知らない。
どんな顔かも、どんな声かも。
ただひとつ──
「助けになってほしい」という寺西の言葉だけが
胸の奥に静かに灯っていた。
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🕑14:05〜
寺西がノックをして、静かに声をかける。
寺西「……入りますよ」
病室は他の個室と同じ作りだが、どこか張りつめた空気があった。
ベッドの上には、小柄で華奢な少女が身を縮めるように座っていた。
黒髪に薄い前髪、顔色は緊張でこわばっている。
年齢は――結愛よりずっと幼く見える。
少女は寺西の姿を見ると、びくっと肩を揺らした。
少女「……せ、先生……?」
寺西は柔らかく頷いた。
寺西「うん。具合はどうだ、ひよりさん」
少女――ひよりは小さく首をぶんぶん横に振る。
ひより「……あ、あんまり……。明日の手術……本当に怖くて……」
声は震えていて、今にも泣きそうだった。
寺西はひよりのそばに立ち、穏やかに言葉を続ける。
寺西「今日はね。君と歳が近い患者さんを連れてきた。
実は彼女も……つい最近、心臓の大きな手術を乗り越えたんだ」
ひよりはゆっくりと視線を上げる。
寺西「紹介するよ。白石結愛さんだ。
もう術後三週間で、ここまで元気になっている」
結愛は軽く会釈し、控えめに微笑んだ。
結愛「はじめまして、白石結愛です……」
ひよりは驚いたように目を丸くする。
ひより「……三浦ひよりです……」
結愛は、ゆっくりと言葉を続けた。
結愛「あたしも……すごく怖かったよ。
明日が来るのが……ずっと、いやで……」
ひよりの喉が震える。
ひより「……怖かったん……ですか?」
結愛「うん。めちゃくちゃ」
その言葉は、飾りもなくて、嘘がひとつもなかった。
ひよりの顔が、涙をこらえるようにぎゅっとゆがむ。
ひより「……私……死んじゃうんじゃないかって……考えてばっかりで……眠れなくて……」
結愛は胸の前で手を軽く握った。
結愛「大丈夫だよ。
あたしも同じこと思ってたけど……今、こうして生きてる。
息もできてるし……歩く練習もしてる」
ひよりの瞳が揺れる。
ひより「……ほんとに……?」
結愛は優しく頷いた。
結愛「ほんとだよ。
怖くて泣いた日もあったけど……ちゃんと“越えられる”。
だから……ひよりちゃんも、大丈夫」
ひよりの涙が、一粒、静かに頬を伝った。
寺西は温かい目で二人を見つめてから、静かに言う。
寺西「……話せそうなら、少しだけこのまま二人で。
結愛さんの言葉は、きっと力になる」
ひよりは涙を拭きながら、かすかに笑った。
ひより「……ありがとう……ございます……」
結愛もそっと微笑み返した。
──明日、大きな手術を控えた少女と。
──その恐怖を乗り越えてきた少女が、同じ病室で向き合う。
その空気は、不思議なほど優しくて、温かかった。
ひよりの涙が落ち着いた頃。
結愛は、そっと視線を合わせながら尋ねた。
結愛「……ねえ、ひよりちゃん。
もし嫌じゃなかったら……少し話さない?」
ひよりは震える指でシーツをつまみながら、小さく頷いた。
ひより「……はい……」
結愛は、ひよりの不安を刺激しないよう、声のトーンを柔らかく落とす。
結愛「ひよりちゃんは……どんなところが一番怖い?」
ひよりは唇をかんで、しばし沈黙したあと──
ひより「……全部……です。
手術も……麻酔も……起きたときの痛みも……
なにがどうなるのか分からなくて……」
その告白は、胸の奥からやっと出てきた“本音”だった。
結愛「……分かるよ」
結愛は、小さく息を吸い──
結愛「ひよりちゃん……あのね。
あたしも、ほんとに怖かった」
ひよりは顔を上げる。
ひより「……結愛さんも……?」
結愛「うん。
あたしは……大動脈の上らへん?の“なんとか部”ってところに、悪いところができてて……
その“大動脈を入れ替える手術”をしたんだ」
ひよりは目を丸くした。
ひより「な、なにそれ……。
すっごい……怖そう……」
結愛「手術中のことは全然覚えてないよ。
目が覚めたら、もう終わってた。
でも……聞いたら、すごく大変だったらしい。15時間もかかったって」
ひより「じゅ、15時間!?
