第2話|消えかけた鼓動――天使の眠る部屋

※この作品は台本(脚本)形式で執筆しています。

会話の前にキャラクター名が入る構成です。



前回のエピソード👇

https://kakuyomu.jp/works/822139837672594690/episodes/822139837673021125


⚠️ご閲覧に際してのご注意

この物語は、命と心に向き合う極めてシリアスなテーマで構成されています。

医療現場のリアルな描写や、精神的ショックを伴う場面が多数含まれます。

お子様や、過度な医療描写に抵抗のある方のご閲覧はお控えください。

それでもご覧になる方は、自己責任にてお願い申し上げます。



⏪ 前回のあらすじ


天真爛漫な笑顔の裏に、密かに潜んでいた“異変”。

夢のステージでセンターを務めた白石結愛は、ライブ後の楽屋で突如倒れ、救急搬送される。

酸素マスクの奥、顔面は蒼白。心音は弱く不安定。

その鼓動は、今にも――止まりそうだった。



ストレッチャーに乗せられた白石結愛。

付き添いとして、マネージャーの早川志帆が救急車に同乗する。


志帆は震える手でスマートフォンを取り出し、家族に連絡を入れる。


志帆(取り乱しながら)「結愛さんのお母さんですか!? 娘さんが……倒れました。今、救急車で鳳英医科大学附属病院に搬送中です。……すぐに、病院に来てください!!」


担架の上、結愛には酸素マスク。心電図モニターのアラームが鳴り続ける。

モニター音:ピッ……ピッ……ピ……(やや不整)


救急隊員(無線)「19歳女性、意識レベルJCS300。収縮期血圧70台。呼吸浅く、心拍不整あり。ショック状態。搬送先は鳳英医科大学附属病院、ETA8分。」


志帆(手を握りしめて)「結愛……私がもっと早く気づいていれば……。マネージャー失格だよね……ごめん、ごめんね……!」


🫀結愛(心の声/遠のく意識の中で)「……ライブ……楽しかった……もうちょっとだけ……ステージに、立ってたかったな……」

モニター音:ピ……ピ……ピ…………(弱く、不安定)


救急車のサイレンが、ネオンに染まる夜の街に鋭く響く。



東京都内。

瑠奈と沙耶を乗せたタクシーが、鳳英医科大学附属病院へ向かう。窓の外、夜のネオンが滲む。


沙耶(泣きながら)「結愛……倒れるまで頑張ってたなんて……っ。ねぇ、瑠奈……結愛に、何かあったら……どうしよう……!」


瑠奈(震えを堪えて)「沙耶!……落ち着いて……! あたしたちが取り乱したって、何も変わんない……。今は病院行って、無事を信じるしかないってば……!」



白石家・自宅。

優子(電話越しに)「えっ!? 倒れた!? ……救急車!? ……わかりました、すぐ行きます!」


将弘(父)「結愛がどうしたって?」


優子(母)「結愛が倒れて救急車で運ばれてるの! 今すぐ行くよ! 翔太のバイト先に連絡して!」


将弘「あぁ、わかった!」



都内の居酒屋


翔太(ホールで接客中)「ありゃーしたーっ!!またお越しくださいやせーーっ!! はい!いらっしゃいませーーっ!! 4名様ですか?空いてる席どうぞーっ!!