そんな……」
結愛は苦笑しつつ肩をすくめた。
結愛「ね。自分で言うのも変だけど……
よく、生きて戻ってこれたなって思ってる」
ひよりは言葉を失ったまま、結愛を見つめる。
結愛「でもね……大丈夫。
“麻酔さえ頑張れば”、起きたら全部終わってる。
怖いけど……ひよりちゃんが思ってるより、ちゃんと終わるよ」
ひよりは胸を押さえて、小さく震えた声を出す。
ひより「……う〜……やっぱ怖い……」
結愛はふわっと笑い、
少し明るさを混ぜて空気を変える。
結愛「じゃあ、ひよりんの病気も教えて?
あたしだけ話すのズルいしさ」
ひよりは少し考えて──
ひより「……あの、結愛さん……
今、“ひよりん”って言いました?」
結愛「あ……うん。
だって、ひよりって可愛い名前だし、“ひよりん”って呼びたくなるじゃん。
ダメだった?」
ひよりは首を振り、ふっと弱い笑顔を浮かべた。
ひより「……全然大丈夫です。むしろ嬉しいです。
友達にもひよりんって呼ばれてるので」
結愛「そっか。じゃあ、これからもそう呼んでいい?」
ひより「……はい……」
結愛「で、“ひよりん”はどんな病気なの?」
ひよりは胸の上で指をぎゅっと握りしめて言った。
ひより「……私は生まれつき心臓が弱くて……
高校生になってから、もっと悪くなっちゃって……
先生が……“心臓の中の壁に穴があいてる”って言ってて……
それを塞ぐ手術をするみたいです。
先生は“大丈夫”って言ってくれるけど……やっぱり怖いです……」
結愛は、ひよりの震える指先にそっと視線を落とす。
結愛「……怖いよね。
あたしも……夜、ずっと震えてたもん。
手術の日が近づくほど、逃げたいって思ってた」
ひより「……結愛さんでも、ですか?」
結愛は小さく笑って首を縦に振る。
結愛「もちろん。
痛いのも怖いし……“もしかしたら”って考えて眠れなかった」
ひより「……いまの結愛さんを見ると、とてもそんなふうに見えなくて……」
結愛「そんなことないよ。
今も動くたびに胸痛いし、
歩くのもやっとだし……
でもね、“やればちゃんと前に進むんだ”って分かったから」
ひよりは少しだけ顔を上げる。
ひより「……前に……進む……」
結愛「うん。
ひよりんの手術も、きっと気づいたら終わってるよ。
起きたら、ちゃんと生きてる。
痛くても、苦しくても……ひとつずつできるようになるから」
ひよりは唇をぎゅっと結び、涙をこらえるように瞬きを繰り返す。
ひより「……結愛さん……」
結愛は優しく微笑み返した。
結愛「“ちょっとだけ”でいいんだよ。
わたしなんて……手術前の日なんか、何回も泣いたし……
今も泣いてばっかりだよ。
だから──ひよりんが少しでも前を向けたなら、それだけで十分」
ひよりの表情はまだ不安で揺れている。
けれど、涙は温かい色になっていた。
ちょうどそのとき、
コンコン……と軽いノックが響いた。
扉の向こうから寺西の声がする。
寺西「……そろそろ時間だ。
無理をさせすぎていないだろうか?」
ひよりは少し名残惜しそうに結愛を見た。
ひより「……また来てくれますか……?」
結愛は迷いなく頷く。
結愛「もちろん。
明日、手術が終わったら……絶対また来るよ。
ひよりん、頑張ってね」
ひよりは胸に手を当て、小さく……でも確かな声で。
ひより「……はい……!」
寺西が静かに頷き、
寺西「ありがとう、結愛さん。
──行こうか」
結愛は車椅子のブレーキを外し、ゆっくり後ろを振り返る。
結愛「……また来るね、ひよりん」
ひよりは弱い笑みで、小さく手を振った。
ひより「……待ってます……」
扉が静かに閉じ、廊下に出た瞬間──
結愛の胸の奥に
“あの子のために強くなりたい”
そんな新しい鼓動が、そっと灯った。
⸻
🕝14:30〜
〈ひよりの病室 → 結愛の病室〉
寺西は再び結愛の車椅子を押し、静かな廊下を戻っていく。
ひよりの部屋を離れた途端、結愛は胸の前でそっと手を組み、さっきの会話を反芻したように小さく息をつく。
病室の前に到着し、寺西がドアを開けてくれる。
寺西「はい、着きました。ゆっくり戻りましょう」
結愛「ありがとうございます……」
ベッドへ移るのを手伝ってもらい、体勢が落ち着いたところで──
結愛はためらいがちに、でも確かめたい気持ちを抑えきれずに口を開いた。
結愛「……あの……ひよりんの手術って……
先生が、するんですか?」
寺西は一瞬だけ柔らかく目を細める。
寺西「はい。明日のひよりさんの執刀は、私が担当します」
結愛「……そっか……よかった……」
寺西「緊張はあるだろうが、必要な準備はすべて整えています。
あなたが話してくれたことも、きっと彼女の力になる。ありがとう」
結愛は少し照れたようにうつむく。
結愛「……あたしなんかで……力になれたなら、嬉しいです」
寺西「充分、なれていましたよ。
では私はこれで。ゆっくり休んでください」
結愛「……はい、先生」
寺西は軽く会釈し、静かに病室を後にした。
扉が閉じると、結愛は小さく胸に手を当てる。
──ひよりん、頑張れますように。
そんな祈りが、そっと彼女の鼓動に重なっていった。
⸻
🕒15:00〜
ひよりの病室から戻ったあと、
結愛はリハビリ室へ。
・立位保持は前日より長く安定
・歩行器で数歩だけ前進
・息切れはあるが、回復速度は明らかに早い
詩織「今日の結愛さん……すごく集中できてますね」
結愛「……がんばらないと、って……思えて」
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🕔17:00〜
〈結愛の病室〉
麻未がトレイを持って入室。
麻未「今日から、少しだけ固形が増えましたよ」
結愛はスプーンを握り、
・最初は麻未の介助
・途中から自力でゆっくり
・完食は自然に達成
結愛「……味がする……ちゃんと、ご飯って感じ……」
麻未「回復してる証拠ですよ。いい調子です」
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🕕18:00〜
手際よく清拭とスキンケア。
結愛は恥ずかしさを抑えつつも、
「今日もありがとうございます」
と小さく礼を言う。
麻未「どういたしまして。
ゆっくり眠れるように、しっかり整えますね」
必要以上に濃くせず、淡々と進む。
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🕖19:00〜
ベッドの端に寄り、枕で腕を支えてスマホを操作。
・友達からのLINE返信
・大学のグループから心配メッセージ
・事務所関連の通知は開かない
・ゆっくり返事しながら、ひよりのことをときどき思い出す
結愛(心)《……明日、ひよりん……大丈夫かな……》
⸻
🕤21:30
ライトを落とし、静かな病室。
胸の前でそっと手を組み、
結愛(心の声)《……ひよりん、明日……怖くないといいな……》
そんな願いを抱きながら、ゆっくり眠り入った。
⸻
TO BE CONTINUED
⸻
次回予告
手術を控えた少女と、見守る結愛。
同じ時間、同じ病院で、それぞれが痛みと恐怖と向き合う朝が始まる。
手術室へ向かう少女。
リハビリ室で祈りを噛みしめる結愛。
刻々と進む時計の音が、ふたりの鼓動を重ねていく。
届いてほしい。
無事でいてほしい。
ただそれだけを願いながら。
次回、鼓動の先に 第42話
祈りの鼓動──届いてほしい、小さな命へ
⸻
あとがき
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
今回は、初めて結愛が “患者の先輩” として誰かを励ます回でした。
術後の長い時間を乗り越えてきたからこそ、ひよりに向けた言葉には、結愛自身の痛みや経験がそのままに滲んでいたと思います。
手術を控えた少女に寄り添う姿は、かつての結愛が誰かに支えられてきた軌跡そのもの。
“助けてもらう側” から、少しずつ “誰かを支えられる側” へ──
そんな静かな成長を感じてもらえていたら嬉しいです。
次回は、いよいよひよりの手術当日。
結愛が見守る中で、ふたりの物語がひとつ重なっていきます。
⸻
次回第42話
https://kakuyomu.jp/works/822139837672594690/episodes/822139840067899502
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