ウェイッ!!ご新規4名様入りまーす!!」


店員たち「ウェイッ!!いらっしゃいませーっ!!」


店長(厨房から大声で)「翔太ー!お前の親父さんから電話や!なんかめっちゃ取り乱しとったぞ?」


翔太「えっ?何か言ってました?」


店長「いや、とりあえず翔太に代われって」


翔太(受話器を掴み)「はい。もしもし?」


将弘(電話越し)「翔太か!? 大変や!結愛が倒れた!!」


翔太「……は?」


将弘「俺と母さんは今から病院行く!翔太も来れるならすぐ来い!鳳英医科大学附属病院や!詳しい話はあとや!!」


電話が切れる。翔太、受話器を見つめたまま、動揺。


翔太(つぶやく)「結愛が……倒れた? えっ? なんで……?」


店長(異変に気づき)「翔太?どした?顔色悪いぞ?」


翔太「……すみません店長!今日は早退させてください!妹が……倒れて……今すぐ病院行きます!」


翔太、ダッシュでロッカールームへ。


店長「お、おう!翔太!気ぃつけて行ってこい! 店のことは心配すんな!」


夜の街。原付きのエンジン音がネオンに響く。

翔太(ヘルメットをかぶりながら)「何なんだよ……!? 結愛に何が起きたっていうんだよ……っ!」



鳳英医科大学附属病院・処置室。

救急搬入口から結愛が到着する。


看護師A「病院着きました。すぐ処置に入りますね」


意識は消失。顔は蒼白。酸素マスク越しに浅い呼吸。

処置室へ。モニター・酸素・ライン確保が一気に進む。


看護師B「いきます、移乗——いっせーのーで!」


若手医師「意識レベルJCS200、血圧70台、SpO2 88%。ショック、心拍不整」


看護師C「衣類カットします!」


看護師D「顔色見たいのでメイクも拭きますね……」


華やかな衣装は切られ、ファンデーションは拭われ、少女は“患者”へと変わっていく。

【モニター:不整脈/頻脈/SpO₂ 88%】


麻酔科医・佐久間「血ガス確認。代謝性アシドーシス。バギング継続」


看護師E「輸液ルート確保、採血進行」


寺西直之(心臓血管外科)「心嚢液の有無、即エコー。胸部CTも準備」


佐久間「収縮期60切りました。アドレナリン1A静注」


ER医(小声で)「この子、アイドル……らしいです」


寺西「命に関係ない。今は患者として扱う」


医師A「CT準備完了!」


処置ベッドが動き、廊下を走ってCT室へ。


🫀 ピッ……ピッ……。ドクン、ドクッ……(不穏なリズム)


※JCS:意識障害の尺度。JCS300=意識完全消失。/SpO₂:血中酸素飽和度。



CT室


放射線技師A「このまま撮影入ります。バイタル確認」


医師B「心拍112、血圧72/48、SpO2 89%。不整あり」


佐久間「バギング継続。挿管は待機、撮影優先」


機械音。ベッドが輪の中へ。


スクリーンに映る胸部――弓部が異常に膨隆。


技師A「……弓部大動脈瘤……? サイズ、異常すぎる……」


技師B「今、破裂してないのが奇跡だ」


寺西が入室し、無言でモニターを見つめる。


寺西「……間違いない。急性期に近いかもしれん」


佐久間「乳酸5.1。ショックが進行。今すぐ対応が必要」


若手医師「緊急手術ですか……?」


寺西「まだ。状態が不安定すぎる。まずICUで全身管理、外科カンファレンスで術式とタイミングを詰める」


佐久間「人工呼吸継続、鎮静深めて循環サポート入れます」


「ICU、搬送準備できました!」


再びベッドが動き出す。

🫀 ピッ……ピッ……(やや不整)/ドクン、ドク……



夜間救急入口〜待機エリア。

タクシーから沙耶・瑠奈、原付で翔太、そして両親が到着。


志帆(深く頭を下げ)「ライブ後、救急車に同乗しました……本当に、申し訳ありません……」


優子「結愛は!? 今どうしてるの!?」


志帆「処置中で……今、検査を……」


翔太「……意識は……あるのか?」


志帆「救急車の中で、反応が……。でも、ずっと手を握ってました……」


やがてストレッチャーが現れる。


酸素マスク、点滴、複数のコード、アンビューバッグ。


沙耶(嗚咽)「……ほんとに結愛……?」


瑠奈「こんなの……あり得ない……」


翔太「なんで……管だらけじゃん……」



ICU控室。

寺西直之(心臓血管外科医)が姿を見せる。


寺西「ご家族の方ですね。……ご友人もご一緒で大丈夫です」


寺西(低く落ち着いた声で)「CTの結果、“弓部大動脈瘤”が確認されました。動脈がこぶのように膨らみ、破裂リスクが非常に高い状態です」


タブレットに画像が映し出される。


優子「そんな……結愛が……」


将弘「今はどうなんですか……?」


寺西「ショック状態です。人工呼吸と循環管理のもとICUで慎重に経過を見ています。19歳でこのサイズは極めて稀、しかも破裂寸前。すぐ手術とはいきませんが、早期対応が必要です」


翔太「手術すれば……助かる可能性は……?」


寺西「あります。ただし極めて大規模になります。人工心肺、心停止、出血、脳虚血、後遺症……多くのリスクが伴います。ですが、このままでは破裂の危険……できる限り早く準備を進めます」


沙耶「助かるんですか……?」


寺西(まっすぐ)「……助けます。私たちが、命を預かります」


志帆「先生、お願いします……結愛は、まだ夢の途中なんです……」



大阪・白石家(祖母・恵子)。


将弘(電話)「結愛が倒れた。ICUで集中治療中や……大動脈瘤で、破裂寸前……」


恵子「……わかった。今から東京行くわ。夜行バス乗る」


将弘「朝の始発で……」


恵子「孫が生きるか死ぬかの瀬戸際やろ。寝てる場合ちゃう」


仏壇に手を合わせ、「見守っといてな」と呟き、迷いなく夜へ出る。



面談後のICU前。


寺西「今夜の面会はここまで。急変時はすぐご連絡します」


優子「……先生、お願いします……」


志帆「会社に報告して、明日また来ます……」


瑠奈・沙耶は腫れた目で頷き、帰路へ。


翔太だけが残る。


翔太(スマホを見つめて)「……連絡しなきゃな……あいつには……」


表示:【正宗 龍星】。通話ボタンを押す。


サンフランシスコ・選手寮。


龍星「翔太君……? どうしたんだ、この時間に……」


翔太「龍星……結愛が倒れた。今、ICUにいる。病名も……あんまり良くない」


龍星(沈黙ののち)「……今、どこの病院にいる?」


翔太「鳳英医科大学附属病院」


龍星「行く。明日朝の便で動く。必ず行く」



サンフランシスコ国際空港。

龍星は最小限の荷で搭乗口へ。

スマホの壁紙の結愛の笑顔が胸に刺さる。


龍星(心の声)「絶対に間に合う……間に合わなきゃ、意味がない……あいつの顔、見るまでは」


アナウンス:「Flight 983 to Tokyo Haneda is now boarding.」


深くキャップをかぶり、ゲートをくぐる。

機体が羽ばたき、想いは太平洋を越える。



日本時間・早朝。羽田空港。

龍星はタクシーで鳳英医科大学附属病院へ。

スマホには翔太のメッセージ:「ICUは朝9:00から面会。落ち着いてるけど意識はまだ」


龍星(心の声)「……結愛、もうすぐ会えるからな」


病院前に到着。


龍星(心の声)「さぁ、結愛。待たせたな……もう、どこにも行かせねぇからな」

ICUのある階へと足を進めていく。



TO BE CONTINUED



次回予告


避けては通れぬ、運命の選択。

揺れる少女の胸に、差し込んだ一筋の光。

寄り添う家族。信じる恋人。

その手を握るたび、未来が少しだけ近づいてゆく。

静かな夜に、ひとつ、深く交わされる想いがあった。

震える心に、今、覚悟の鼓動が刻まれる。


次回 鼓動の先に 第3話

『決意の夜――交わした約束と絆の確認』



あとがき


ここまでご覧いただき、ありがとうございました。


第2話では、ライブ直後に倒れた結愛の緊急搬送、処置、CT検査、そしてICU収容。

その衝撃に揺れる家族や仲間たち、遠く海を越えて想いを馳せる龍星の姿を描きました。


19歳の少女の命をめぐる戦いは、まだ始まったばかり。

絶望の中にも、かすかな希望の光を。

彼女の鼓動が、再び確かに鳴り響くその瞬間まで——。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

もしよければ、★評価 や フォロー で応援していただけると励みになります。

第3話もどうぞお楽しみに。



第3話へ続く👇

https://kakuyomu.jp/works/822139837672594690/episodes/822139837681125799

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